188.小シェルジュ
災禍の波を食い止めるべく、私は波の中心部へとやってきた。
黒い、城のような建物の中は……うげえ。
「なんだかグロテスクね……床や壁が人肉みたい……」
「みたい、ではなく人肉で構成されてますね」
うげげ! まじか!
確かに床も壁も、なんだか脈打ってるし、筋肉っぽい筋があったけれども!
シェルジュが床に手を置いて分析する。
「……どうやら、人工生命体の失敗作で作られているようです」
「はぁん……人工生命体……ねえ……」
…………どーにも、敵、というか黒幕の正体が見えてきた気がする。
合成獣といい、人工生命体といい……。
「錬金術……」
「ワタシも同意見です。黒幕は錬金術師だと思います」
「だよねえ……」
敵の技術は私たちにとってなじみの深いものだった。
私の脳裏に、一つの可能性を感じる。いや……でも……。うーん……。
それはないか。
「どうしたのです?」
「いや、なんでもないわ。いきましょ」
「といっても、マスターは敵の居場所がわかるのですか?」
「う゛……」
「ふぅ~……やれやれ。ここは嫁が頑張るとしますか」
「誰が嫁じゃ」
ばっ、とシェルジュがスカートのはしをつまんで、持ち上げる。
スカートの下から……。
「「「どんどんどらどら」」」
「なんじゃこりゃ!?」
手のひらサイズの、ちびっこいシェルジュが、たくさん現れたのだ!
え、なにこれ!?
「シェルジュ小型バージョンです。小シェルジュです」
「いつの間にこんなの……」
「ワタシが作ったのです」
「あんたが!?」
「ええ。マスターが物作りに邁進してるあいだ、ワタシも技術を学び、作ったのですよ。必要になるかと思って」
はぁ~……こいつも変わったわねえ。
人に命令されないと動けなかった頃からは、想像できないわ。
「小シェルジュに、手分けさせて周囲を調べさせなさい!」
「イエス、マム。さぁいくのです小シェルジュたちよ!」
「「「どんどんどらどら!」」」




