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異世界転移して初日に殺されてしまった俺は  作者: いつき旧太郎
第2章 街に勇者がやってくる
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医療魔法師


 翌日、俺たちは市場のおっちゃんのおすすめに従って、医療魔法師のシダーイを訪ねた。

 アポイントなしの訪問にもかかわらずシダーイは俺たちを向かい入れてくれた。

 60超えているかどうかのひげを伸ばした男である。眼光は年を感じさせないほどに鋭い。


「ユウトとロゼリ、と言ったかね。」


 応接間に通され、メイドがお茶を持ってきて下がった後、シダーイはゆっくりと口を開いた。


「エルフの里を助けたアンデッドがわしに何の用かな?」


 いきなり看破されて、俺は驚いた。


「なぜ。」

「あてずっぽうだよ。お前さんだいぶ素直な男だな。嬢ちゃんを見習え。」


 隣のロゼリを見ると、しれっとしている。


「彼は、それで許される場所で育ったので。」


 余裕を見せてお茶を飲む。

 飲み方が気楽にしているときと違う。洗練された作法を感じさせる姫モード、つまり猫をかぶっているときの飲み方だ。


「素敵なお茶ですね。花の香りが心地よいですわ。」

「わし独自のブレンドでな。あとで少し分けてやろう。」

「まぁ嬉しい。」


 にこやかに会話しているように見えるが、そうではない。駆け引きの気配が満ちていた。

 これは俺が口を挟むとぼろが出る奴だ。

 喋らないようにしよう。こうしたややこしい裏を読み合う交渉はロゼリに任せた方がいい。


「彼の後学のために、さきほどのあてずっぽう、説明していただいても?」

「ま、よかろう。とはいえ簡単なことだ。エルフの里を攻めに行った連中がぼろぼろになって帰ってきた。上の連中はいろいろと秘密にしておきたいようだが、人の口に戸は立てられん。特にわしは仕事柄、情報が集まりやすい。あとはわかるだろう?」

「生者を装い会話ができる高等なアンデッドが2人、数多くいるものではないからカマをかけてみた、ということですわね。」

「その通り。」

「それなら、わたくし達がどのような用件かも推測できているのでは?」

「おだててもお茶は多くやらんぞ。そこまでは分からんから教えてくれ。」

「薬草を買っていただきたいのです。」


 ロゼリは小さい革袋をテーブルの上に置いた。サンプルとして持ってきた物だ。


「ほう。拝見しよう。」


 シダーイが袋の中身を広げた。

 薬草と言っても、いわゆる草だけではない。木の実や樹皮、キノコなど薬に使えるものは含まれている。


「どれどれ。」


 シダーイが一つ一つ検分していく。


「品質も悪くなさそうだ。さすがエルフの森だな。ふむ、ふむ。」


 俺はじっとその様子を観察した。

 言葉に出ているのはいい印象だが、これまでのことからして、言葉通りに素直に受け取って喜んで言い相手ではないことは分かっている。

 観察したところで、シダーイさんの腹の底なんて俺にはさっぱり分からないのだが。経験を積めばいつか分かるようになるかもしれない。


「種類はこれで全てかね?」

「探せばもういくつかあるかもしれませんが、ある程度まとまってご用意できるのは、このあたりです。」

「なるほど。残念だが、わしのところではめったに使わない物も多い。わしには買えんな。」

「分かりました。では、ひいきにしている商人を教えていただけないでしょうか。」

「構わんよ。面倒のないように紹介状を書いてやろう。」

「ありがとうございます。」


 シダーイが手を叩くと、メイドが入ってきた。


「紙とペンを持ってきてくれ。」

「かしこまりました。」


 指示を受けてメイドが退出していく。


「ところで、最近妙な連中が町中を歩いてるんだが、あれはお前さんらの関係者かね?」

「妙な奴らというと?」

「半死人だよ。」


 シダーイは俺をじっと見て言った。

 そうだよね。俺の方が素直だもんね。そうなるよね。

 半死人、と言われて思い浮かんだのは昨日の夜見かけた兵士達だ。


「もしかして、昨夜見た兵士のことですか?」


 俺は答えた。

 駆け引きはロゼリに任せて、俺にできるのは率直に話すことだけだ。


「お前さんたちが何を見たのかなんぞわしが知るもんか。」

「失礼しました。私たちは昨夜、街中を警備している兵士に妙な存在がいることに気がついたのです。生きているのに死んでいる、普通に会話はできるし生きているのですが、そうとしか言いようのない連中です。半死人という言葉を聞いて彼らのことが思い浮かびました。」


 昨日少しロゼリと話し合ったが、どう捉えるべきか結論が出ていなかった。しかし、半死人というのはいかにもふさわしい呼び名のように思えた。

 シダーイは頷いた。


「それなら、わしの言っているのと同じ連中だろう。そうか、お前さんたち関係ではないか。」

「違います。」

「そうか、それならいいんだ。よかったら、調べてみてくれんか。アンデッドにしか分からないこともあるかもしれん。」

「どこまでできるかは分かりませんが、気にするようにしておきます。」


 ロゼリが口を挟んだ。

 危ない、うっかり『任せてください。』とか言うところだった。


「うん、そのくらいで構わんよ。」

「兵士以外にも半死人はいるのですか?」

「何人か見かけたな。」


 そこにドアをノックする音がして、メイドが紙とペンを持ってきた。


「さて、ちょっと書くとしようか。その件、頼んだぞ。」


 シダーイがさらさらと短い手紙を書いた。文末に自らのサインをして折りたたんで、俺に差し出した。


「できる限りのことはしてみます。」


 俺は紹介状を受け取った。どうやらこの件も少し調べてみたほうが良さそうだった。


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