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第14話


 兵士の声に合わせ、私たちはすぐに二手に別れる。

 この街についてからの動きについては、道中で散々聞かされていたため、迷いのある者はいない。

 私が回復班の方へと向かうと、そこにはラツィの姿もあった。

 そういえば、ラツィも回復魔法が使えるんだっけ。


「ルクス、一緒ね」

「うん」

「アレアは、回復魔法が使えないからポーション製作の方よ」


 ちらと視線を向けると、列の後ろの方にアレアがいるのが分かった。

 私はラツィと並び、回復班の後を追うように歩いていく。


 私たちは門から出て、隣接した施設へと向かう。 

 救護所の旗が建てられているそこは、元は空き地なんだと思う。

 特に建物はなく、広大な土地に敷物がしかれている。


 中にいる人たちは、せわしなく動き、傷の手当てを行っていた。

 雨をしのげるように簡易的な屋根がつけられ、怪我人たちが雑魚寝の状態で寝かされていた。


 あちこちで痛みによるうめき声が響いている。

 傷の具合は様々だ。傷が深いものから浅いものまで……一応、傷の状態などで分けられているようだ。


 ただ、素人目ではあるけど、今すぐ命に関係するような重傷者はいないように見える。

 

「ここは応急手当の場として使っているんです。重傷者はまた別の場所にいますね」


 誰かが質問したのだろう。

 私たちを案内していた兵士がそう言っていたのが聞こえた。


 怪我人はたくさんいるけど、それと同じくらい気になっている人たちもいる。

 それは、治療している人たちだ。


 今もあちこちで治療が行われているのだが、皆必死の形相で治療を行っている。

 魔力が欠乏しているのか、顔色の悪い人たちも多い。

 ……かなりギリギリの状況であることは間違いない。

 案内をしていた兵士がくるりと振り返り、それから大きな声を張りあげた。

 

「それでは、みなさん! すぐに治療を開始してください!」


 この状況だ。

 誰が誰を担当して……などと決めている時間がもったいない。

 とりあえず、治療を待っている人のもとに行けば問題ないと思う。

 そう思って私が歩きだそうとしたとき、周りの人たちが固まっていることに気付いた。


 見れば、皆の表情が青ざめたものとなっている。

 ……もしかしたら、想像以上に痛々しい光景だったために、驚いてしまっているのかもしれない。

 この回復班は特に若い人が多くいたため、それも無理はない。


 一瞬足を止めた私だったけど、すぐに動いた。

 私がみんなの見本になる、とまでは言わないけど、誰かが動けばそれに続く人もいるはずだ。

 私の後に、ラツィも動いてくれた。それから、ぞろぞろと動き出していく。

 いずれは、みんなも自分の仕事に専念するだろう。

 今は、目の前の人だ。

 

 私は片腕を包帯で巻いている女性の元へと向かう。

 応急処置として止血はされているけど、あくまでそれだけだ。


「怪我をしているのはその右腕だけ?」

「うん……あはは、ドジっちゃってざっくりやられちゃったんだよね」


 笑顔とともにそう言った彼女だけど、その笑顔が強がりであるのは明白だ。

 私はすぐに治療を開始するため、近くにいた微精霊たちに視線を向ける。


『この人への回復魔法は私に任せてー!』


 微精霊が元気良く私の周囲を飛び回る。

 私が魔力を与え、微精霊が魔法へと変換する。そして、私の元へと魔法となって戻ってくる。

 その際に微精霊は魔法を使った代金とばかりに私から少しの魔力を食事として食べる。

 私の体内から多少の魔力が減ったけど、私の魔力は多いのでさして問題にはならない。

 私は目の前の女性の腕へと、魔法を放った。

 柔らかな光が彼女の腕を包んでいく。そして、光が治まったところで、女性は驚いたように腕を見た。


「い、一瞬で治療したの?」

「もう動きそう?」

「う、うん……っ! す、凄いねキミ! こんな簡単に治療しちゃうなんて!」

「でも、まだ内部にダメージは残っているかもしれない。ポーションを飲んで安静にしてね」


 私はそう言ったけど、自由に動かせる腕が嬉しいようで女性はしきりに腕を動かしていた。

 ……とりあえず、次の治療をしないと。

 怪我人はまだまだいるからね。

 次の兵士の元へと向かうと、今度は別の微精霊が私に声をかけてきた。


『こっちの人の治療は僕に任せてね!』


 こくんと頷いて返しておく。

 回復魔法は、相手との相性がある。


 そのため、誰にでも同じように回復魔法が作用するわけではない。

 私の場合、たくさんの微精霊がいるから問題ないけど、多くの場合、治療しやすい相手、しづらい相手というのがいる。


「お、おお! ありがとう!」

「安静にはしててね」


 すぐに次の治療も終わったので、その次へと向かう。

 治療を終えたら、次の治療者へと向かう。

 ……酷い。手首から先がない人もいる。


「……なあ、精霊術師さん。オレの腕は治せるか?」

「……さすがに、欠損までは治療できない」

「……そう、か。……はぁ、これで、オレの騎士としての人生は終わり、か」


 悲しそうに呟く彼に、私は寂しい気持ちになる。

 欠損までも治せれば……そう思わずにはいられなかった。



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