第22話 義妹と始まる最後の学期の件
1月中旬、俺たち3年生の最後の学期が始まろうとしていた。
冬休みも終わり、今は生徒全員が平常通りの学校生活を送っていた。
ただ、その中でも3年生の生徒たちは少し落ち着かない様子だった。
卒業までの日めくりカレンダーなどまで作成している。
そんなある日の放課後、久人は凜と帰宅しようと思い、校門で彼女が来るのを待っていた。
「・・・」
久人は本を読みながら待っていると、目の前に人の気配を感じて顔を上げる。
「やあ、久人!」
すると、そこには優理がいた。と思ったが、その隣にもう一人。
「ああ、優理・・・と、南さん」
南クロエがいた。恋人同士である二人は手を繋いでいた。
そんな姿を目の前で見せられると、なんだかむず痒くなってくる。
「こんにちは、安藤くん」
「こんにちは、二人は今帰り?」
「うん、そうだよ。 久人は・・・」
「優理!」
「あ、うん、そうだね」
なにかに感付いたクロエが優理を制し、二人がいらぬお節介をしてくる。
久人はその反応に何も言えず、恥ずかしさを隠すかのように手に持っていた本に視線を戻す。
「そういえば、優理、この前安藤くんに負けたよね?」
ギク!!
そんな音が聞こえてきそうなくらい優理が動揺し始める。
「え!? あ! いや、そのーあれは・・・」
久人はなんの話か分からず少しの間考えたが、すぐに答えが見つかった。
「ああ、学校祭の話?」
「そう、その学校祭で優理が安藤くんに挑んだ知恵の輪対決のことだよ」
「あの時は驚いたよ、いきなり名前を呼ばれたからね」
「ごめんね、優理が変なことしちゃって・・・」
「いや、大丈夫だよ」
久人とクロエがそんな話をしている隙に、優理はなんとかこの場から去りたかったが、クロエと手を繋いでいたため、それは叶わなかった。
「しかも、負けちゃうなんてねー」
「ひ!!」
クロエがそう言った瞬間、優理は急に涙目になって悶え始めた。
「・・・」
それを見ていた久人はなにが優理をそうさせているのか、すぐに気が付いた。
優理とクロエが繋いでいる手からギリギリと不気味な音が鳴っていたのだ。
「わたし、安藤くんに乗り換えちゃおうかなー」
「え!?」
クロエのその一言に優理と久人は同時に声を出した。
「やだなー冗談だよー・・・・・・・・・・・・・・・多分」
「ははは、そうだよねーびっくりさせないでよ、クロエー!」
「・・・」
優理にはクロエが最後に言った一言が聞こえていない様だった。
ただ、久人はしっかりとその一言をとらえていた。
「それじゃ、安藤くん、わたし達はこれで」
「あ、うん、さよなら・・・」
「じゃあね、久人」
「ああ、じゃあな、優理」
そう言って、二人は校門の外に去って行った。
久人はそんな二人を見送って、再び読書を始めた。
すると、そんな久人の元に凜が走ってきた。
「久人くん、ごめん待った?」
「苦じゃないから、問題ないよ」
「それじゃ、帰ろっか」
そう言って、手を繋ごうと思った瞬間、何人かの生徒たちが久人たちを呼び止めた。
「水原さん! あの!」
「わたし達にちょっと付き合ってくれませんか!」
「えっ?」
その生徒たちは男女まばらだった。おそらく、久人たちの関係に反対する人たちだろう。
瞬く間に凜を取り囲んでしまう。そして、凜の手を引っ張って校舎内に引き戻されそうになる。
「いや、あの、あたしは・・・!」
凜が久人の方を見る。
久人は手に持っていた本を閉じて、鞄にしまう。
(もう尻込みはしない。 今度は俺が凜を引っ張らなきゃな・・・)
久人はすぐに凜の手を掴んで自分の体に抱き寄せる。
「な、なにすんだよ!」
「凜さんが嫌がってるじゃない!」
反対派からくるそんな言葉を無視して、久人は凜に問う。
「凜、校舎に戻る? それとも、一緒に帰る?」
久人の体に背中からもたれかかっていた凜はその質問にはっきりと一言で答えた。
「帰る!」
「よし帰ろう」
そう言うと、久人はすぐに凜の手を取り指を絡める。
そして、凜の手を引っ張って、校門から飛び出していった。
久人たちの背後からは反対派が叫び声のようなものがあげていたが、久人と凜の耳にはまったく入ってこなかった。
このままどこかに走り去りたい。
そんな錯覚のようなものを感じてしまう。
しかし、そんなことは出来ない。
いずれはあの問題にも立ち向かわなくてはならない。
自分たちは兄妹だという問題に。
久人と凜は互いに目が合うと、微笑み合いそのまま二人の自宅に駆けていく。
今は、今だけは、ただこの幸せを二人で感じていた...
また一つ、ある問題にぶつかることなど知らずに...
すいません!!
完全に投稿が遅れてしまいました!!!!
予約掲載をしていたのですが、それが上手く動作しなかったみたいで...
今回からまた作品を執筆していきますので、どうかこれからも応援よろしくお願いします。
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