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【完結】天才錬金術師は気ままに旅する〜500年後の世界で目覚めた世界最高の元宮廷錬金術師、ポーション作りで聖女さま扱いされる〜  作者: 茨木野


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100.竜王都ナザカへ



 雲固めポーション(ダミ声)で雲の上に乗れるようになった。

 奴隷一号はよく働いてくれたので、こっからは地竜のちーちゃんに、馬車を引いてもらうことにした。


「よろしくちーちゃん」

「ぐわぐわがー!」


 ふすふすとちーちゃんが鼻息荒く返事をする。

 ラビ族のダフネちゃんが、ちーちゃんの言葉を聞いて笑う。


「ちーちゃん、お姉ちゃんを久しぶりに引いて走れるから、うれしーっていってるのです!」

「あらやだ、可愛いこというじゃないの」


 ちーちゃんの下顎をなでてあげると、うれしそうに尻尾をびたんびたんと揺らす。


 シェルジュのストレージに入れてた荷台を取り出して、ちーちゃんにセット。


「じゃ、奴隷一号。お疲れ。戻って良いわよ」

『お役に立てたなら光栄っす!』


 海で見つけたこのでかクジラだけど、泳いだり空飛んだりとなかなかに便利だったわ。

 あと中身が変えられるからホテルみたいにできるので、野営の際に嫌な思いしなくて良かったし。


「うん、1号【は】役に立ったよ」

「なんすか、その【は】って。まるで2号が役に立たないみたいじゃないっすか」


 竜の魔神ことヴィーヴルが不満げにそうつぶやく。


「え、まるでじゃなくてジャストナウで使えないっていってるんだけど?」

「ひでえ! 勝手に下僕にしておいて! その言い草! ゆるさねえ!」

「ほーん、私にケンカ挑むんだ」

「さーせんした!」


 爆裂ポーションをちらつかせただけで、ヴィーヴルはその場で土下座したのだ。

 ふっ、他愛ない。


「そんじゃみんな乗って乗って~」

「「「はーい!」」」


 奴隷ちゃんズが荷台にのっかる。

 私はヴィーヴルの足を引っ張って、荷台にポイ捨て。


 シェルジュが御者台に座る。


「それで、マスター。どこに向かうのですか?」

「そうねえ……ねえ、カイルーン」


 竜王子カイルーンが……なんか私たちの前で土下座していた。


「いやあんたに土下座しろなんて言ってないんだけど」

「地上よりきたりし強きものよ、どうか、我らの願いを聞いてくれないでしょうか」

「は? やだ」

「実は我が国は今危機に瀕して……え、ええ!? や、やだ……!?」


 うん、やだ。

 なんで観光に来たのに、頼まれごとされなきゃあかんのよ。


「おい2号。この辺に観光名所は? あんたもいちおう竜でしょ?」

「た、たしか竜王都ナザカに、竜がたくさんいるっす。食い物もおいしかったような」

「んじゃ、竜王都ナザカへれっつらごー」


 ちーちゃんが走り出す。頼まれごとはご勘弁願いたいのよ。


 ……その背後で、カイルーンがつぶやく。


「……すごい。おれが頼まずとも、問題の場所へ向かわれるなんて! 口では厳しいこといいつつも、弱者を助けてくれる。彼女は女神か……?」


 なんか、言ってた。聞こえなかったけども。

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