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【小説版発売中】追放されたやさぐれシェフと腹ペコ娘のしあわせご飯【コミックもどうぞ】  作者: 呑竜
「第2部第5章:つかの間の平和と、ジローとセラの食堂経営」

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「開放祭初日」

 出すべき料理が完成したはいいものの、時間はけっこうかかってしまった。

 気が付けば、三日間しか行われない開放祭の初日の昼はとっくに終わってしまっていた。


 表を見れば、他の店で食事を済ませたのだろう観光客が満足そうな顔をして歩いている。

 店主のブラガンさんや娘のべニアさんはそのことに焦り、休憩もとらずにすぐさま開店しようとしたが、それは俺が止めた。

 料理人の疲労は仕事の成果に直結するし、満腹のところにさらなる料理を詰め込もうったって上手くいくわけがない。

 

「まずはゆっくりまかないを喰いましょう。ほら、ちょうどいいことにここにこうして試作品が揃っていることですし」


 試作品として作った『カルナック式(カナール・ドゥ・)北京ダック(ア・ラ・カルナック)』肉Verと魚Verをひと口かじると、ふたりは顔を輝かせた。 


「甘味と酸味が共存していて……!」

「しかもガッツリだよお父さん! わたし、こんなの初めて!」


 こんなに美味い物がこの世にあるのかって感じで互いに顔を見合わせ、興奮してた。


「そうそう、美味い売り物を一番最初に食べることができる、それこそ勤勉な料理人の特権ですから」


 俺はニヤリと笑った。

 そうだ、自分で作った料理が実に美味い。それこそが何よりの自信になるんだ。

 自信のない料理人の作った料理より、自信満々の顔をした料理人の作った料理の方をこそ、お客は食べたいと思うはずだ。


 ほら、よくあるだろ?

 まるまる太った料理人の作った料理は美味そうに見える、あの理屈に近い。


 てことできっちり休憩をとった後、時間で言うなら午後三時頃。

 俺はパンと手を打ち合わせるとみんなに告げた。


「さあ、頃合いだ。改めて暖簾を上げていきましょう」

「おおー、行くぞー! わおんわおーん!」

「わ、わおーんっ!?」


 先陣を切るのは当然セラで、その後をおっかなびっくりティアがついて行く。

 椅子に乗った二人が店の入り口に暖簾を掲げたのが開店の合図。


「さあ、新生『湖畔亭』のオープンだ!」


 なーんて、意気込んだはいいもののあんまりお客さんも来ないし売り上げも上がらない。

 なあぜなぜ?


 などということはけっこうある。

 その多くは市場調査やデータ分析が足りなかったりという準備段階のところに理由があるのだが、今回に関してはその心配はない。

 さらにさらに、とどめとばかりにセラとティアに試食用の皿をもたせて店頭に立たせたところ、結果は即座に表れた。


「わ、わ、わっ! お客さんがいっぱい来るよー!?」

「ひゃーっ!? こんなの見たことないですーっ!?」


 果たして、結果は即座に出た。

「お昼も過ぎ、小腹が空いたので何か軽食を」もしくは「何か食べながらそこらでお喋りでも」と考えたお客のニーズにバッチリヒット。

 食べ歩きしやすい料理を選んだことも功を奏したのだろう、『湖畔亭』の前には、すぐに長蛇の列が出来た。

 口コミも手伝ってだろう、その勢いは夕飯時になっても衰えることを知らず――


「わー! たくさんだよ!? 金ぴかいっぱい!」

「ひゃーっ!? こここんなの見たことないですーっ!?」


 初日の売り上げは金貨十枚プラス銀貨銅貨が数十枚。

 実に『湖畔亭』の一か月の売り上げ強という凄まじいもので、閉店後はみんな揃って盛り上がっていた。


「やったねジロー! これは大勝利のびくとりーだね!」


 ダブルピースをしてピョンピョンはねるセラ。


「これならいけそうだねお父さんっ」

「ああ、良かった。本当に……」


 もはや涙ぐんでいるブラガンさんとべニアさん。

 ティア、オスカー、マックスもそれぞれに興奮しているようだが……。


「いいや、まだまだだ」


 俺はひとり先を見ていた。


「目標を上方修正しよう。金貨三十枚どころじゃない、三日で六十枚」

「ろ、六十枚ですって!? それはさすがに……」


 驚くブラガンさんに、しかし俺は自信満々で言い放った。


「いえ、全然いけます。カルナックという土地柄、三日間という祭りの開催期間。今日ので口コミも広がるでしょうし、さらに手を打てば……いや、こちらから動くまでもない、か?」


 閉店後の裏口をトントン叩くノックの音が聞こえる。

 それは果たして、俺の予想した通りの人物――カルナックタイムズの新聞記者だった。


「夜分遅くに恐れいります。こちら、『湖畔亭』さんで間違いないですか?」

「はいはい、取材ですね。こちらにどうぞ」


 皆が驚き固まっている中、このことあるを予想していた俺は、新聞記者さんを席に通した。


「ねえねえジロー、どういうこと? しんぶん? きしゃさん? なぁにそれ?」


 今まで新聞など読んだことのないだろうセラでもわかるよう、俺はざっくりと説明してやった。

 ちなみに新聞といっても俺のいた世界のそれのように毎日定期発行しているわけではなく、基本月イチ。

 あとは何かあった時に臨時で出す号外が少々あるのみ。写真はなく、文字プラス味のある絵師によるイラストが掲載されている。

『開放祭』はもちろんカルナック最大のイベントなので、観光客向けの情報が記された号外が、期間中毎日発行されている。

 街の至るところで配られるその中身は観光名所やイベント、お店紹介などなど。

 情報発信の弱いこの世界この時代の人にとってはまさに政府広報ばりの威力のあるその紙面において、初日で最もインパクトがあり客足も凄まじかった『湖畔亭』が紹介されることになり――

第二巻が7月5日に先行発売、7月19日に全書店配信となります(/・ω・)/へいほー


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― 新着の感想 ―
[一言] なんか急に陳腐な展開に?食レポのシーンがカットされてるし! フランス料理は何処行った!北京ダックと言うなら食べるのは皮でしょ! フリットってねぇ…それこそ甘酢餡掛けで中華料理でしょう。鯰だよ…
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