第二十八話「2日目開始」
「ああ~、すっきりした。」
涙がたくさん流れて、今は気分が爽快である。
こんなにわんわん泣いたのは、子供の時以来だろうか。
森の向こうからは、少しずつ太陽が顔を出してきている。
それでは、一日を開始しよう。
土をかけて焚火の炎を消し、アカシアのバリケードを解放する。
「まずは、石斧かな。」
昨日から石斧が欲しいと思っていたが、昨夜のサソリとの攻防を経てその思いは一層強くなった。
とりたててサソリと戦いたいわけでは無いのだが、自衛のための武器は必要である。
それに、石斧を作ることさえできれば、木材を伐採、加工することができるようになるのだ。
この大自然の中で生活していくことを考えれば、木材の伐採や加工をするための道具は、生活の質を向上させていく上で必要不可欠なものとなるだろう。
「なるべくなら、生活を豊かにするために石斧を使っていけるといいな。」
まずは、石斧を作るために必要な材料を揃えよう。
と言っても、必要な材料は、握りやすい木の枝が一本と拳サイズの石が一個だけなので、材料を集めるのこと自体は簡単だ。
むしろ、焚火をするために組んだ石と残りの薪がこの場にあるので、石斧を作るための材料そのものは既に揃っていたりする。
しかし、薪はともかくとして、焚火をするために組んだ石を石斧の石材とすることはできない。
この荒野に落ちている石は、岩山の頂上付近の石と同じく風化が激しいのだ。
現に、火床の周りに組んだ石の表面をよく見れば、各所にひび割れを確認することができる。
一日の寒暖差が激しい乾燥地帯では、日々繰り返される急激な温度変化による膨張と収縮に石が耐えられず、石がひび割れ脆くなってしまうのだ。
石材とするのならば、ひびの入っていない硬い石がいい。
となると、石材探しに適所なのは、岩山の麓になるのだろうか。
岩山の石質は不思議なもので、山頂付近の石こそ風化が激しいのだが、岩山の麓の石からは特に風化している様子が見受けられなかったのだ。
何より、あの岩山は、耐久性に優れる花崗岩で構成されている。
花崗岩は、建物のタイルやブロックをはじめとして、墓石やカーリングの競技用ストーンなどにも使われている石材である。
石斧の材料としては、申し分のない石材となるだろう。
そうと決まれば、岩山の麓へと移動しよう。
アカシアのバリケードと薪を残して、手ぶらで岩山へと向かう。
ここにアカシアのバリケードを残しておけば、サソリのような外敵に襲われた時に逃げ込むことができるかもしれない。
森で寝床を作る場合は、新しくアカシアの枝を調達してバリケードを作ることにしよう。
「さて、登ってきたのはどこだったかな。」
岩山の山頂から麓へは元来た道を通って下山する。
この岩山は、どこからでも登れるような岩山では無かった。
下山とて、どこからでも降りられる岩山では無いだろう。
適当な場所から下山すれば、急な崖や行き止まりで下山できなくなる可能性が高いのだ。
しばらく歩くと、岩山と荒野の境界へとたどり着いた。
岩山の山頂は、岩山を横一文字に切ったかのように台地となっており、どこまでも水平な荒野が続いている。
また、台地となった山頂から森を見渡せば、森の中で佇む木の巨人と森を流れる大きな川が確認できる。
このまま岩山と荒野の境界に沿って歩き、岩山を登頂した場所へと移動して行こう。
岩山と荒野の境界を歩きながら、木の巨人と川の位置関係が登頂した時と同じになる場所を探す。
木の巨人と川の位置関係が登頂した時と同じになる場所が、岩山を登頂した場所になるのだ。
「ここかな。」
目の前には、昨日登頂した時と同じ風景が広がっている。
それでは、下山をしながら石斧に使う石材を探して行こう。
【持ち物】
白い布
蔦の命綱
木の枝×50↑UP
アカシアの枝×0↓DOWN
【スキル】
木登りLv.1
崖登りLv.0
火おこしLv.1
【生産】
蔦の命綱
アカシアの防護柵




