第六十二話「曲竜下目(アンキロサウリア)」
とことこ とことこ
水源のある川床を目指して、赤土の荒野を歩く。
そして・・・。
「到着っと。」
寝床から川床までの距離は、徒歩にしておよそ1時間。
朝の散歩としては、ピッタリの距離である。
「さてさて、昨日の水源はどこだったかな。」
川床よりも1m程高い川岸の上、山脈から森の方角へと続く川床を眺める。
しかしながら、さすがは荒野を縦断する長い長い河川跡。
昨日掘り当てた水源が、全く持って見つからない。
とりあえず、川岸を歩きながら昨日の水源を探してみよう。
とことこ とことこ
U字型に浸食された川床を左手に見つめながら、ほど高くなった川岸の上をのんびりと歩く。
川床に点在している他所よりも瑞々しく生える草木。
おそらく、それら草木の根元を掘ることでも、新しい水源として利用することは可能なのだろう。
でも、せっかく昨日の水源を探しているのだ。
せっかくなので探してしまおう。
そして、川岸を歩いてしばし。
川床の中央。
瑞々しく生えた草木の茂みの中に、何か巨大な生物が横たわっているのを見つけた。
亀のような嘴を備えた頭部。
食後のワニを思わせるよく膨らんだ分厚い胴体と、剥き出しの岩盤を連想させる後背部を覆う生体装甲。
サイのように太く短い4本の足。
長い尻尾の先端についたハンマー状の骨塊。
目算にして、全長10m。
間違いない。
「鎧竜、曲竜下目アンキロサウルス。」
白亜紀に生息していたとされる大型の草食恐竜である。




