第12話 義妹と混浴してしまった件
体が苦しい。というか重い。
久人はソファーの上で目覚めて、体の重さの原因を探ろうと目線を体の方に向ける。
するとそこには、凜が久人の体に抱き付いて寝ていた。
「うわああぁぁぁ!!??」
久人は誰も聞いたことのないくらいの絶叫を上げる。一気に覚醒した。
凜の下から脱出する。
「ふみゅ・・お兄ちゃん、どうしたの?」
その絶叫の原因である凜は目を半開きにしながらこちらを見つめてくる。
「どうしたのじゃない!」
「ふぇ・・・?」
「なんでここにいるんだよ凜!」
久人は慌てながら、凜に質問する。
「だってぇ、いつの間にかお兄ちゃんいなくなってるんだもん。 そしたら、ここで眠っているのを見つけたってわけ」
(なんだよ凜、昨日は寒いから俺のベッドに入ってきたんだろ? 掛布団がないリビングに来るなんて、どういうことなんだよ!?)
久人は完全にパニックに陥っていた。
「てか、今何時だ?」
久人は少し落ち着こうと思い時間を確認すると、
「え!? 7時40分・・・?」
さらに慌てることになった。
「まずい、早くいかなきゃ電車に間に合わない!」
「ふあぁぁーー・・・」
まだ意識が朦朧としてるのか凜は、大きなあくびをしながら体を伸ばしている。
「凜起きて! 早く学校に行く準備をして!」
そんな凜の体を久人は揺らしながら急かす。
久人も急いで、制服に着替える。
二人は急いで家を飛び出して高校に向かった。
※
久人たちはぎりぎり間に合い、遅刻せずに済んだ。
長い終業式も最後の校長先生の話だけである。
おそらくほとんどの生徒は聞いていないだろう。夏休み中の心得なんて、始業式が始まるころには皆忘れてることだろう。
(凜のやつ、一体どうしたんだ?)
もう何が本当の凜のキャラなのか久人にはまったく分からなくなっていた。
そんなことを考えていると、校長先生の話も終わり、終業式も終わっていた。
その場で解散となり、久人は一度教室に戻り鞄を取る。その後に校門を出て、自宅へと向かう。
「ひーさーと」
「なに? 優理?」
後ろから呼ばれた声に久人は振り向かずに答える。
「これから、暇?」
「まぁ、そうだな」
「ちょっと買い物に付き合ってよ」
「ああ、良いよ」
久人は久しぶりに優理と遊ぼうと思い、快く優理の買い物に同行することにした。
--久人と優理は買い物を済ませた後、少し話そうということで、近くの公園のベンチに座っていた。
「いやー、ありがとね、久人、買い物に付き合ってもらっちゃって」
「いや、気にしないで」
この頃疲れることばかりだった久人にとって、良い息抜きになった時間だった。
「なんか、疲れてるね?」
それを感じ取ったのか、優理は久人の顔を覗きながら聞いてくる。
「まぁなー、でもまぁ、なんとかなるでしょ」
「無理だけはしないようにな」
「わーってるよ」
久人は笑いながら、優理に言う。
「あ、ごめん久人! 俺これから、クロエと約束あるから」
優理はベンチから立ち上がりながら言う。
「ああ、そうなの?」
ちなみにクロエとは優理の彼女の名前。
「じゃあ、また。 今度はゆっくりと遊ぼうぜ」
久人もベンチから立ち上がる。
「おう、じゃあね、久人!」
優理は手を振りながら公園から出ていく。
久人もそれを見送ると、同じく公園から出ていった。
久人はその後、ついでに食材の調達をしたために、いつの間にか5時を過ぎていた。
「ただいまっと」
久人は自宅のドアを開けながら玄関に入る。
すると、
「お兄ちゃん!!」
「え?」
そこには、なぜか凜が仁王立ちしていた。
「今までどこにいたの!?」
「どこって、ちょっと買い物に・・・」
確かに凜に連絡はしてなかったが、今までもこんな時間に帰宅したことはあったし、ここまで怒られるとは心外だ。
というか久人は凜の連絡先を知らない。
「お腹、そんなに空いてたの?」
「ちがうわよ!」
久人の疑問を凜が即座に否定する。
