143.巨神王スリュムについて
《セイSide》
私ことセイ・ファートは、氷雪の国カイ・パゴスに来ている。
トロルに虐げられてるドワーフに、かつてブラック宮廷で働いていた頃の気分がフラッシュバック。
しかたないから、ドワーフたちを助けてやることにしたのだった……。
「ひゃっはー! 汚物は消毒よ……!」
私とシェルジュは新しい街、【フエフキ】へとやってきていた。
外でうろついてるトロル連中は、私とシェルジュが爆裂ポーションで撃退。
「皆さんもう大丈夫なのです! お姉ちゃんが居れば、全て解決なのです!」
私の可愛い妹たちが、ドワーフたちの怪我をなおしたり、ご飯を上げたりする。
フエフキのトロルどもを全滅させたあと……。
近くの宿屋にて。
「ありがとうございます! 聖女様!」
フエフキのドワーフ連中も私のことを、聖女呼ばわりしてくる。
あー、やめてー。
私は錬金術師なの~。
ったく……。
「テテロロ。あと、街は他にある?」
この国に来て最初に出会ったドワーフ、テテロロに尋ねる。
彼にこのカイ・パゴスを案内させているのだ。
テテロロは地図を広げていう。
「今居るフエフキは……カイ・パゴスの中央やや東よりの都市。おれらはぐるんと国を一周してきて、ほとんどの街は救ってきました。あとは、王都のカイの都だけです」
「カイ……そこを攻略すれば、終わりね」
「はい。もう一息です」
やれやれだ。
トロルやたらとかずいたなぁ。
「ただ……王都のカイには、やつがおります。巨神王スリュムが」
「巨神王スリュム……?」
「トロルたちを束ねる……邪悪なる神の1柱です」
邪悪なる神ねえ。
魔神かしら。
「スリュムがくるまで、トロルたちに統率という言葉はございませんでした。それが、やつが来てから状況が一変したのです」
「ふーん、スリュムがトロルたちをまとめだしたのね。強いの?」
「はい……スリュムはトロルをしのぐ、破壊の力を持っているのです」
破壊の力ね……。
ま、どーでもいいわ。
カイへ行き、そいつを倒して、ミッションはクリアよ。
私は仕事を終えて帰ってきた妹たちに言う。
「今日は遅いから、一泊して、明日からカイへ……」
と、そのときだ。
「た、大変だぁ~~~~~~~~!」
小さな子供ドワーフが、私たちのいる宿屋へと入ってきたのだ。
「ど、どうした!? トトララ!?」
どうやらこの子供が、トトララって名前らしい。
トトララは泣きべそかきながら、テテロロに言う。
「綺麗な女の人間が! トロルに連れてかれちまったんだよぅ!!」




