第五話「昆虫採集」
さてさて、僕の今日の献立は、幼虫の盛り合わせである。
果たして、目の前の倒木の中には、どのくらいの幼虫が詰まっているのだろうか。
倒木はこの森の木々同様に大きく、倒れて横になっている幹の高さが、僕の胸元と同じくらいの高さである。
朽ち木を食べる幼虫ならば、この倒木を格好の住処とすることだろう。
コンッ コンッ
倒木に耳を押し当てて、手の甲を使って倒木にノックをして行く。
この倒木に幼虫が潜んでいるならば、幼虫からの返答があるはずなのだ。
ゴソッ ゴソッ
倒木に押し当てた耳を通して、微かに擦れるような音が倒木の中から聞こえてくる。
ああ、僕のご飯。
高タンパクな食料の気配に、思わず笑みが零れてしまう。
よかった。
本日のご飯、御在宅である。
成人男性が一日に必要とする食料は、2500キロカロリー前後とされている。
今の5歳児の肉体ならば、成人男性が必要とする食料の半分の1250キロカロリーを目安に摂取すれば大丈夫だろうか。
いや、明日の食事も約束されない大自然の中での生活なのだ。
1250キロカロリーなどとは言わず、食べられる時はしっかりと食べた方がいいだろう。
それでは、この木の中に潜んでいると思われる幼虫は、果たしてどれ程のカロリーを秘めているのだろうか。
幼虫に含まれているカロリーは知らないが、乾燥させた昆虫のカロリーは、同量の大豆に含まれるカロリーを上回ると言われている。
なお、大豆100gあたりのカロリーはおよそ450キロカロリーとされており、これは、牛肉の部位の中でも高カロリーとされるロースとほぼ同じカロリーである。
乾燥した昆虫のカロリーを500キロカロリーと仮定すると、乾燥した昆虫を食べることで一日に必要とされる食料を満たそうとした場合、250gの乾燥した昆虫が必要となってくるのだ。
だが、これから食べようとしているのは、生の幼虫である。
当然のことながら、生の幼虫には豊富な水分が含まれており、生の幼虫を食べることで一日に必要とされる食料を満たそうと考えるのであれば、乾燥した昆虫よりも多量の摂取が必要となってくる。
仮に幼虫に含まれる水分量を50%と仮定した場合、一日に必要とされる生の幼虫の量は、乾燥した幼虫の2倍の500gとなる。
「なるほど。500mlペットボトルがいっぱいに満たされるくらいの量の生の幼虫を食べればいいのかな。」
これにて、本日の必要摂取量の決定である。
タンパク質は勿論、必須アミノ酸やビタミン、ミネラルなどの栄養素を豊富に含んでいながら、たったの500gの摂取で一日に必要な食料を満たせる食材など、他に類を見ない。
流石は食糧難の救世主とも呼ばれる食材である。
それでは、頑張って幼虫を見つけよう。
倒木の樹皮が剥げている部分を起点にして、樹皮と木質の間に指を差し込み、樹皮を剥いで行く。
腐りかけて真っ黒になった樹皮は、少し力を入れるだけでベリベリと簡単にめくれ、中の木質が露わになって行く。
木質部には幼虫の喰い進んだ跡がしっかりと残っており、その喰い進んだ先には、うねうねと動く白い幼虫の姿が確認できる。
にぎり寿司ほどの大きさだろうか。
掴み取ってみれば、おおよそ5cmほどの大きさである。
成虫になることを控えて丸々と太ってはいるが、これならば、一口で食べることができるサイズだろう。
おそらく、転生してからまだ1時間も経っていない。
こんなにも早く食料を見つけることができるなんて、なんて幸先の良いスタートなのだろうか。
さてさて
それでは
「いただきます。」
【持ち物】
白い布




