43/43
終章
あるところに、花国と呼ばれる美しい国があった。
東西南北の八つの都市と中心に位置する帝都、計九つの地からなるこの国には昔から人と人ならざるものが住んでいたという。
人は人ならざるものを妖や神と呼んだ。
人は妖や神を守り、妖や神もまた人を守った。
それらの力関係はいつの時代も均衡を保っており、人も、人ならざるものも、どちらかが一方的に国を支配することはない。
互いに助け合い、理解しあいながら生きていたという。
長い花国の歴史の中で幾度となく繰り返されてきた災害に、人と人ならざるものが手を取りあって立ち向かったこともあったのだとか。
二つの種族の間には大きな溝も壁もなかった。あるのは協力関係であり、時に、友情や愛情を育んだ。
誰もがそう口にしていた。
――一人の少女が生まれたおかげで。
これは、人と人ならざるものの間に産み落とされた少女が起こした、革命前夜の物語である。




