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第17話 義妹と波乱の学校祭

 あれから、久人はストレスが溜まりまくっていた。

 理由はもちろん、男子や女子が執拗に凜にかまって、中々高校で2人の時間が取れないからだ。

 一緒に帰ることも出来ず、登校は一緒にするものの、高校が近くなれば他の生徒たちが凜を攫って行ってしまう。

 そんな中、学校祭の日。

 その日の朝、凜は学校祭の準備で久人より早めに家を出た。久人も合わせようと一時は思ったが、気が乗らなかった。

 正直な気持ちのところ、今日は学校を休みたかったが、クラスの出し物で自分の役割があるので、仕方なく重い足を動かして登校する。

 学校では生徒たちが慌ただしく、校内を駆け回っている。

 その生徒の中には凜の姿もあった。


「あ、おはよう、久人くん」


 こちらに気付いた凜がトテトテと駆け寄ってくる。

 毎日会っているはずの彼女が今は特別可愛く見える。これも今までのストレスの影響なのだろうか。


「おはよう、凜」


 もっとゆっくり話したかったが、周りにいた生徒たちがまたもや凜を攫って行った。

 久人は周りの生徒たちに怒りを覚えるよりは、もはやあきらめの方が大きかった。

 やはり、自分と凜では釣り合わないのだろうか。

 そんなことを思いながら、久人は連れていかれる凜を見送っていた。

 当の本人の凜は、周りの生徒たちに笑顔で振る舞ってはいるが、久人とまともに会話できないことから、久人と同じくストレスが溜まっていた...


 ※


 結局、あれから、一回も凜と話すことなく、祭りが進んでいった。

 出店の時間も終わり、今は体育館で生徒会によるイベントが行われている。

 俺はあまり参加したいとは思わなかったが、せっかく最後の学校祭なので、椅子に座りながらイベントを見学している。

 今ステージでは、”ライバル指名対決”というゲームが行われていた。これは、参加する生徒が、誰かほかの生徒を指名してその人と対決するというゲーム。

 ゲームの内容はくじ引きで決める。

 今もステージでは次々と対決が行われていっている。腕相撲や、腹筋、腕立てなどが行われていた。


「ほとんどが力関係のゲームばかりなんだが・・・」


 俺がボソッとそう呟かざるを得ないくらい、偏ったジャンルのゲームばかりだった。

 そんな中、次の参加者がステージに上がる。


「どーもーよろしくー」


 その人物は俺も知っている人物だった。

 そう、優理だ。


「なんであいつが・・・!?」


 俺が驚きを隠せない間も、司会者が進行をしていく。そして、優理がライバルを指名する時が来る。

 すると、優理は迷わずマイクにその者の名を叫ぶ。


「久人ーーーーー!!!」


 キイイイイィィィィン・・・・


 耳が痛い。

 しかし、そんな中でも優理はまっすぐ、こちらを向いて指をさしている。

 ていうか、本気かよ・・・目立ちたくないのに。

 目立つのが苦手だから。

 しかし、すぐに両脇に生徒会の人たちが来て、半ば強制にステージに連れていかれる。凜とのこともあるので、俺がステージに上がった瞬間に歓喜とブーイングの両方が鳴り響く。


「おい、優理、どういうことだよ」


「どうもこうも、こういうことだけど?」


 小声で俺は優理に話しかけるが、返ってきたのは、とても楽しそうな声色の返事だった。


(こいつ、楽しんでやがる・・・)


 戦う種目を決めるために生徒会の人がくじを引く。

 そして、種目は・・・知恵の輪速解き対決に決まった。


「なんじゃ、そりゃ・・・」


 なぜか急に力ではなく、頭の回転を競う種目になる。というか、半分くらい運だが。

 その後、司会の人に促されるまま、椅子に座らされ目の前の机に知恵の輪を置かれる。


「クロエ・・・勝ってみせるから・・・」


 横にいる優理から、そんな独り言が聞こえてくる。


(なるほど、クロエとの約束か・・・。 てか、だったらなにも俺じゃなくてもいいだろうに)


 そんなことを思いながらも、スタートのカウントダウンが始まる。

 そして、スタートと同時に、俺と優理は知恵の輪を手に取った。


 3分くらいたった頃、俺は司会の人にマイクを突き付けられて、インタビューを食らっていた。

 そう、対決は俺の勝ちだった。ほとんど偶然だが。もう一回やれと言われたら、おそらく出来ないだろう。なんか出来た、という感じで知恵の輪が外れたのだ。

 観客の方からは、ブーイングなどが起こっている。ちなみに、優理はまだ知恵の輪を解けずにいる。

 そんな中、俺はインタビューに答えるのに必死だった。


「知恵の輪は得意なんですか?」


「いえ、別に・・・」


「勝てて、嬉しいですか?」


「まぁ、そうですね」


「では、最後に、水原さんとの噂は本当なんですか?」


 なぜか、インタビューに混ざって変なことを聞いてきた。この質問に俺は、


「そのことについては、ノーコメントで・・・」


 何も答えることが出来なかった。

 その瞬間、体育館はブーイングの嵐に包まれた。

 優理はまだ知恵の輪と格闘を続けていた...


