第三十六話「検死」
前回がグロかったので今回はグロ抑え目。
グロい場面のさじ加減を考え中。
死体は、多くの情報を与えてくれる。
白骨化することで分かる四足獣の骨の太さ。
一般的に爬虫類の骨組織は哺乳類のそれよりも細く脆いと言われているが、この剥き出しとなったあばら骨の太さは、爬虫類と言うよりも牛科の哺乳類を彷彿とさせる。
「尻尾が長いから爬虫類だと思ったんだけどな。」
爬虫類の骨格を持ちながらも、牛科の哺乳類を彷彿とさせる頑強な骨組織。
本当にこの世界は不思議に満ちている。
視線をあばら骨から頭部へと移す。
白骨化した頭蓋骨に、牛のような角が生えていた形跡は無い。
だが、発達した犬歯や鋭い臼歯から判断するに、これは肉食動物の死骸なのだろう。
体長2mから3m、肉食動物、太い骨から導き出される生前の筋肉量・・・。
前世の知識に当てはめるのならば、間違いなく頂点捕食者の一角である。
それでは、そのような大型の捕食者が、一体どのようにして仕留められたと言うのだろうか。
左手で服の胸元を持ち上げて鼻と口を覆い、地面に横たわる四足獣の死骸の周りを回りながら状態を観察する。
なるほど。
白骨化が進んでいるというよりは、喰われた量が多いのか。
剥き出しとなった骨の表面を見れば、いくつもの細かい傷がついている。
傷の多さからすると、襲った相手は群れだろうか。
四足獣の背後に回り骨の一つ一つを観察していくと、腰骨のところで視線が止まった。
弧を描くようにして穿たれた幾つもの円形の傷跡。
腰骨を貫通するこの深い傷跡は、四足獣を仕留めた捕食者がつけた歯型なのだろうか。
腰骨の傷跡を手でなぞる。
「僕の指が入るほどの穴の大きさ。これが致命傷だったのかな。」
頭蓋骨の口を開け、腰骨についた歯型と四足獣の歯型を比較する。
歯型から分かる捕食者の突き出るように長い鼻口部。
腰骨についた傷跡の大きさから判断するに、捕食者の歯の大きさは四足獣と同サイズか。
しかし、顎の横幅は四足獣のものよりも明らかに狭い。
「四足獣を襲ったのは、別種の肉食動物・・・。」
共食いでは無い。
歯型や歯の大きさから判断するに、この捕食者の体長は四足獣と同等だろう。
むしろ、顎の横幅が狭いという特徴から考えれば、捕食者の方が小さいという可能性も高い。
だが、この腰骨についた歯型の角度を見れば、それは背後から襲われたことを意味している。
同サイズの肉食動物を相手にして逃げるという判断に迫られ、背後から襲われた・・・。
「となると、やはり群れ。」
この森には、体長2mから3mの肉食動物を集団で襲って餌とする強力なハンターが存在するのだ。
群れで行動する大型の肉食動物。
森を拠点にして群れで行動する肉食動物と言えば、狼だろうか。
しかし、狼の大きさは、精々1mと少し。
腰骨についた歯型の大きさや顎の細さから考えると、狼とは別種の生物だろう。
「おそろしいな。」
おそろしいのは、群れで行動する大型の肉食動物だけでは無い。
この被害者となった四足獣もまた2mを超える大型の肉食動物なのだ。
出会ってしまえば、間違いなく捕食対象である。
ぐ~
深刻なことを考えていても、お腹が空くのは止められない。
「少し検死に時間をかけてしまったかな。」
この捕食者の正体は分からないが、ひとまず虎サイズの狼の群れと想定しておこう。
もう腹ペコなのだ。
そろそろ今日の食事にしてしまおう。
【持ち物】
白い布
蔦の命綱
石槌
石ナイフ
【スキル】
木登りLv.1
崖登りLv.0
火おこしLv.1
【生産】
蔦の命綱
アカシアの防護柵
石槌




