第二十話「乾燥地帯」
どこまでも続く荒野を乾いた風が吹き抜ける。
これまで続いていた花崗岩の大地は山頂で終わりを告げ、頂上の台地からは赤土の荒野が始まっている。
山を境にして気候が変わるという話は聞くが、それは雲や風の流れを変えるほどの大きな山脈があってこそ起こる現象であり、このような標高の低い山で起こる現象では決して無い。
加えて、この岩山の頂上は、あの湿潤な森から水平距離にして1kmも離れていないはずである。
荒野から視線を外し、岩山の頂上から森へと目を落とす。
眼下には雄大な森が広がっており、遠くには両手を広げて聳え立つ木の巨人や、森の中を流れる川を確認することができる。
今見下ろしている森には、巨大な木々や苔類、シダ植物といった降雨量を前提としなければ育たない植物が多い。
おそらく、雨の多い温暖な気候で形成された温帯雨林と呼ばれる森なのだろう。
それに対して、この台地に広がる荒野は一体どう言うことなのだろうか。
空気はカラッと乾燥しており、乾ききった赤土は、この台地が降雨量の少ない地域だということを示している。
また、岩山の麓に広がる湿潤な森とは対照的に、この荒野に広がっているのは、閑散とした木々と背の低い枯れかけた雑草のみである。
森と荒野を結ぶ距離が1kmにも満たないに関わらず、どうしてこれ程までに異なる様相を呈しているのだろうか。
ともかく、この荒野を少し歩いてみよう。
気温は岩山を登っていた時よりも高く、見上げれば青空から降り注ぐ太陽の光が眩しい。
気のせいであろうか、肌をさす太陽の光さえ強くなっているように感じる。
疎らに生える木々をいくつか通り過ぎたが、その中に森の中で見受けられた杉や樫といった木々は無い。
苔類やシダ植物に至っては、この気候で生育することは不可能であろう。
この荒野の植生や気候を確認しながら歩いて行くと、見覚えのある植物の葉がニョキっと空に向かって生えているのを見つけた。
肉厚のアロエのような葉が薔薇の花びらのように放射状に広がって生えるこの植物は、リュウゼツランと呼ばれる乾燥地帯に生える常緑の多年草である。
リュウゼツランが生えているということは、やはり、ここは乾燥地帯なのだろうか。
この世界は、考えても答えの出ない不思議なことが多い。
今は、見たものを素直に受け入れよう。
乾いた木の枝を拾い、火おこしの準備をするのだ。
【持ち物】
白い布
蔦の命綱
【スキル】
木登りLv.1
崖登りLv.0




