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第二十三話「寝床づくり」

トゲの付いた木の枝を拾いながら荒野を歩いていると、その根源となる一本の木を見つけることができた。


幹は細いものの5m程の高木で、枝にはきりを思わせる長く鋭いトゲが伸びている。


また、葉軸ようじくからは細長い楕円形の小葉が隙間なく左右対称に生えており、葉軸に規則正しく並んだ葉の配列は、ワラビやフジの葉を思い起こさせた。


「これは、アカシアの木じゃないかな。」






アカシアとは、地中深くに根を伸ばすことから乾燥に強いとされているマメ科の常緑樹で、主に荒野や砂漠といった乾燥地帯に原生している植物である。


前世においては、その優れた耐久性と腐りにくいという特徴から、家具や建材として高い人気を持つ木材であったことを覚えている。


アカシアの木を加工できる道具があれば、ウッドハウスやインテリアを作ることも可能なのだろう。


「よし、決めた。明日は石斧を作ろう。」


この荒野にアカシアのウッドハウスを建てるだ。






さて、この高木からも枝を採集しよう。


アカシアの木の前に立ち、手を合わせる。


「枝を少し頂きます。」


アカシアの木を前にして、不思議とこの言葉が出てきた。


蔦を採集する時には何も感じなかったのだが、大地に根を張った生木の枝を折るのには抵抗があったのだ。


今更ではあるが、採集した蔦に対して心の中で謝ろう。


蔦さん、ごめんなさい。






荒野で集めたアカシアの枝は、薪用に集めた木の枝の隣に山盛りにして置いていく。


採集した枝の本数は100本を超えており、中でもアカシアの木から直接採集した枝は、僕の身長よりも大きい。


「十分に採集できたかな。」


アカシアの枝は薪用の枝よりも本数こそ少ないが、アカシアの枝には鋭くて長いトゲが生えているため、一見しただけでは、150本集めた薪用の枝よりも山盛りのアカシアの枝の方がかさが大きく見えてしまう。


なるべく高めのバリケードを作りたいので、このアカシアの枝のかさが大きいのはありがたい。






それでは、材料が揃ったので寝床づくりを開始しよう。


まずは、アカシアの枝を円を描くようにして地面に並べて、荒野のど真ん中に直径1.5m程のサークルを作っていく。


5歳児の肉体はデメリットとなることが多いが、寝床がコンパクトになるのは数少ないメリットの一つだろう。


直径1.5m程のサークルが完成した後は、サークルに沿ってアカシアの枝を重ね置きしていくだけである。


バリケードを作る際に重要となってくるのは、手持ちのアカシアの枝でどれだけ高くバリケードを作れるかである。


曲がった枝をパズルや積み木のように組み合わせ、効率的にバリケードの高さを確保していくのは、けっこう楽しい。






アカシアの枝をすべて使い切り、寝床を高さ1mのバリケードで囲うことができた。


有史以前、アカシアの生えている荒野や砂漠では、アカシアは人間にとって欠かせない植物であった。


見通しがよく外敵に発見されやすい荒野や砂漠といった不毛の地において、アカシアの持つ鋭いトゲは、外敵から家族や家畜を守る防護柵バリケードとして無くてはならないものだったのだ。


改めてバリケードを見てみると、アカシアの鋭いトゲの囲いは、さながら有刺鉄線のようである。


流石は、先人たちが愛用した天然素材のバリケードである。


これならば、夜中に狼などの外敵が現れたとしても大丈夫だろう。


既に太陽は傾き、夕日が荒野を少しずつ赤に染めようとしている。


間に合った。


「よし、後は火おこしだ。」

【持ち物】

白い布

蔦の命綱

木の枝×150

アカシアの枝×100


【スキル】

木登りLv.1

崖登りLv.0


【生産】

蔦の命綱

アカシアの防護柵

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