表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/74

第五十九話「お風呂(泥浴び)」

太陽の位置から考えて、今の時刻は午後の3時といった所だろうか。


ここから寝床までの距離は、徒歩にして約1時間。


午後の4時までに出発すれば、日暮れまでには寝床に到着することができるだろう。






残り1時間のフリータイム。


目の前にあるのは、頭が一つが入るほどの小さな水源。


ああ、日本人としての本能がうずく。






ゴクリ


「よし、お風呂にも入っちゃおうかな。」


日本人たるもの、お風呂は大事なのだ。






そうと決まれば、大急ぎで水源の拡張である。


40分で湯船バスタブを掘り上げて、20分の入浴を楽むのだ。






バシャッ バシャッ


水源を起点にして、少しずつ周りの地面を掘り下げていく。


これは、5歳児が入浴する湯船なのだ。


サイズとしては、30cm四方まで拡張できれば十分だろう。






バチャッ バチャッ


伏流水の湧き出す水源に両手を突っ込んで、水源の底から土を掻き出していく。


湯船には、十分な深さが必要なのだ。


「でも、湯船を深く掘るのって難しいな。」


土は水分を含んでいてずっしりと重く、水源の底から土を掻き出した所で、すぐに周りの土が崩れて掘った穴を埋めてしまうのだ。


水源の深さを確保することは、水源の広さを確保することよりも難しい。






「ここまでかな。」


作業にかけた時間は、およそ40分。


何とか水源の広さを30cm四方に拡張することはできたが、その深さは20cmにも満たない。


本当はもう少し湯船を深く掘り下げたかったのだが、仕方ない。


日没は、決して待ってはくれないのだ。


今日の所は、この小さな湯船で良しとしよう。






「さて、お風呂に入ろう。」


チャードルを脱いで近くの木の枝に掛けて、湯船へと歩みを進める。


急いで掘ったので、全身どろどろ、その上汗だくである。


制限時間は20分。


さあ、ゆっくりとお風呂を楽しもう。






ザボンッ


両足でジャンプをして、お風呂に飛び込む。


深さにして、膝下程度。


泥水の飛沫しぶきが、川床を舞う。


転生三日目にして、初めてのお風呂である。






湯船に腰を下ろして、お風呂に浸かる。


さすが、さすが地下を流れる伏流水。


とても、、冷たい!


「あぁ~~~っ!!」


あまりの冷たさに、声が出てしまう。


だが、40分もの間、必死に地面を掘ってたのだ。


火照った体に、この冷たさが気持ちいい!!!






すりすり すりすり


浅い湯船と言えど、体育座りをすれば、それなりに半身浴である。


泥水を掬い、手足を順番に洗っていく。


特に、手を綺麗に洗おう。


リュウゼツランの汁のかかった部分が痒いのだ。






しゃばしゃば しゃばしゃば


泥水に髪を浸けることで汚れを浮かせて、頭髪を洗う。


5歳児と言えど、男の頭皮は繊細デリケートなのだ。


ゆっくり、優しく洗っていこう。






そうして、一通り体を洗い終えて、仰向けにリクライニングするように湯船に浸かる。


小さな湯船からは、手足が外にはみ出る。


ああ、気持ちいい。


「お風呂と言うより、泥浴びなのかな。」


テレビで泥浴びをするカバを見たことはあれど、泥浴びとは、これ程気持ちのいいものだったのか。


うん。


これからは、毎日泥浴びをしよう。






何も無い川床の真ん中で湯船に浸かり、空を見上げて瞳を閉じる。


瞼越しに感じる太陽の光が、暖かくて心地いい。


ああ、これは・・・。


「極楽だ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