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【祝コミカライズ】銀狼殿下の専属薬師~冷酷な狼王子は私にしか懐かない~  作者: ぽんぽこ@銀郎殿下5/16コミカライズ開始!!


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第39話 静かな陽だまりに落ちる影

 昼下がりの柔らかな陽光が、医務室の白い壁にふんわりと広がっていた。棚には薬瓶がきれいに並び、乾燥させた薬草の香りが空気をほんのりと満たしている。ここに流れる空気は、王城の中でも特に穏やかだ。


「これで大丈夫です。無理だけはしないでくださいね」


 私は包帯の端を留め、手当てをしていた兵士ににこりと微笑んだ。兵士は照れくさそうに頭をかきながらも、深く礼をしてくれる。


「ありがとうございました、マリー様。本当に助かりました」


 そう言って退出していく背中を見送りながら、私はそっと息を吐いた。


「……誰かの役に立てるって、やっぱり嬉しい」


 胸の内が温かくなる。転生してからずっと、迷惑ばかりかけているようで不安だった。でも今は、少しずつ──ちゃんと“この世界で生きている”と実感できている。



 だけどそんな穏やかな時間は、長くは続かなかった。


 気配が、扉の外に立つ。


 ふと顔を上げた瞬間──医務室の入り口に、紅茶色の外套を肩に掛けたモルト殿下が静かに立っていた。


 日差しを背に受けて微笑む姿は、絵画の一枚のように整っているのに……胸が、ぎゅっと固まる。


「働き者だね、マリー」


 優しい声。なのに、背筋がすうっと冷える。


「少しだけ、お時間をいただけるかな?」


(……来た。さすがに昨日のあれだけじゃ終わらなかったか……)


 息を整え、私は丁寧に返す。


「……はい。何のご用件でしょうか?」


 殿下は首を傾け、にこりと微笑んだ。


「ここでは何だ。少し、静かな場所に移動しよう」


 その声音はいつも通り柔らかい。けれど、その言葉に潜む“意図”が分かるだけに、胸の奥がざわついた。


 私はゆっくりと頷く。けれど、瞳の奥に宿る警戒までは隠しきれなかった。



 ◆


 応接間は医務室から近い場所にあるものの、人目は少ない。昼の柔らかな光が高い窓から差し込み、淡い金色の線を床に描いていた。静けさは確かにある──だが、落ち着くどころか胸がざわめく。


 モルト殿下はゆっくりと紅茶のカップを口元へ運び、優雅な所作のまま言った。


「君の知識と技術には驚かされるよ、マリー」


 それは褒めているんだろうか。まるで悪人の“犯行手口”に呆れているかのような口ぶりですが。



「そんな君に──狼牙の毒だけを抜き、戦闘能力を引き出せる薬を作ってもらいたい」


 私は貼りつけた笑みのまま、言葉を選ぶ。


「……随分、特殊な薬を望まれるのですね」


 モルト殿下は紅茶を置き、静かな微笑を向けた。


「それをノエル兄上に飲ませたい。君から渡せば、きっと拒まないだろう?」


 心臓がひとつ、跳ねた。


 やっぱり──この人は、自分の目的のためにノエルを利用する気だ。



「薬は……誰かを助けるためのものです」


 慎重に言葉を返すと、殿下の瞳がかすかに細くなった。


「もちろん。これは“守る”ための薬だよ。兄上がより強く、冷静でいられるようにね」


(……おかしい。この人は“強さ”の意味を履き違えてる)


 ノエルは確かに強い。けれど、心を失ってまで得る強さなんて──ただの呪いだ。



 殿下は続けた。


「貴族であるキミなら、分かってくれるよね? これは兄上のためでもあり、国のためでもある」


 理屈と正義を並べ、情を添えて圧をかけてくる。「断りにくい理由」を巧みに積み上げるやり方だ。


 私が沈黙した、その一瞬。


 殿下はゆっくりと懐に手を入れ、一枚の紙を取り出した。



「ところで──これに見覚えは?」


 軽く机に置かれたそれを見た瞬間、息が止まる。


 スラムで違法調合をしていた少女の記録。荒い筆跡の似顔絵は、幼い頃の私に酷似していた。


 手が震え、視線を落とす。


「素性に傷のある者が、王族の傍にいてよいのかな?」


 殿下の声は優しいのに、突きつけられた内容は冷酷そのものだった。


 拳を握る。震えは止まらない。


 それでも──俯かない。


 殿下の瞳が、愉しげに揺れた。



「まあ、キミがどんな選択をしようと構わないよ。ただし、僕以外がどう思うかは分からないけどね」


 微笑は深まり、空気はさらに危うい色を帯びていく。



拙作をお読みいただき、本当にありがとうございます。

読者の皆さまの応援が書く原動力となります。

もしよろしければ、★評価などいただけますと、作者の励みになります。

今後の創作にもつなげていきたいと思っております。

心より感謝をこめて──今後ともよろしくお願いいたします!

◤  5月より漫画連載スタート!  ◥

   こちらはノベル版となります。

◣(小説家になろう・出版社の許諾済)◢

挿絵(By みてみん)

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◤  5月より漫画連載スタート!  ◥
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― 新着の感想 ―
とうとうモルトさんがマリーちゃんの正体にたどり着いてしまいましたね!! "僕以外が"という言い方が非常に恐怖を煽るようで、言葉選びのセンスがすごいです。 相手の気にしていることを突いて、国のためという…
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