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【小説版発売中】追放されたやさぐれシェフと腹ペコ娘のしあわせご飯【コミックもどうぞ】  作者: 呑竜
「第2部第5章:つかの間の平和と、ジローとセラの食堂経営」

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「三日で金貨三十枚」

 チンピラ金貸し(ジャックという名らしい)が憤慨して帰るのを見送った後、小心者のブラガンさんは目に見えて動揺し出した。

 あっちを見てオロオロ、こっちを見てオロオロ。

 大量に汗をかきながら俺にすがる。


「あ……あそこまで言って大丈夫でしょうか。何か仕返しとかされたりとかは……? 殴り込みとか、そういう……」

「大丈夫ですよ。あいつの狙いがこの店とべニアさんである限り、殴ったり物を壊したりなんていうのは逆効果もいいとこですから。今までだって、暴力を振るわれたことはないんでしょう?」

「ま、まあそうですが……」

「安心してください。もし殴り込んで来られても、こっちには頼れるボディガードがついてますから」

「誰がボディガードか」


 オスカーはふんと鼻を鳴らした。


「何かあった時に庶民を守る覚悟はあるがな。しかしジロー、ずいぶんと勝手に話を進めるじゃないか。もし万が一にも勝てなかったとしたら、どう責任をとるのだ?」

「俺が? 負ける? はん、バカ言え」


 これまでの凋落ぶりはともかく、『湖畔亭』の立地は抜群だ。

 最も賑わいのある大通りに面し、建物建具の具合も絶妙。

 本来なら、これで客が来ない方がおかしいんだ。


「勝てるさ、絶対だ」


 自信をもって断言すると、ブラガンさんに向き直った。

 

「てことでブラガンさん、まずはサクッと勝利条件を決めちまいましょう。祭り期間中の三日間で金貨三十枚を稼ぎ出せばこっちの勝ち。これでいいですか?」

「そ、そんな簡単に言いますが、金貨三十枚稼ぐのは大変で……。うちだとそれこそ三か月近い稼ぎになりまして……」


 金貨一枚は、円に換算するなら一万円ぐらいだ。

 つまり『湖畔亭』の純売り上げはひと月十万円ほど。

 一日でひと月分を稼ぎ、それを三日連続してというのだから気が遠くなるのも無理はない。

 

「大丈夫ですよ。新規のメニューはすでに考えました。ニーズがあり、トレンド面でも優秀なやつがね。しかも作るのは超簡単ときてる」 

「そ、そんなすごいメニューがっ?」

「はい。しかも特別な材料を使うわけじゃないんです。ここにあるストックで出来ちまう」


 ブラガンさんの経営する『湖畔亭』を盛り立てる新メニューの構築にあたって、俺はふたつの前提を置いていた。


 ひとつ、そもそもがブラガンさんに作れる料理であること。

 ふたつ、湖畔亭の経営状況に見合った料理であること。


 この場では勝てたとしても、俺がいなくなった瞬間にダメになったら意味がない。

 この場では勝てたとしても、今後も継続的に作れる料理でないと意味がない。

 そういった理由からだ。


「論より証拠といきましょうか。おい、セラは小麦粉と卵を。ティアは水を用意しろ。出来るだけたくさんだぞ」

「おおー!」

「はい! わかりましたジローさん!」


 年少組ふたりに指示した後は、年長組のふたりの番だ。

 

「オスカーはきゅうりの刻み。その後はナマズと鴨の切り、どちらも出来るだけ正方形にな。マックスはメレンゲ作り。丁寧に、角が立つまでだぞ」

「任せろ」

「て、丁寧にだな……? おうよ、任せろ!」


 オスカーは一瞬の躊躇もなしに、マックスは武者震いしながらも、難しい工程に挑んでいく。


「い、いったい何を作るので……?」

 

 一心不乱に調理に励む子供たちを見て、返って恐ろしくなったのだろう。

 ブラガンさんは顔色を青ざめさせているが……。


「カルナック式北京ダックです」と言ったら、ますますわけがわからないといった顔になった。

 そりゃそうか。


「ま、ここは論より証拠ですね」


 百聞は一見に如かずとも言うし、俺はとにかく実物を見せることにした。

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― 新着の感想 ―
[一言] ジローとセラのテンポの良い会話とハートフルなストーリー展開に引き込まれて一気読みしました。 ティアちゃんのことも気になるしジローがみんなのお兄さん、お父さん??として活躍する姿ももっと読みた…
[良い点] ジローの優しさは、ジロー達が去った後 店主たちだけで店を切り盛りするイメージを 作り出していることです。 [気になる点] 3日間で稼ぐ額が生々しいですねー。 円換算されていますから。 はて…
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