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第二十九話「下山」

「やっぱり、頂上付近は石の風化が激しいな。」


いくつか石斧に使えそうな石を拾ってみたのだが、ひびの入っているものが多く表面の粒子も荒い。


頂上付近の石で石斧を作ったとしても、この石質では十分な耐久性を得ることはできないだろう。


また、盛り上がった岩盤に形成された吹き溜まりには風化によってできた砂が堆積しており、特に風化が激しい岩肌などは指で押すだけで脆く砂へと変わってしまう。


しゅごい。






しかし、足の裏が冷たい。


明け方の日差しが岩肌を照らしているものの、夜の冷却を受けた岩肌は大変に冷たいのだ。


「昨日は太陽の光を受けて暖かかったのにな・・。」


ともかく、頂上付近の石は使わないのだ。


なるべく早くに下山してしまおう。






急ぎ足で下山していくと、昨日の急勾配に差し掛かった。


いけるだろうと高を括って登ったら、腕の筋肉がパンパンになった急勾配である。


当然のことながら、斜面を伝って降りるのは危険である。


ここは、素直に命綱を使って降りることにしよう。


適当な岩盤に命綱を括り付け、崖の下にたらす。


後は、命綱を伝ってするすると降りて行くだけである。






「ほいっと。」


無事に急勾配を降りることができた。


登る時は大変だったと言うのに、命綱を伝って降りるのはとても簡単であった。


上の岩盤に命綱を括り付けることもできたので、これで登りも安心である。






不思議なことに、急勾配さえ降りてしまえば石のひび割れは急激に少なくなる。


いくつか石を拾ってみたところ、石質がなめらかで粒子も細かい。


これならば、石斧に使う石材として申し分ないだろう。


と言うことで、石材探しを再開しよう。






下山しながら石材を探していく。


ひび割れも無く石質も滑らかなので、石斧に丁度いい石材はすぐに見つかった。


でも、折角なのでよりよい石が無いかをチェックして行こう。


岩山の石は、それぞれに形や重さが違うので、いざ拘ると奥が深いのだ。


よりよい石材が無いかと石をチェックしながら下っていると、下山するにつれて石の表面の色が少しずつ濃くなっていることに気が付いた。


湿っているのである。






灰色の花崗岩は、少しでも湿るとスッと黒くなる。


朝の冷気にあたって、朝露あさつゆとまでは行かないまでも石の表面に水分がついているのだろう。


「朝露・・・朝露・・・朝露!」


僕は、急いで山を下った。


岩山の麓の岩肌には苔が生えており、その表面には朝露が水滴となって浮かんでいる。


「おぉぉ、貴重なお水だぁ!!」

【持ち物】

白い布

蔦の命綱


【スキル】

木登りLv.1

崖登りLv.0

火おこしLv.1


【生産】

蔦の命綱

アカシアの防護柵

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