140.巨神王スリュム
セイ・ファートが、トロルに支配されている街を、解放していっている、一方。
氷雪の国カイ・パゴスの首都、カイの街には……。
氷でできたお城がある。
ここはかつて、ドワーフ王が住んでいた氷城である。
しかし今は……別のものが玉座に座っていた。
『なぁぬぅう……? ちびどもが反旗を翻してるだとぉ……!?』
【そいつ】は、巨大なモンスター、トロルすら、見下ろすほどの巨体を持っている。
青い肌に、筋骨隆々の体。
大きな布で体を覆い、頭の上にはきらびやかな装飾を施した、王冠が載っている。
「は、はい……巨神王スリュム様……」
巨神王スリュム。
現在、この国を支配してる……魔神の一角だ。
スリュムは長年封印されていたのだが、つい最近になって、その封印が解かれた。 そして眷属であるトロルたちを使って、ドワーフどもを奴隷にし、この国を治めているのである。
『ちびどもにそんな力があるとは思えん……力を貸してるやつがいるな?』
「は、はい……スリュム様。人間でございます」
『人間だとぉ……!!!!』
巨神王にとって人間とは下等な存在なのだ。
そんなちんけな相手に、自分の眷属がやられてることが、不快であった。
スリュムが叫ぶと城がビリビリと揺れ動く。
トロルたちが怯えて、地面に両手足をついて謝る。
『いったいどんな人間だ?』
「な、なんだかおかしな術を使うのです……」「人間どもは聖女といってた……」
聖女……。
『ふぅむ……わしが封印される前にもいたな。魔を退ける不可思議な術を使う、妙な女どもが……』
セイが宮廷錬金術師をしていた500年前より、さらに前のことを指して言っている。
『この時代ではすっかり見かけなくなっていたと思ったが……まだ生きていたか』
スリュムは目を閉じて、魔力を感知する。
すると、聖なる魔力を持った存在が、こちらに向かってきているのがわかった。
『居場所は特定した。今からいうとこへ赴き、女をここへ連れてこい』
「し、しかし……相手は強くて……」
『わかっておるわい』
するとスリュムは、だん! と足をならす。
すると地面から氷の柱が出現。
ばきん! と割れると、スリュムの前に、黄金の鎚が現れた。
スリュムはそれを手に取って、近くに居たトロルの頭を、コツンと叩く。
「う、うぉおお! ち、力があふれるぅうううううううう!」
『わしの力をほんのすこーし、与えた』
どうやら魔神の力を付与したらしい。
トロルの体が一回り大きくなり、また体からは黄金の闘気があふれている。
『さっさと行って、連れてこい』
「「「ははー!」」」
トロルを向かわせた先……。
そこに居るのはセイ・ファート……。
では、なく。
本物の聖女、リーンフォースだった。
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