 ※


 そんなこんなでイベントが進み、ついに全校生徒の男子が待ちわびたミスコンが始まった。

 司会の開催の挨拶とともに、体育館が歓声に包まれる。

 俺はうるさいとしか思わないが。

 投票は前日に行い済みで、今日はそれの結果発表という感じだ。

 ちなみに俺は誰にも投票しなかった。なぜか凜に投票するというのも気が乗らなかったのだ。

 正直言って、結果も分かっているようなものだった。

 現に今から、一位の発表が行われる。3位、2位の人とステージに上がっているが、そこには凜の姿はなかった。

 そして、太鼓の音が鳴り響き、司会が大きな声で一位の人の名前を言う。

 その名は、水原凜だった。

 開催の宣言の時よりも一回り大きな歓声に包まれる。

 そして、ステージ上に凜の姿が現れる。その凜に司会が色々と話を聞いていく。


「2連覇おめでとうございます!」


「ありがとうございます!」


「どうですか? 一位になった感想は?」


「信じられないという感じですね」


 なんて言う風に、話が進んでいく。しかし、そんな中、ステージの上に一人の男子生徒が乱入した。


「水原さん、君に言いたいことがあるんだ!!」


 その男子は司会からマイクを受け取って、そんなことを言う。

 その男子のことは俺も知っていた。名前までは覚えていないが、家がお金持ちで、顔もかっこよく、スポーツ万能、成績優秀というまさに玉の輿だ。

 よく生徒の間で噂になっているので、否が応でも耳に入ってくる人物だ。

 そんな有名人の乱入というハプニングで、体育館にいる生徒たちは興奮を隠せない。


(急にステージに乱入するなんて、俺には出来ないことだな)


 そんなことを思いながら、俺は凜がどのような反応するのかを黙って見ていた。


「な、なんでしょうか?」


 凜も驚きを隠せずに、動揺した口調で問う。


「僕は君のことが好きだ!!」


 その問いに男子生徒は大胆にも告白で返す。

 もちろんのこと、その瞬間に体育館はざわつき始める。

 そして、その体育館にいる人全員が凜の返事に耳を傾けた。

 そんな中、俺はこの場に耐え切れなくなり、ゆっくりと椅子から立ち上がって、体育館から出ていこうとした。

 恋愛漫画や、ドラマならここで彼氏である人が叫びながら凜の手を引っ張ってどこかに連れていくのが鉄板だろう。

 でも、俺にはそんな勇気はない。明らかに俺よりも乱入した男子の方がスペックが上だし、あんな大胆に凜のことが好きと言えるのだから。

 俺が体育館の出入り口のとびらに手を掛けようとした瞬間、


 がしッ!!


「えっ?」


 俺の右手を誰かに握られた。

 その人物を確認する。

 すると、その人は、つい先ほどまでステージの上にいた凜だった。

 凜は左手で俺の手を握り、右手に持っているマイクに声を発する。


「ごめんなさい! あたし・・・」


「彼のことが、久人くんのことが好きだから!!」


 そう言うと、マイクを放り投げて、自由になった右手でとびらを開ける。そして、そのまま体育館から走りだした。

 体育館にいた優理は、そんな二人を微笑んで見送っていた。


 それから、俺は凜に屋上まで引っ張られてきた。

 お互い息は上がっていたが、どことなくスッキリした気持ちだった。


「凜・・・」


「ん?」


「ごめん・・・本当なら、俺が凜を引っ張ってくるべきなのに!」


 俺は顔を伏せながら、凜に謝罪をする。

 まただ。また・・・凜の足を引っ張ってしまった。

 周りの人に変な遠慮してしまって、あのインタビューのときも俺はハッキリと凜とは恋人だって言えなかった。

 すると、凜は俺の頬に手を触れてくる。

 そして、


「顔を上げて、お兄ちゃん・・・」


「あたしはもう、お兄ちゃんにたくさん手を引っ張ってもらったよ」


 凜は目を閉じながら、話し出す。


「あたしが痴漢に遭ったときだって、お兄ちゃんは肩を抱いて、頭を撫でてくれた。 あたしが迷子になったときだって、お兄ちゃんがあたしをあのキャンプファイアの灯のところに連れてきてくれた。 他にも、あたしは数えきれないくらい、お兄ちゃんに引っ張ってもらってきたんだよ・・・」


「凜・・・」


「だから、今度はあたしがお兄ちゃんを引っ張る。 言ったでしょ、あたしはお兄ちゃんを守る盾になるって」


 俺は自然と凜を抱きしめていた。

 凜もまた、俺に身を預けていた。

 少し経ってから、俺たちは一度体を離す。しかし、もう一度どちらからともなく、顔を近づけていき、


「凜、ありがとう・・・」


「ふふ、どういたしまして」


 屋上に秋の少し肌寒い風が吹く中、俺たちは初めてのキスをした...

更新遅れて、申し訳ありませんでした!

これからは、通常の更新頻度に戻したいと思います。

どうか、これからも応援よろしくお願いします!

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