第六十六話「追跡」
水無し川の対岸にて、乾いた赤土の表面に残る薄っすらとした足跡を指で撫でる。
扇形に広がった5本の指。
横幅にして、およそ40cm。
加えて、足跡の後方に残る地面を撫でた尻尾の痕跡。
うむ。
これは、水源の周りで確認したアンキロサウルスの足跡と相違ない。
野生の草食動物は、一日の大半を食事に費やす。
肉という高カロリーを食べない故の長時間食事者
起床後、水分補給を終えたアンキロサウルスが行う行動は一つ。
あのアンキロサウルスは、餌場に向かったのだ。
地面に刻まれた足跡。
背伸び立ちをして、その指先の向かう方向を見つめる。
「アンキロサウルスさん、どこまで行ったんだろう。」
視界に映るのは、どこまでも続く荒野。
しかし、その視線の先にアンキロサウルスの姿は確認できない。
なるほど。
少しうんこ遊びが過ぎたようだ。
とにかく、この足跡を追跡して行こう。
とことこ とことこ
足跡の一つ一つを確認しながら、アンキロサウルスの残した足跡を辿る。
扇形に広がった5本の指・・・横幅にして、およそ40cm・・・。
加えて、この道中では、真新しい食痕の残る雑草をいくつも確認している。
大丈夫だ。
僕は、アンキロサウルスの追跡に成功している。
とことこ とことこ
そして、見つけた。
アンキロサウルスでは無い。
風に揺られる葉の中から見え隠れする艶やかな黒い果実。
アンキロサウルスの足跡の続く先に、緑色の葉を茂らせた謎の植物を発見したのだ。




