100.竜王都ナザカへ
雲固めポーション(ダミ声)で雲の上に乗れるようになった。
奴隷一号はよく働いてくれたので、こっからは地竜のちーちゃんに、馬車を引いてもらうことにした。
「よろしくちーちゃん」
「ぐわぐわがー!」
ふすふすとちーちゃんが鼻息荒く返事をする。
ラビ族のダフネちゃんが、ちーちゃんの言葉を聞いて笑う。
「ちーちゃん、お姉ちゃんを久しぶりに引いて走れるから、うれしーっていってるのです!」
「あらやだ、可愛いこというじゃないの」
ちーちゃんの下顎をなでてあげると、うれしそうに尻尾をびたんびたんと揺らす。
シェルジュのストレージに入れてた荷台を取り出して、ちーちゃんにセット。
「じゃ、奴隷一号。お疲れ。戻って良いわよ」
『お役に立てたなら光栄っす!』
海で見つけたこのでかクジラだけど、泳いだり空飛んだりとなかなかに便利だったわ。
あと中身が変えられるからホテルみたいにできるので、野営の際に嫌な思いしなくて良かったし。
「うん、1号【は】役に立ったよ」
「なんすか、その【は】って。まるで2号が役に立たないみたいじゃないっすか」
竜の魔神ことヴィーヴルが不満げにそうつぶやく。
「え、まるでじゃなくてジャストナウで使えないっていってるんだけど?」
「ひでえ! 勝手に下僕にしておいて! その言い草! ゆるさねえ!」
「ほーん、私にケンカ挑むんだ」
「さーせんした!」
爆裂ポーションをちらつかせただけで、ヴィーヴルはその場で土下座したのだ。
ふっ、他愛ない。
「そんじゃみんな乗って乗って~」
「「「はーい!」」」
奴隷ちゃんズが荷台にのっかる。
私はヴィーヴルの足を引っ張って、荷台にポイ捨て。
シェルジュが御者台に座る。
「それで、マスター。どこに向かうのですか?」
「そうねえ……ねえ、カイルーン」
竜王子カイルーンが……なんか私たちの前で土下座していた。
「いやあんたに土下座しろなんて言ってないんだけど」
「地上よりきたりし強きものよ、どうか、我らの願いを聞いてくれないでしょうか」
「は? やだ」
「実は我が国は今危機に瀕して……え、ええ!? や、やだ……!?」
うん、やだ。
なんで観光に来たのに、頼まれごとされなきゃあかんのよ。
「おい2号。この辺に観光名所は? あんたもいちおう竜でしょ?」
「た、たしか竜王都ナザカに、竜がたくさんいるっす。食い物もおいしかったような」
「んじゃ、竜王都ナザカへれっつらごー」
ちーちゃんが走り出す。頼まれごとはご勘弁願いたいのよ。
……その背後で、カイルーンがつぶやく。
「……すごい。おれが頼まずとも、問題の場所へ向かわれるなんて! 口では厳しいこといいつつも、弱者を助けてくれる。彼女は女神か……?」
なんか、言ってた。聞こえなかったけども。