そして、久人が靴を脱いで、玄関に上がった瞬間凜が久人に抱き付いた。
「ちょっ!? え!? なに!?」
「さみしかったんだよ、お兄ちゃん・・・」
困惑する久人に凜は上目遣いで言ってくる。
「え・・・と・・ご、ごめん・・」
「と、とりあえず、夕飯作るから!」
凜の体の感触に耐えられなくなった久人は、少し無理やりに凜を引き剥がしてキッチンに向かった。
「おい、凜・・・」
「なあに? お兄ちゃん」
今久人は夕飯を作り終えて、二人で食事を開始しているのだが、久人は昨日までの夕飯と明らかな変化に戸惑っていた。
「なんで、隣なの?」
いつもは対面で食事をしていたのに対し、今日はなぜか隣り合って食事している。
そのせいで、緊張して食べ物がのどを通らない。
「んー、べっつにー、ふふ・・」
凜はと言えばにこにこと笑顔を浮かべながら、箸を進めている。
「ねぇねぇ、お兄ちゃん」
「なに・・?」
「はい、あーん・・・」
「!?」
凜がから揚げを久人の口もとに運んでくる。
久人はそれを受け取る勇気はなく、
「ご、ごちそうさま!!」
席を立って、自分の食器を持ちキッチンに逃げ込んだ。
後ろから、自分の名前を義妹に呼ばれていたが振り返るわけにはいかなかった。今久人の顔はとても紅潮していたからだ。
それから、久人は食器を洗い終えて、気分を変えようと凜より先に風呂に入ることにした。
「なんなんだ、凜のやつ」
「明らかにおかしいだろ」
「なにかあったのか?」
頭のなかで疑問に思っていることが、自然と口から出てくる。
そうこうしているうちに、脱衣所のほうから声が聞こえてきた。
「お兄ちゃん、入ってる?」
「!! あ、ああ、なにか用、凜?」
久人はなるべく冷静に答える。
「あたし、9時から見たいテレビがあるんだけどさ」
「う、うん」
テレビはあまり見ないので、チャンネル権なら譲るが、そう言おうとした刹那。
「それまでにお風呂入っておきたいから・・一緒していい?」
ザバン!!
凜からの言葉のトマホークを受けた久人は思い切り顔を湯船に突っ伏した。
「なに言ってるんだよ、凜!? おまえ、自分の言ってる意味が分かってるのか?」
湯船から顔を出しながら、そのトマホークの真意を問う。
「そんなに驚くなんて大げさね、兄妹なんだから一緒にお風呂に入るくらい普通じゃない」
(いや、普通この年齢になったら、兄妹でも入んねぇよ!!)
「じゃ、お邪魔しまーす」
「ちょっ!!」
久人は断ろうとしたが、それよりも先に凜が浴室の扉を開けて入ってくる。
バスタオルを体に巻いているが、それでも十分に凜の体のラインがクッキリ見えて、久人は目を思い切り逸らす。
「じゃあ、俺はもう上がるから、ごゆっくり!!」
久人はそのまま湯船を上がり、浴室から出ようとしたが、
「えー、まだ温まってないじゃん、もう少しゆっくり・・・していきなよ・・・」
「うっ!!」
耳元で凜が囁く。それと同時に小さな掌が久人の肩に触れて、そのまま湯船の中に引き戻される。
「うあっ・・」
湯船のお湯の水かさが二人分上昇する。
高校生二人が同じ湯船に入っているのだから、否が応でも肌と肌が触れ合う。
「どうしたの、お兄ちゃん?」
凜は黒髪を片手で掻き揚げながら聞いてくる。
青年はそんな質問には答えてる余裕はなかった。
久人も健全な男子高校生。同級生の女子の半裸姿を直視できるはずはない。
「く、じゃあ、俺はもう十分温まったから上がるね!」
「え!? お兄ちゃん、待ってよ!」
久人は呼び止める凜の声を無視して浴室を飛び出た。
そしてそのまま自分の部屋に逃げ込む。
「はぁっ!! な、なんのつもりだよ、凜のやつ!」
心臓が止まるかと思うぐらい緊張した。何が起こったのかまだ久人には理解できていなかった。
とりあえず、落ち着きを取り戻して呼吸を整えた。
「はぁ、もう・・・寝よ・・・」
今ある緊張を消すかのように久人は自分のベッドに倒れ込み、そのまま睡眠についた...




