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第三十九話「食レポ2(骨髄)」

指ですくい上げた骨髄を口の中に運ぶ。


ムニョ ムニョ


食感は、指で触った通りのピーナッツバター。


加えて、若干の塩気と高栄養価ハイカロリーを感じさせるあぶらの風味。






ムニョ ムニョ


骨髄とは、血液をつくる組織である。


このどこかで覚えのある鉄の味は、血の成分によるものだろうか。


(血の味のするピーナッツバターか。悪くない。)






ムニョ ムニョ


咀嚼を繰り返すうちに、凝固していた骨髄の細胞が舌の上で溶け始めた。


脂味の中に封じ込められていた骨髄本来の味が、口内の体温でじんわりとにじみ出していく。


美味しい。






仔牛の骨を長時間煮込むことによって骨髄から旨みを抽出した出し汁を“フォン・ド・ヴォー”と言う。


美食として名高いフランス料理に使われるスープの基礎ベースである。


当然ながら、とても美味しい。


その濃厚な旨みと深いコクは、飲んだ者に活力を与えてくれるスープの最高峰と言えよう。


また、骨髄から抽出した出し汁を基礎ベースとするのは、ラーメンも同様である。


“豚骨スープ”や“鶏ガラスープ”もまた、骨を長時間煮込むことで骨髄から旨みを抽出してスープを作るのだ。


当然ながら、これも美味しい。


そのスープの美味さは、“フォン・ド・ヴォー”に勝るとも劣らないスープの到達点の一つと言えよう。


つまり、骨髄は美味しいのだ。






ムニョ ムニョ ゴクン


骨髄が喉元を通り、若干の獣臭さが鼻に抜けていく。


この鼻に抜ける獣臭さは、四足獣の食性を反映したものだろうか。


思い返せば、日本で食べる肉に臭いのするものは少なかった。


畜産業を営む生産者の努力により、肉の臭いが最大限に抑えられているのだ。






日本で生産される牛肉からは、草の臭いが感じられない。


牛に食べさせる飼料を草類から穀物に変えることで、肉に草の臭いがつくのを防いでいるのだ。


これは、日本産の牛肉だけに当てはまる話では無い。


輸入牛肉で最大の割合を誇るオーストラリアで生産されるオージービーフもまた、日本人向けに飼料を穀物に変えて生産しているのだ。






生前に野生の猪を食べた時にも、このような獣臭さを感じたことがある。


草を食べる草食動物ですら肉に臭いがつくのだ。


この獣臭さは、雑食や肉食の野生動物の肉につく臭いなのだろう。






しかし、この獣臭さを評価することは難しい。


僕の理性が「この獣臭さが無い方がより旨みを感じられる」と言っているのに対して、僕の本能が何も言わずにこの獣臭さを肯定しているのだ。


うん、分からないからもっと食べて評価しよう。






指で骨髄をすくい取り、また口へと運ぶ。


ピーナッツバター状に凝固している骨髄からはそれ程旨みを感じられないが、咀嚼を繰り返す程に骨髄の旨みが口の中に溶け出してきて美味しい。


「もしかして、火を通した方が美味しかったんじゃないかな。」


ま、いいや。


これはこれで乙な味なのだ。






※草類を食べさせて飼育している畜産家も居ます。


草類を食べさせる場合は赤身が多くなるので、近年の赤身ブームを考えれば草類を飼料にする畜産家が増えていく可能性は十分にあります。

【持ち物】

白い布

蔦の命綱

石槌

石ナイフ

大腿骨


【スキル】

木登りLv.1

崖登りLv.0

火おこしLv.1


【生産】

蔦の命綱

アカシアの防護柵

石槌

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