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第四十九話「ピーヒョロロロ」

がぶがぶ がぶがぶ


頭上より掲げた一掴みの苔の塊から、朝露の雫が水の筋となって口の中へと流れ落ちる。


ああ、朝露が、僕の乾いた体を潤していく。


「やっぱり、朝露は美味しいなぁ。」






がぶがぶ がぶがぶ


「はい、ごちそうさまでした。」


朝露を飲み終わった苔を岩の上に戻して、森の恵みに感謝を捧げる。


それでは、荒野に戻って水源の探索をしよう。


水分を補給するために森に通う生活を続けてしまえば、謎の肉食動物に補足されてしまう可能性が高まるのだ。






くらっ


荒野に向けて歩を進めようとした瞬間、一瞬よろめいてしまった。


徹夜明けなのだ。


まだ意識こそはっきりしているのだが、集中力、身体能力の性能パフォーマンスは確実に低下している。


「これ以上の継続した活動は危険・・・か。」


仕方ない。


少し木の上で仮眠をとろう。






「おいしょ。おいしょ。」


高い木の枝の上まで登り、命綱を使って自分の体と木の幹をしっかりと結ぶ。


それでは、寝よう。


木の枝に対してうつ伏せになるように体を預けて、意識を微睡まどろみの中へと溶かしていく。


ああ、背中を温める朝の陽ざしが心地いい。






ピーヒョロロロ


ピーヒョロロロ


どこからか聞こえてくる鳥の鳴き声が、僕の意識を現実へと呼び戻す。


そういえば、昨日もこの鳴き声に起こされたような気がする。


この独特の鳴き声は、とびの鳴き声だっただろうか。


いい声だ。






さて、そろそろ活動を再開しよう。


空を見上げて、太陽の位置を確認する。


この世界の太陽は、森から昇って荒野に沈むのだ。


太陽の角度は高いものの、太陽は、まだ森側に位置している。


正午前、昼の11時と言ったところだろうか。






ピーヒョロロロ


ピーヒョロロロ


「あれ・・・。」


鳶ならば、空を旋回しながら飛んでいるのではないだろうか。


いや、鳶だけでは無い。


先ほどから空を見上げ続けていると言うのに、鳥が一羽も飛んでいないのだ。


思い返せば、この世界に転生してから、まだ鳥を見ていない。






少し声の主を探してみよう。


目を閉じて、鳶の鳴き声に耳を傾ける。


どこか木の枝にとまっているのだろうか。


否、鳶の鳴き声は、下の方から聞こえてきている。


鳶に気取られないように、ゆっくりと慎重に木を降りていく。


そして、僕は、この鳴き声が木の枝より更に下から聞こえてきていることに気付いてしまった。


この鳴き声は、地上から聞こえてきているのだ。






ピーヒョロロロ


ピーヒョロロロ


地上を歩く声の主は、決して鳶などでは無かった。


木の枝にしがみ付き、息を殺してその姿を見つめる。


個体数3。


体長は、2m前後と言った所だろうか。


灰色がかった深い緑色の体色。


体毛の生えていない鱗に覆われた外皮。


渇水した川床を張り付けたような、ひび割れた肌の質感。


長く突き出した鼻口部マズルと鋭く並んだ歯列。


爬虫類。


二足歩行。


かつて、図鑑で見た恐竜そのものである。


鳶の鳴き声だと思っていたものは、恐竜の鳴き声だったのだ。

【持ち物】

白い布

蔦の命綱

石槌

石ナイフ

大腿骨

蔦の紐

骨の槍


【スキル】

木登りLv.1

崖登りLv.0

火おこしLv.1


【生産】

蔦の命綱

蔦の紐

アカシアのバリケード

格子状のバリケード

石槌

骨の槍

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