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異世界転移して初日に殺されてしまった俺は  作者: いつき旧太郎
第2章 街に勇者がやってくる
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豪商

 

 俺とロゼリは、エドモンドの邸宅を訪れた。


「どちら様で?」


 守衛がうさんくさそうな目をして聞いてきた。エドモンドの邸宅は門も立派で、守衛が二人その両側に立っていた。


「ベロア百人長から伝言を預かってきてるんです。エドモンドさんに直接伝えろって。」


 エドモンドが自分の利益のためにベロア達を動かしてエルフの里に向かわせたことはベロアから聞いて分かっている。

 こういう言い方をすれば、エドモンドは気になって俺たちに会ってくれるだろう。


「わかった、ちょっと待て。」


 守衛の1人が中に入っていった。

 しばらく門で待っていると、戻ってきた。


「お会いになるそうだ。ついてこい。」


 俺たちは守衛のあとを追って邸宅に入っていった。邸宅に入ったところからは、メイドが案内を引き継いだ。


 邸宅の中は非常に豪華な作りをしていた。

 絵画など美術品がそこかしこに飾られていて、壁紙も手が込んだ豪華なものが貼られている。すこしうるささすら感じてしまう。


 俺たちが通されたのは応接間のようだった。ゆったりと座れるソファーが並べられていて、小さなテーブルが備え付けられていた。


「こちらに座ってお待ちください。」


 メイドはそう言って俺たちを座らせると、自らは扉の脇に立った。

 必ず誰かがそばにいるようにしている。

 警戒されているようだった。当然と言えば当然だが。

 少し待ったがエドモンドは来ない。気配察知スキルは何もいってこないから、今のところいきなり襲われることはないだろう。


 そろそろしびれを切らしてきた頃になって、足音がして、エドモンドが入ってきた。


 ひどく太っている。

 日本でもここまで太っていた者はたまにしか見かけなかったほどだ。


「私がエドモンドだ。ベロアから伝言があるそうだな?」

「えぇ、そうですよ。エドモンドさん。」


 単刀直入。俺は自分にかけた幻影を解いた。人間の顔が剥がれ、骸骨の顔があらわになった。


「貴様、アンデッド!!」

「そうですとも。おとなしくしていただきましょうか。」

「……アンデッドが私に何の用だ。」


 エドモンドはすぐに立ち直って冷静さを取り戻してきた。


「あなたに手伝っていただきたいことがありましてね。」

「聞くだけ聞いてやろう。」


 エドモンドは余裕の態度を見せている。


「街中に兵士を引き込む手伝いをして欲しいんですよ。」

「この街をどうするつもりだ。アンデッドの巣窟にするのか?」

「まさか。我々は極めて理性的ですよ。街の住人にはこれまで通り生活して貰って結構。支配者が変わるだけの話です。」

「信じろとでも?」

「エドモンドさん、あなたに選択肢はありません。我々が顔を出してここまで話した以上はね。」

「……ふん。その手の脅しは聞かんぞ。そちらこそ、こんなところで堂々と話をしていていいのか?」


 俺は黙って先を促した。


「聞いているぞ、ベロアの軍を破ったが、セリスフェル様とは戦わず隠れていたとな。悔しがっておられたから、そろそろ飛んでくるぞ。」


 これがエドモンドの強気の正体である。

 誰も彼もセリスフェルセリスフェルと言う。暴力的な意味での信頼は本当に篤いようだ。

 なるほど。偽物はそういう言い訳の仕方をしたか。


「どうでしょうね。」


 俺はしれっと答えた。

 正確な情報というものは本当に重要だ。来ると信じているエドモンドと、来ないことを知っている俺たち。勝負になっていない。


「いいですよ、待っていても。ここに取り逃がしたアンデッドがいるぞ、と言って来てくれるのならね。」


 エドモンドは沈黙で答えた。

 妙だと思っているだろう。俺がここで強気に出る理由はないのだ。

 セリスは街のどこにいてもおおよそすべての会話を聞き取ることができた。もしかすると俺がそれを知らない、という可能性をエドモンドは考えるかもしれない。


 俺もしばらく沈黙することにした。

 時間だけが真相を明らかにしてくれる。


 どれだけ経っても、セリスが飛んでくることはなかった。俺にとっては当然だ。


「まだ待ちますか?」

「……おまえ達、何を知っている?」


 エドモンドの顔に焦りが浮かんでいた。


「ご存じかどうか知りませんが、彼女、ドラゴン形態だと青い鱗をしているんですよ。」


 俺は懐から一枚の青い鱗を取りだした。

 鱗にしては大きい。A5用紙サイズほどもあり、厚みもかなりのものだ。セリスの氷づけの胴体から一枚だけ貰ってきたものである。


 エドモンドの顔にいろいろな感情と思考が走った。


「まさか。ばかな。いやそんなことが。なんたる……。」


 俺たちがこれを持っていると言うことからどこまで考えただろうか。今街にいるセリスが偽物だ、ということまで察してくれるとこの先が早い。


「さて、そろそろ回答を聞かせてもらえると嬉しいのですが。」


 エドモンドは俺の顔をじっと見た。

 骸骨の俺から表情を読むのはかなり無理ゲーだろうに。


「どちらを信じるべきなのか、というとき、間違いないと確認できている事実から考えを進めるべきだと私は考えている。」


 エドモンドは突然語り始めた。


「今間違いないのは、ここにアンデッドがいて、喋っているにもかかわらず、セリスフェル様が飛んでこないという事実だ。あの自分の興味が最優先で動くお方が、この状況に飛んでこないというのは、明らかに異常だ。他に何をしていたとしても、飛んでくる方だ。」


 やはり妙な方向で信頼されている。


「つまり、彼らが嘘をついていると考えるべきだろう。君たちも嘘をついているという可能性はあるが、この状況からして、セリスフェル様が現在自由に動けない状態であることは確実だ。」

「見たければ死体をお見せしましょう。」


 俺はダメ押しをした。


「ドラゴンの死体。」


 エドモンドの目が光った。


「見せるだけですよ。我々にとっても貴重です。」


 当面は氷づけだ。何かすればうちのペットが怒る。


「むう、そうか。残念。では部下を送るので見せて貰いたい。」

「いいでしょう。ほかになにか?」

「私の商売については現状を維持することも。」

「それは難しい。我々には我々の内政の方針があります。しかし、財産の没収はしないことはお約束しましょう。」

「増税も含めて。」

「それはだめです。政治に関する現状維持のお約束は一切できません。」


 このあたりのことをエドモンドに約束してしまえば、将来エドモンドの勝手を許すことになる。


「むぅ……。」


 エドモンドはうなった。

 俺が言っているのは何も保証しないが手伝え、という脅迫である。


「わかった。手伝おう。」

「ありがとう。よかった、これで無駄にこの町を破壊しなくて済みます。細かいことは今後詰めていきましょう。まずはそちらで誰をよこすのか決めてください。」

「私の右腕であるクロードを送ろう。」

「分かりました。明後日には街を出ますので、用意させておいてください。それと、このロゼリを暫くここに滞在させてもらえますか。」


 監視役である。エドモンドが財産を持って逃げないよう見張るのだ。

 ほかにもいろいろと仕事がある。


「もちろん喜んで。」


 エドモンドがうなずいた。


「よかった。良い関係を築いていきましょう。私はアンデッドですが、優秀な生者には敬意を払うことにしているんですよ。」


 最後に遠回しに脅しておいて、俺はエドモンドとの会談を終えた。


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