170.物作りしてるだけなんだよなぁ……
初めまして、聖王セイ・ファートですっ。
聖王国セイファーとの、国母やってまーす! きゃぴっ☆
……はあ、どうしてこうなった。
「んま、私にはかんけーねーこった」
私は研究室に引きこもり、魔道具やアイテム作りをしてる。
国の運営は丸投げ。つーかそもそも国王になった覚えないし。勝手に祭り上げられてるだけだし。
私は気ままに、自分のしたいことをするのだ!
「さすが世界一のわがまま女ですね」
「おう馬鹿メイド、いたのか」
「ええ、ずっと」
いつの間にか研究室に、桃色メイドがやってきていた。
お盆にはポットとティーカップが載せてある。
「ん」
「やれやれ、メイド使いの荒いマスターですこと」
シェルジュが嬉しそうにお茶を煎れて、私のテーブルの上に置く。
チャをよこせ、と言わずとも、このメイドは私の「ん」だけで察したようだ。その辺はまあ、付き合いも長いからできる技なんだろうな。
「民をこき使い、王は自分の趣味に興じる。なんとも悪徳王ですね。下剋上されないか心配」
「別に王になった覚えないっつーの」
周りが勝手に私を神輿にのせて、わっしょいしてるだけだ。
下剋上とかそもそもない。
「私ドワーフをこきつかってませんけどぉ? 彼らが勝手に手伝ってくれてるだけだしね」
私が何か作ってると、向こうから「作り方教えてください」だの「手伝わせてください」だの言うのだ。
別に無償で働かせるわけじゃあないし。
「感謝の念も忘れ、王は自分のやりたいことばかりする。これは下剋上秒読み。そして何もかも失って路頭に迷うセイ・ファートに、優しく手を差し伸べるのは、長年の相棒のロボメイドだったのだ……」
「はいはい。はー、しかし最高だわ~。好きな物、好きなときに作れるのってねえ」
ラボのなかには、私が作った物でごったがえしている。
「旅もいいけど、物作りも好きなんだよなぁって、改めておもったわ」
旅の途中で思いついたアイディアを、形にするためには、どうして道具や設備がいるものね。
旅してると作れない。
そんな風に旅してる間に、作りたい欲がめちゃくちゃ溜まってたのか……。
気づいたら、こんなたくさんのアイテムを作っていた。
「しかもどれも伝説、神話級のアイテムばかりですね」
「そう?」
「ええ。少なくとも、この世界の基準に合わせると、どれもすごいものですよ。マスターは性格はアレですが、腕だけはいいですね」
「うっさいわ」
しかし、まだまだ作りたい物がたくさんある。
結構長く旅してたからかな。
「これは当分、引きこもりますわ」
「承知いたしました。では、【外】のことはこの万能ロボメイドにお任せあれ」
「ん、頼んだ」
……ん?
外の、こと? なんだろう外のことって……ううーん。
ま、いっか! どうでもいいしね、外で何が起きてようと。




