103.竜のすみか
私、セイ・ファートは奴隷ちゃんズといっしょに遙か上空にやってきているのだが……。
「まじか、まじで、まじだ……!」
「どうしたのですか、マスター。ショウタイムでも始めそうなウキウキ顔ですが?」
「あれ見てみ、あれー!」
私は御者台に起って、上空を指さす。
翡翠色の大きな岩が、あちこちに浮いているではないか!
「飛行石よ! あんなに大きいの初めてだわ!」
地上では絶無と行っていいほどとれない飛行石。
ダンジョンで見つけた、手のひらに収まるサイズのそれが最大だと思っていたしかーし!
空に浮かんでいるのは、明らかに人間と同じ……いや、それ以上の飛行石の山!
「うひゃー! 全部私のだー!」
「淑女がうひゃーなんて言わないでくださいマスター」
「あほぅ! あんなおっきいのがたっくさんのあるのよ!?」
網もってこい網ぃ!
「って、んんぅ? なに、私の飛行石の上に、誰かいるわね」
「すでに自分の物になってて草。あれは竜ですね」
じっと見つめると、たしかに飛行石の上に竜が寝そべってる。なんじゃあ?
『セイ様』
「うぉ、付いてきてるのかよ、カイルーン」
竜王国スカイ・フォシワの門番、竜王子カイルーンが説明する。
『空に浮かぶあの鉱物は、神竜にとっての憩いの場なのです』
「休憩所的な?」
『その通りです。竜王国は王都に巨大な飛行石があり、その周りに小さな飛行石をともなって常に移動しております。竜達は普段空を飛んでいるのですが……』
「なるほど、ああやって岩の上に座ってたまに休むのね」
『ええ、ただ……今は事情があって、休む物も機会も多いのですが』
ぴーよんぴーよん、厄介ごとセンサー、感度良好!
厄介ごとの気配!
「さ、前に進みましょー」
「よろしいのです、なんか明らかに困ってそうですが」
「いいのよ。厄介ごとは勘弁なの。王都へ急ぐわよ、ちーちゃん!」
ぐわー! とちーちゃんがなくと、荷台は先へと進むのだった。
『なるほど、小さな問題を解決しても根本的解決にはならず! ということですね、さすがです!』
……私何もしてないのに、なーんか勝手に感心されていた。なんじゃらほい。




