176.波に立ち向かうもの
《ボルスSide》
セイが厄災の波に立ち向かうことを決意した、一方そのころ。
Sランク冒険者、ボルス。
冒険者ギルドのギルマスからの命令で、セイを捜索していた彼と、相棒のフィライト。
彼らは今、いったんセイの捜索を中断し、別の任務に就いていた。
場所はゲータ・ニィガ王国の王都。
彼らは王都外壁にて、モンスターと交戦中であった。
「くそ! 次から次へと!」
ボルスが目の前に来たゴブリンを切り倒し、悪態をつく。
ゴブリンを一体倒しても、次から次へと、モンスターが上空から降り注いでくるのだ。
天の恵みである雨のごとく、頭上から降ってくるモンスターたち。
やつらは質量を持っている。
それゆえに、上から来るモンスターに押しつぶされる、という事態も発生する。
モンスターとの戦いよりも、モンスターが降ってくるほうが厄介だった。
建物が壊れ、がれきに押しつぶされる者多数。
なん十キロもあるモンスターにぶつかり大けがを負うものもいる。
「出てくる敵の強さがさほどじゃねえのが唯一の救いだが……こんなのいつまでも持たねえぞ! 教会はなにやってんだよ、ウフコック!」
ボルスとともに剣を振るのは、天導教会の聖騎士、ウフコック。
彼女もまた、セイを探すため、ボルスと共に行動していたのだが、今は一時捜索を中断。
ボルスたちとともに剣を振り、モンスターを倒している。
「僕にもわからない。大聖女さまはなにをしてるのだろうか!」
天導教会。天の神ノアールを信奉する、宗教団体だ。
母体は神聖皇国にあり、そこの国教でもある。
天導教会には聖女とよばれる、聖なる力を使う女たちが所属してる。
聖女は魔物を退ける結界を張ったり、傷ついた人々を癒したりする。
聖女の力は、ポーション技術が衰退した現代において、唯一の回復手段と言える。
だが、そんな天導の聖女たちが、波の発生から、どこにも見られなくなったのだ。
「くそ! このままじゃ世界が滅ぶぞ!」
「こんなとき、あのお方がいれば……」
彼らの脳裏に浮かぶのは、天導に所属しない唯一無二の聖女、セイ・ファート。
彼女は一体どこにいるのだろうか……?




