第二十五話「月と星と」
仰向けに寝転がり、空を見つめる。
先ほどまで大地を照らしていた太陽は荒野の地平へと沈み、夕暮れだったの赤い空が、空の端だけを赤く残して黄昏時の濃い藍色へと空の色をを変えて行っている。
なんとか三つの目標を達成することができた。
第一の目標である幼虫は十分に食べられたし、第二の目標であるお水も飲めた。
加えて、第三の目標である寝床は、暖かい焚火とトゲトゲのバリケードを備えた立派なものを作ることができた。
「今日は充実した一日だったな。」
後は寝床で寝るだけだと考えると、気分が軽い。
時間ばかり気にして何度も空を見上げていたと言うのに、今日の目標から解放された今となっては、とても素直な気持ちで空を見ることができている。
ああ、黄昏時の藍色の空が美しい。
時と共に色味を深くする藍色の空に、少しずつ月や星々のあかりが灯り始めている。
「あれ、月が二つある。」
黄昏時の空の片隅に、寄り添うように二つの満月が浮かんでいたのだ。
この世界には、月が二つあるのかな。
いつか異世界を舞台にしたアニメに、二つの月が存在する世界があったのを覚えている。
「月が二つあるのって綺麗だな。」
寄り添うように並んだ二つの月に、かつて抱いた憧憬が蘇る。
これは、いつか空想の世界に思いを馳せた光景なのだ。
「まさか本当に見られる日が来るなんて、僕は幸せだな。」
まるで、子供の時に見た夢の続きのようである。
程なくして、空の藍色は黒色へと色を落とし、荒野を夜の闇が包んだ。
夜空には雲一つ無く、頭上には数多の星が輝いている。
空に輝く星々がとても近くに見えるのは、山の上だからだろうか。
「天を満たす星の海・・・。」
満天とは、このような星空のことを言うのだろう。
有史以前の人類は、星の動きを観察することで季節が一定の周期で巡るということを発見し、その土地の気温の変化や乾季と雨季の変化を見極め、農作物の種を撒く日と刈り取る日を決めた。
また、地平線上に目印の無い荒野や砂漠を移動する遊牧民や、陸地の見えない海洋を航海する船乗りは、星の位置から自分の位置や向かうべき方角を見出した。
この星空を観察していれば、いつか僕にも分かる日が来るのだろうか。
でも、今日は少し疲れたな。
もう少しこの星空を見たかったのだけれど、今はとても眠い。
大変だったけど、楽しい一日だったな。
静かな荒野に聞こえてくるのは、焚火の音だけである。
それでは眠ろう。
「おやすみなさい。」
【持ち物】
白い布
蔦の命綱
木の枝×150
アカシアの枝×100
【スキル】
木登りLv.1
崖登りLv.0
火おこしLv.1
【生産】
蔦の命綱
アカシアの防護柵




