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異世界転移して初日に殺されてしまった俺は  作者: いつき旧太郎
第1章 普通っぽい勇者、普通じゃなくなる
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変身

 

「あなた、名前は?」


 俺は突然聞かれた。


「ユウト=アマノだよ。お前は?」

「セリスフェル。その名、覚えておくわ。」


 ようやく名乗り合って、戦いが再開された。

 魔族、セリスフェルとの戦いは、ようやく互角になった。

 間合いの支配権は俺にある。どんなにセリスフェルが速く動けようと、ブレイの残したスキル<光の理>による転移はそれよりも速い。


 空中での接近戦闘である。お互いに、遠距離での攻撃は難なく避けてしまう。必然的に、回避の余裕の少ない、剣と拳が届く間合いで攻撃を応酬することになる。

 速さと力はセリスフェルが上。

 しかし技術は俺の方が一歩上だ。速さで攻めてくるセリスフェルに対して、俺は技でいなし、受け、カウンターを決める。


 カウンターで振るった剣がセリスフェルの胴を捉えた。

 刃は入らないが、<ヘビーソード>を十重(デクープル)にして重ねがけした俺の剣は、セリスフェルに衝撃でのダメージを与え、ノックバックさせた。


「くっ」


 そのすきに俺はセリスフェルの背後に転移。

 セリスフェルは、背後からの攻撃を避けるため、上へと逃げた。

 俺はそれを飛行で追う。


 セリスフェルの周囲に4本の炎の矢が生まれた。


<フレイムアロー・4重(クアトラプル)


 炎の矢は背後の俺に向かって飛んでくる。


<アイスランス・4重(クアトラプル)


 俺は炎の矢のうち2本を飛行軌道を変えて回避し、残りの2本には氷の槍2本ずつで迎撃して打ち消した。

 セリスフェルとの距離が少し広がった。


 セリスフェルが空中でくるりと回転し、空中に足場でもあるかのように、足をついて急停止した。俺の方は止まれない。

 一気に距離が詰まった。


 セリスフェルの拳が俺の左腕を砕いた。

 俺はセリスフェルの横をそのまま通り抜けた。距離を取らなければ。セリスフェルは追撃しようと追ってくる。

 飛行速度も彼女の方が速い。


 俺は<光の理>で転移して大きく距離を取った。

 HPが削られたが、それ以上に左腕を失ったのは大きな痛手だ。欠損を取り戻す魔法を俺は知らない。


 セリスフェルが一直線に俺に向かってくる。

 片手でどこまで止められるだろうか。俺は剣を構えた。

 そこに、森の中から数百の光弾が打ち上げられた。


「!?」


 俺もセリスフェルも想定していない攻撃だった。

 光弾の狙いはセリスフェル。

 味方の攻撃だ。これだけの魔法となると、オークたちではない。


(ロゼリか!)


 助かった。


『遅くなったわ、勇人さん。』


 念話が入った。

 セリスフェルが魔法で光弾を迎撃した。セリスフェルのすぐ近くで一つ大きな爆発がおき、数十の光弾が一度に消えた。残った光弾がその爆煙めがけて殺到していく。

 光弾が一斉に連鎖して爆裂した。周囲一帯を強烈な光が満たした。


『オーク達には待避して貰ったわ。私はこのまま森の中から砲撃するね。』

『サンキュー。』


 さて、と俺はセリスフェルがいたあたりを観察した。これほどの爆発、ノーダメージでは済まないだろう。

 光が収まり、セリスフェルの姿が見えてきた。


「あー、そういう。変身的な。」


 俺は思わず呟いた。

 セリスフェルの姿が変わっている。元々鮮やかな色をしていた頭髪は、燃えさかるように光を放って揺れ、体は皮膚ではなく青白く輝く鱗に覆われている。同じ鱗に覆われたしっぽが長く伸びて垂らされていた。


「今のは効いたわ。」


 声は平静だ。


「この姿にならなければ危ないところだった。やるね、あなたたち。」

「それはどうも。まさか、あと2回変身を残している、とか言わないよな?」


 聞きながら、俺は必死で考えていた。

 姿が変わる、というのは大抵パワーアップを意味するはずだ。少なくとも、防御力は上がっていることがセリスフェルの言葉から分かる。


「安心して。あと1回だわ。」


 何をどう安心しろというのか。先ほどでほぼ互角だ。

 ロゼリが来れば倒せるかと思ったが、こうなると分からない。冷や汗を流す気分だった。


「さて、続きよ。」


 セリスフェルが空中で構えを取った。


 その時、セリスフェルの背後に黒い闇が渦巻いて、1人の男が現れた。

 その男はセリスフェルに向けて跪いた。


「テルク、邪魔しないで。」


 セリスフェルは目線を俺に向けたまま、これまで見たことのないほどの不機嫌さを露わにした。

 その様子で俺はそのテルクと呼ばれた男がセリスフェルの部下であることを察した。


「これをお使いください、セリス様。」


 テルクが手に持っていた短剣を抜き、セリスフェルに差し出した。


「いらない。」

「しかし。」

「その剣は陛下からいただいた物。もう二度と使わない物よ。」

「ですが。」


 テルクが食い下がる。


「しつこい!」


 セリスフェルがいらだってテルクに向き直った。

 その動きに合わせて、テルクは、捧げ持っていた短剣の柄をつかみ、短剣でセリスフェルの腹部を突いた。


 切っ先が鱗を突き破り、深々と刺さった。


 俺は目を疑った。

 あの男はセリスフェルの部下ではないのだろうか。何が起こっているのか。

 セリスフェルがとっさに拳を振ったが、テルクはそれを難なく弾くと、左手でセリスフェルの喉をつかんで締め上げた。


「お、まえ、は……。」


 セリスフェルが苦しげな声を出す。


「ようやく油断してくれたね、セリスフェル。」


 テルクの顔が光の粒子となって散っていき、その下から別の男の顔が現われた。


「オドケアス……!」

「そうとも。お前が忠誠を尽くすべき主人だよ。」

「だ、れが……!」


 セリスフェルから怒気が立ち上るが、体が動かない様子だった。


「やれやれ、電撃系への弱さと生意気さは相変わらずだね。まぁ、いい。」


 オドケアスと呼ばれた男は、セリスフェルの腹部に刺さったままの短剣をぐり、とねじった。セリスフェルの体が跳ねた。

 オドケアスはさらに数回短剣をねじり込んだ後、短剣を抜き、捨てた。


「核に直接従属の魔法を刻めば、お前も心を改めてくれるだろう?」


 オドケアスはセリスフェルの傷口に右手を突っ込んだ。


「いやかい? いやならちゃんと奴隷らしくみじめったらしく頼んでくれれば、考えてあげてもいいよ?」

「百回死ね。」

「甘美な響きだ。ありがとう。」


 オドケアスが右手に魔力を注ぎ込み、セリスフェルの体が大きく跳ね上がった。


 その時、俺は見た。

 森の中から、一条の流星のようにロゼリが飛び出し、オドケアスに斬りかかっていく。


 オドケアスはまったく攻撃を警戒していなかった。

 ロゼリの剣が一閃し、オドケアスの両手を切り落とした。ロゼリは空中で体を切り返し、返す刀でオドケアスの首を狙った。


「おぉ、君は!」


 オドケアスは感嘆しながらバックステップし、ロゼリの剣をかわした。


「レクノード王国のかわいそうな姫様じゃないか。また会えるなんてうれしいよ!」


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