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第21話




 次の日の朝。

 身支度を整えていると、扉がこんこんとノックされる。

 この時間に誰だろうか? 

 そう思っていると、微精霊たちが私の方に乗ってきた。


『外にいるのはラツィとアレアだよ!』

「そっか。ありがとね」


 冒険者時代に女性の一人旅は危険と聞いてから、微精霊たちが教えてくれるようになっていた。

 微精霊たちに返事した私はそれから、扉を開ける。

 廊下には、微精霊たちが言ったように、二人の姿があった。


「どうしたの? ていうか、部屋知ってたの?」

「はい。昨日、夕食も誘いに来たんですけど……反応がなかったので」


 昨日はしばらくティルガをモフモフした後、気づいたら眠ってしまっていた。

 旅の疲労などが地味にあったのかもしれない。

 夜遅くに目を覚まし、食堂で残っていたものを頂いて夕食を済ましていた。


「昨日は寝ちゃってたと思う」

「そうでしたか。朝ごはんの時間ですし、一緒に食べようかなと思ったんです。大丈夫ですか?」


 アレアが柔らかな口調でそう言ってきた。

 ラツィは眠たそうに目を擦っていて、意識はどこか遠くにあるようだった。

 まだ頭は眠っているのかもしれない。


「うん。大丈夫。着替えたらすぐ向かう」

「分かりました。先に席確保しておきますね」

「ありがと」


 この宿にはたくさんの人がいるし、席を確保しておくのは大事だろう。

 二人が廊下を歩いていく背中を見てから、私は部屋へと戻った。


「ティルガ、私は先にご飯食べてくる。どうする?」


 部屋で着替えながらティルガに問いかけると、ティルガは丸まったまま目だけをこちらに向けてきた。


「……我はもうしばらく寝ていようと思う」

「そっか。それじゃあまたあとで」

「ああ」


 一つあくびをしてから、ティルガは再び目を閉じた。

 身支度を終えた私は、それから部屋を出た。


 食堂へと降りると、男女多くの人たちで溢れていた。

 この宿にはリーナメールの人たちしかいないため、見覚えのある顔はいくつもあった。

 さすがに名前までは分からないけれど。


 きょろきょろと周囲へ視線を向けていると、私にもいくつかの視線が向けられているのが分かった。

 やたらと注目を集めている。


 先ほど寝癖などの容姿に関するものは確認済み。

 だから、この注目はそれ以外の部分だと思う。

 またガルスが何かしたの?


 疑問が氷解する前に、手を振るアレアの目が留まった。


「ルクスさんっ、こっちでーす!」


 彼女に返すように手を上げると、アレアはにこりと微笑んでから席に座った。

 そちらに向かい、私も座る。

 四人用の席だ。

 三人用の席、というものは中々ないため、一人分余ってしまうがそこを確保してくれたんだと思う。


 アレアの隣にはラツィが座っていたが、彼女は船をこいでいる。やはり朝は苦手なようだ。

 そんなラツィの面倒を見るために、アレアが隣に座っているんだろう。

 倒れそうになったところで、アレアがラツィの肩を掴んで押さえている。

 テーブルを見ると、すでに料理が配膳されている。


 白米に、サラダ、それと何かの焼かれた肉だ。恐らく、魔物のものだと思う。

 白米はお代わりが自由にできるようだ。ルエコムンドでは、米の栽培が適している魔力土壌があると聞いていたから白米が主食で使われているそうだ。


 逆にリーナメールではパンが主だったため、少し新鮮だ。

 輸入もされているから白米もあるけど、どちらかといえば高級品の扱いだったし。家が裕福でなければ滅多には食べられないと思う。


「ありがと、アレア。食事準備してくれたんだ」

「はい。ラツィに席を任せて、まあ、寝ちゃっていましたけど……ほら、ラツィ。ルクスも来たし、そろそろご飯食べましょう」


 肩を掴んで揺らすと、ラツィははっとした様子で目を開いた。

 それでもまだ眠たそうに目を擦っている。


「……も、もうそんな時間なのね? うん、おはよー」


 ラツィは間延びした声とともに、そう言った。


「ラツィ、あそこにこの国の王子様がいる」

「えっ、どこ!?」


 私がそういうと、ラツィは目を見開き周囲をぎょろりとみる。

 もちろん嘘である。

 でも、目覚ましにはちょうど良かったようで、ラツィは未だに目をひん剥いて探している。


「どこよルクス!?」

「もういなくなったみたい」

「ええ!? ていうか、本当にいたの?」

「いたと思う。少なくとも私の想像では」

「想像じゃない! 騙したわね!」

「そんなことない。目覚めた?」

「やっぱり嘘じゃない! もう! 朝食、食べるわよ!」


 ラツィがぷんすか声を荒らげ、食事を始めた。

 私たちも食事を始める。

 白米と味つけされた肉が良くあう。

 肉についたタレを白米につけながら食べると、二倍美味しい気がする。

 そんな風に食事を楽しんでいると、アレアの視線がこちらを向いた。


「そういえば、昨日は凄かったみたいですね」

「昨日って、回復魔法のこと?」

「はい。聖女様でも癒せなかった傷を癒したって、それはもうみんなの話題になっていたんですよ?」

「……もしかして、それでこんなに注目されてるの?」

「だと、思います」


 アレアがふふっと微笑を浮かべる。

 ……この視線の意味がようやく理解できてしまった。

 ごめんガルス。ガルスが悪いわけじゃなかったみたい。

 疑ってしまったことを謝罪してから、でもルーエンを連れてきたのはガルスだし、ガルスも悪いのでは? と思うことにして、謝罪は取り消した。


 と、近くにいたラツィが鼻息荒く口を開いた。

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