第五十三話「水源探索 in 荒野」
乾いた風が荒野を吹き抜けて、乾燥した大地を砂埃が高く舞い上がる。
それでは、荒野での水源探しを開始しよう。
まずは、水源探索作戦の立案である。
既に三日を過ごした荒野だと言うのに、川や池といった水源が一つも見当たらないのだ。
闇雲に探索をした所で、水源を見つけられる可能性は低いだろう。
「少し情報を整理しよう。」
これまでの情報を整理することで、水源の所在にあたりをつけるのだ。
荒野に生息している生物は、黒サソリのみを確認。
黒サソリを尾行することができれば、水源に辿り着くことができるかもしれない。
しかし、これは却下である。
黒サソリの尾行に失敗すれば、黒サソリが反転して襲い掛かってくるのだ。
黒サソリから捕食されるのは、ご免こうむる。
加えて、そもそもサソリとは、乾燥に強い生物なのだ。
尾行をした所で、その行き先が水源である可能性は低い。
「黒サソリの動向から水源の所在を見出すのは難しいか。」
他のアプローチ方法を考えてみよう。
荒野に分布している植物は、アカシアとリュウゼツランを確認。
なお、アカシアとリュウゼツラン以外にも何種類かの植物を確認しているが、それら植物の名称は不明である。
しかしながら、この荒野で生育していると言うことは、何らかの手段で水を補給していることを意味しているのだ。
この荒野の植物から何らかのヒントを得ることができれば、水源を発見することも可能かもしれない。
さしあたって、前世から引き継いだ知識のあるアカシアとリュウゼツランから考察を開始しよう。
まずは、アカシアからだ。
アカシアについて知っていることは2つ。
1つ目は、アカシアが地下深くに根を下ろすことで乾燥に適応した植物であるということ。
2つ目は、キリンの大好物であること。
キリンさんは、アカシアの枝についた鋭いトゲを器用に避けてアカシアの葉を食べるのだ。
うん、2つ目の知識は必要ないかな。
役に立ちそうなのは1つ目の知識だが、アカシアの木の根元を深く掘り下げることができれば、いずれ水源に辿り着くことができるのだろうか。
うーん、却下である。
アカシアの木の根本を数日かけて掘ったとしても、人間は三日の絶水で死に絶えるのだ。
地下水脈に辿り着く前に力尽きるのが落ちである。
続いて、リュウゼツランに考察を移そう。
しかしながら、僕がリュウゼツランについて知っていることは、1つとして無い。
地面から空に向かうようにして、アロエを思わせる肉厚の葉が、開花した薔薇の花びらのように放射状に広がって自生する。
その独特の造形が、リュウゼツランと言う名を僕の心に刻ませるのに十分だった。
ただ、それだけなのだ。
「でも、ここで思考を止めるのは良くないかな。」
リュウゼツランから水源に至る方法が無いか、何か考えてみよう。
荒野に目をやれば、疎らに生える草木に混じって、いくつかのリュウゼツランが見受けられる。
ひとまずは、リュウゼツランの所まで移動してみよう。
実物を見れば、何らかの新しい発見もあるだろう。
「ふむふむ。」
リュウゼツランの葉の肉厚は、およそ5cm。
指で押せば跳ね返ってくる確かな弾力。
僕はこれまで川や池を水源だと思い込んでいたが、もしかすると、水源とは川や池に限らないのかもしれない。
リュウゼツランのこの感触、多肉植物であるリュウゼツランの葉の内部には、多量の水分が詰まっているのだ。
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