108.かまわん、行け
私ことセイ・ファートは、炎の魔神が住まう天空城へと向かう。
舎弟2号のドラゴンの背に乗って、ひたすらに上空を飛ぶ。
『ううう……あいちいいぃいい! あついっす死ぬっすぅうううう!』
魔神が近いからか、結構外気温が上昇してきている。
まあ私は適応ポーション飲んでるから無事なんだがな。
『自分にもくださいっすよぉ!』
「あんた外皮で守られてるでしょ、お肌が」
私はか弱いのでこんなくっそあっついとこにいたら、肉が焼けて炭になってしまう。
しかし私の見たところによると、このドラゴン、結構な堅いうろこを持っているのだ。
だから、大丈夫。
「ん? 敵さん、私たちを歓迎するようね」
城に近づくと、炎をまとった鳥が何羽も近づいてきた。
多分魔神が、外敵である私たちを排除しようとしてるらしい。
『ひぃい! なんかめっちゃ魔力こもってるっすよ! 死ぬっすこれ!』
「かまわん、行け」
『いやいやいや! 死ぬから! マジで死ぬから!』
「行け」
『無理ぃいいいいいいいいいいい!』
「じゃあ爆発させるか」
『わかったよちくっしょぉおおおおおおおおお!』
ヴィーヴルが炎の鳥の中を飛んでいく。
彼女の巻き起こす旋風で、鳥たちが吹き飛ぶ。
「ほら、大丈夫だったじゃん」
『な、なるほど……こうなるってわかってたんすね』
「そうよ。だから行けって行ったのよ。人の話を聞きなさい舎弟」
げしげし、と私はぱしり2号の背中を蹴る。
ヴィーヴルは「この人すごいけどなんか昔を思い出すからいやぁ……」と情けない声で言うのだった。昔? ああ、前のご主人ってやつね。




