第721話「結・国連ライデン条約と領域税」
内田金蔵は財政について、次の一手を考えていた。
税収で経済をグルグル回す案に天上院姫は賛成した、少額なら良いと。だが経済や商売だけでは保証できないものがある、それが治安だ。まず治安が悪ければ安全な商売は成り立たない。
そこで次の一手としての対応策は、少なくとも第1の街ライデンは国連の管理下に置くというものだ。
これだけ問題が複雑化しているので、天上院姫というゲームマスター個人の手の内というのも危険だし。何より冒険者初心者が集まる第1の街なのに安全が確保されていないのも問題だった。
冒険を好き好んでするのは良い、だが第1の街ぐらいは、国連と条約を結んで、もし攻め込まれたら守って下さい。ぐらいの条約・契約は結んでも良いと考えたからだ。
それを情報統合思念体でもあるミュウに言った。
星明幸=ミュウ=天上院姫の内の1体だ、ミュウの意思は姫の意思でもある。
ラスボスダンジョン第100層計画で呼び出された、ハイファンタジー世界観の創造神だ、面構えが違う。
内田金蔵はミュウと、内容を熟知しながら話し合う。
「というわけで、これだけ冒険が進んだ今となっては、第1の街の安全保障ぐらい国連と確保しても良いのではないか? という意見だ」
「……で、協力ではなく契約書にサインして条約を結べと?」
ミュウも流石にこの案件には同意したくなる、現実世界への米や物価の上昇、人々への身体的影響、大結婚問題、桃花先生の障害者認定……。これらは望んで起こった事案ではないからだ、間接的に起こり、間接的に被害が起こった。
つまり直接的に被害がでているし、個人で解決しようとうのがまず無理だった。
例え大反響だったとしてもコントロール出来ていない。冒険者初心者にも優しくない。不可逆性の高いリアルタイム案件だった、とても優しいとはいい難い。
日本銀行副総裁の内田は現実的視点から言う。例えここがファンタジー世界であろうとも。
「BIG4やギルドの自由を規制するものではない。まず第1の街だけの安全確保、ここに攻撃した敵対勢力は国連が反撃する。そういう条約だ、これがないとまずこの街の経済が安全に回らない。プレイヤーとしてもNPCやAIとしても悪くない案件だろ?」
「ふむ、今までの旅から言っても、第1の街は結局自然と戻って来る場所だ、そこの安全が現実世界としても保証されるのは願ってもない案件だ。だが上手い話過ぎるな……条件は何だ?」
「特にミュウさんには害は無いはずだ、ただ。エレメンタルワールドという広大な土地の内、第1の街だけはちょっと権力が落ち、コントロール権が自分1人だけのものじゃなくなる、そう思ってくれればいい」
「ふむ、なるほど、自覚してなかったが〈独占権〉が無くなるわけか。まあ今まで全部所有してたようなもんだし、第1の街の治安が良くなるのは街の難易度的にも低くしたいワシとしても望ましい。快く受け入れよう、その中で自由に経済を回してくれ」
「では、この書類。〈国連ライデン条約〉にサインを……」
「えっとー、これは3人分の名前を書けばいいのか?」
「手探りでわからないのであればまずは1名で構いません、まずは小さく回すのが私の基本方針ですから、軌道に乗ってから3名合意のサインで構いません」
「ふむ、じゃいっか」
と言って、ミュウは書類にサインした。
《ミュウは、国連ライデン条約の契約書にサインしました》
「して、商業ギルド施設内での領域税についてですが……」
「わかってる、そっちがお前の本題だったな」
内田に任せているのは貿易だ、そっちに力を入れたいのは解る。
「第1の大陸アシアー大陸は難易度小、米と塩に領域税5%で75F。第2の大陸リュビアー大陸は難易度中、金とコーヒーに領域税10%で150F。第3の大陸エウローパ大陸は難易度大、ガソリンとプラチナやPC機材で使われるレアアースに領域税15%の225F。1日終了後の午前0時に自動引落をしたいというものです」
内田は治安が上手く行った上での貿易、領域税の話を早口で喋った。
規模感の指標。100円=200F。
ゲームプレイ時給が1ギルドにつき1500F、プレイヤー個人ではなくギルド単位。
1日終了後に各ギルド8%の税収。
が、今現在の状況。
1ギルドが4時間プレイしたとしても6000Fが限界値なのでこれより商品を高額にしても意味はない。てことは、他の商品を買ったとしても、4分の1、多くても米や塩からガソリンからレアアースを買う事が想定され。
1日1500F以上買う事は望ましくないと想定される。なので価格の全体量は平均1500Fあたりが望ましい。
そこから領域税を5%、10%、15%づつで大陸の難易度ごとにわける。
「特に他の商品に税金をかけるつもりはありませんが、これら6品目については事情が事情なので税金をかけたいと思います」
「うん、許可する」
ミュウは6品目に領域税をかける事を許可した。
「ありがとうございます、これで運用がすこしは捗ります」
税金としてお金を徴収したいというより、ほぼ運営としての維持費だった。
今まで無償でやっていたので〈ただの良い人止まり〉だったのである。
ほとんど雀の涙、無料が有料に変わったという認識でいいだろう。
ミュウが内田に握手を交わす。
「じゃあこれからもよろしく」
「はい、よろしくお願いします」




