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第五十話「デイノニクス」

前話から体長を2m前後に修正。

個体数も2から3に修正。

危なかった。


声の主が恐竜だと気付かずに木から降りていれば、間違いなく捕捉されていた。


全身の筋肉が強張っていくのを感じる。


爬虫類特有の縦に細長い瞳孔。


その瞳からは、一切の感情が感じられない。


あれは、動くものを無条件で殺す純粋な捕食者ハンターの眼差しだ。


見つかれば、死は逃れられない。






地上までの距離は、およそ10m。


恐竜は、こちらが見ていることに気付いていない。


このまま枝の上でやり過ごそう。


あれは、決して関わってはいけないものだ。






しかし、あの恐竜にはどこか見覚えがある。


ティラノサウルス、トリケラトプス、ステゴサウルス・・・。


小学校の頃は、よく図書館で恐竜の図鑑を読んでいたのだ。


恐竜の名前を当てるのには、自信がある。






さて、あの恐竜の名前は何だっただろうか。


特徴的なのは、四肢から生える鋭い鉤爪かぎづめである。


特に、後肢の内側から2番目の鉤爪が大きい。


後肢の巨大な鉤爪で獲物を押さえ込み、前肢の鋭い鉤爪で肉を引き裂くのだろう。


恐竜の数は3匹。


一度あの後肢の鉤爪で押さえ込まれてしまえば、二度と起き上がることが出来ないだろう。


“おそろしい鉤爪”か。


そして、僕は、一つの恐竜の名前に思い至った。






“デイノニクス”


“おそろしい鉤爪”を意味する小型の肉食恐竜である。


頭頂部から尻尾の付け根までの長さは、2m前後。


尻尾まで含めれば、その全長は3mを超えるだろう。


全長3m前後という大きさは、僕の記憶にあるデイノニクスの大きさとも一致している。


図鑑で見たデイノニクスの姿とは少し細部が異なるが、恐竜の姿とは、骨格や皮膚の化石を基に描いた想像に過ぎないのだ。


実物との完全な一致はあり得ない。


ひとまず、あの恐竜をデイノニクスと名付けよう。






デイノニクスか。


デイノニクスと言えば、自分よりも大きな恐竜にさえ襲い掛かる獰猛な捕食者と言われている。


うん、この恐竜とは絶対に戦ってはいけないし、絶対に見つかってもいけない。


他にどんな特徴があったかな。


確か、知能の高さと集団行動が特徴だっただろうか。


デイノニクスを隅々まで観察し、その様子から生態を考察していく。


発達した頭部の大きさから想定される知能の高さ。


三匹の寄り添った動きから推察される優れた集団行動能力。


やはり、この生物の特徴は、僕の記憶するデイノニクスと一致する。






体を可能な限り枝に隠して、枝葉の隙間からデイノニクスの動向を見守る。


ああ、怖いはずなのに、羽毛では無く鱗に覆われた恐竜の姿に、ちょっとだけ胸がドキドキしてしまう。


恐竜は、男の子の浪漫なのだ。


仕方ない。


僕は、デイノニクスが見えなくなるまで枝の上で身を潜めた。

分かりやすいデイノニクスの説明①

 ジュラシック・パークやジュラシック・ワールドに出てくるヴェロキラプトル(人より少し大きい小型の肉食恐竜)がデイノニクスです。

 映画制作当時はヴェロキラプトル=デイノニクス説があったらしく、デイノニクスをモデルにしてヴェロキラプトルが制作されたそうです。

※実際のヴェロキラプトルの重さは15kg前後。ブルドッグ(25kg前後)より軽い。


分かりやすいディノニクスの説明②

 ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマーのダイノボットがデイノニクスです。

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