126.すげえシチュー
私ことセイ・ファートは氷の国カイ・パゴスへやってきた。
吹雪の中を地竜のちーちゃんがすいすいと進んでいく。
荷竜車のなかで快適な旅を続けていると……。
ぐぅ~。
「あら、ダフネちゃん?」
「あうぅう……おねえちゃん、おなかすいたのですぅ~」
ウサギ獣人奴隷のダフネちゃんがおなかをすかしていた。
隣に座る、水精霊のスィちゃんもまた、ダフネちゃんをまねておなかを抑えていた。大変だ。
「ごはんにしましょ。トーカちゃん、ちーちゃんとめて~」
竜舎が停車する。ちなみにちーちゃんは温度を上げるポーション飲んでいるので、全然寒くない。まあ我々もなんだけども。
「ごっはーん!」「…………!」
スイちゃんダフネちゃんの妹ズがとてもうれしそうだ。ふふ、私もうれしくなるぜ。その笑顔を見るとねえ。
「シェルジュ、魔法コンロ」
ストレージ(収納機能)のなかに入ってるコンロを、シェルジュが取り出して、地面に置く。
そして端っこでつんっ、とそっぽを向く。このやろ……まーだすねてるのか。
いつもめんどくさい女だけど、今日はちょっと拗らせまくってるなぁ。やれやれ。面倒な女。
まあ料理は私がやるか。あいつやる気なさそうだし。
「何を作るのでござるか?」
トーカちゃんがわくわくしながら聞いてくる。火竜人のしっぽが、びったんばったんと揺れてる。きゃわよ。
「シチューです」
「「「しちゅー!」」」
「あと調理は不要です」
「「「なんとー!」」」
奴隷ちゃんズは私が何しても驚いてくれるから好き。
「……セイ様、調理不要とはどういうことでしょうか?」
「こういうこった。じゃーん、料理ポーショーン」
ポーション瓶を私は手に取って、みんなに見せる。
ふたを開けて、中身を鍋に注ぐ。
どろん、と、中からすでに調理済みのシチューが出てきた。
あとは温めるだけ。
「……すごいですセイ様! どうなってるのですか?」
「特殊な溶液に浸すことで、料理を圧縮+腐敗を防ぐのよ。瓶から出して酸素と触れると、料理が元に戻るの」
旅行の時に便利よね。料理を腐らずもっていけるし、外で調理が必要なっしんぐだし。
「すごいのですー!」「主殿のポーションは多彩ですごいですなぁ」「……セイ様は本当に天才錬金術師です」
「いやぁ、てれますなぁ。さ、たべましょー」




