第689話「結・人類舐めんな!」★
現実世界、西暦2037年11月9日、16時15分。
今現在歴2037年、第1の街ライデン、ギルド本部前。
ギルドの受付嬢に、咲&姫視点の時系列進行表を渡す。
「これが今回の進行表です、ギルド本部と図書館、王宮・王政などへの保存、情報共有よろしくお願いします~」
「かしこまりました~」
やることはやったと、ギルド本部から出てくる2人。
「このイベント面白いけどまとめるの大変だな」
「だね、でも小まめにレポートを書けば苦じゃないかも、あとの自分の為にちゃんと書いてギルド本部にとか図書館に報告しておこう」
「じゃな、面白いだけに尚更な……!」
◇
全体掲示板。
ジャンプ、脳筋漢ズ、最未来歴1年、第1の街ライデン。
【おい! いつ! どこで! 何があった!? バカでかい心氣が飛んできて、原住民の兵隊約10万人中9万5000人が気絶したぞ!? 5000人しか立ってられなかったぞ!?】
天上院姫、放課後クラブ、今現在歴2037年、第1の街ライデン。
【あー!? それは……最古来歴2000年で四獣王ゴッドジーラとジゲンドンが全王型の心氣の咆哮をぶつけ合って、たぶんその衝撃波で気絶したんじゃないかな?】
天上院姫、放課後クラブ、今現在歴2037年、第1の街ライデン。
【ゴッドジーラは地震0の洞窟、その場で凍結して活動停止、ジゲンドンは逃げました……。おそらく、1ヶ月で集めた急ごしらえの原住民10万人だったので、元から才能のある戦士しか残らなかったのかも……】
信条戦空、四重奏、今現在歴2025年、第1の街ライデン。
【ただの威嚇だけで凄い被害だな……】
天上院咲、放課後クラブ、今現在歴2037年、第1の街ライデン。
【あー! 戦空! 今度戦ってよ!? 私強くなったからさ!】
信条戦空、四重奏、今現在歴2025年、第1の街ライデン。
【……、イベントは面白いんだけど、何かノリ気しねーんだ。それこそ、もっと強くなってから相手してやるよ】
◇
その後。
今現在歴が現実的すぎて空想作品が相手にされず、ならいっそゲーマーに〈この世界の真実〉を説明した、姉妹にとってはただの遊び半分、そう、そのはずだった……。
とあるゲームセンターに天才ゲーマーの男、が居ると聞いて寄り道をする咲と姫。
そしておもむろに、自分達が歩いた道、年表を〈ただの天才NPC〉に見せる……。
「なるほど、そういう盤面でそういう状況でそういうイベントね……、ならこの世界の神様よ……こっちから良いアドバイスがある」
〈ただのNPC〉には妙案があるようだ。
「ん? なんじゃ?」
ただのNPCは不敵に笑い、神が人を試すのではなく、人が神を試す……。
「俺を、このゲーム盤の対戦相手にしろ」
「んん?」
姫は混乱する、今はボードゲームをやっているつもりは無かったからだ、何なら探検ごっこ遊びをしていた。
ただのNPCは続ける……。
「お前がいっつもルールを決めてるみたいだから、こっちからお前にルールを貸そう。何、そんな難しい事じゃない。このイベント中、お前は俺を特異点としろ、同じ目線の、同じ盤上の、同じ椅子に座らせろ。どうせこの時代がホームで、ここに帰って来るんだろ? このゲームイベント中、世界の中心点は、天上院咲じゃなく、天上院姫と俺だけだ!」
「……、へー。モブNPCのクセに偉そうな口叩くじゃん」
姫はいつものいたずらっ子のように、モブNPCに不敵に笑う。
「このゲーム盤の進行表を見た限り、俺という人類の寿命は100年にも満たない小さな存在だ、さしずめ、プレイヤー達には俺という存在はピクピクニンジンの一匹にしか観えていないだろう……」
モブNPCは持論を展開する。
「おー……当たってるかもしれない……」
咲はその発想力に驚く……。
「だから俺個人の力じゃ、この四獣王ジゲンドンに対して刃を突き立てるどころか、出会うことすら出来ないだろう……。だが、GMである姫が、プレイヤー達が、俺に対して意思とか文字とか絵空事を叩き込めば叩き込むほど、俺の存在の炎は大きくなり、魂と命の灯火は伝染し、受け継がれやすくなる。プレイヤーのお前らは、その炎を聖火リレーみたいに繋いでいけば良い、そうすれば、いつの日か、彼方、あるいは此方の時を経て……俺の意思はジゲンドンとか言う大ボスに届きうる……!」
姫とモブNPCは不敵な笑みを交わし、崩さない。
「へー……、面白い発想するなお前~~……まだ名前も無いモブなのに……」
「お前は空間という名の公園を作って、駒というルールもある程度決めて、少し駒を進めた程度だろう。なら対戦相手NPC、人類代表として、俺が神に命令する、次の駒の進め方は〈天文台を作れ〉だ!」
「……、なるほどね……それがお前の〈次の一手〉で、神やプレイヤーがそれを実現すれば何処まで行ってもこのゲームは成立するって事か……面白いなお前」
ボードゲームをする気がなかった姫にとっては、意外な挑戦者である。
「これならお前もラスボスとして君臨できるし、NPCの運命である俺もちゃんと役目を果たせる……これこそフェアだ……!」
自分がただのザコだと認識されている上でのこの提案は面白い。
「一応断っておくが場外乱闘でわしを攻撃するなよ? 今回の攻略討伐対象はあくまで四獣王ジゲンドンだ……」
「あぁ、わかってる……。お前ら2人はGMとかプレイヤーになって、いつも通り遊びに行けば良い。で、帰ってきた時に〈指示〉なり〈次の一手〉なり〈話し相手〉になるのは俺ってことにしてくれれば、このゲームは成立する……!」
「なるほどね、とりあえずお前というモブNPCを起点に意思という炎を燃やして、他のNPCにも伝承させろって意図は理解したぜ」
GM姫とて、バカやアホかもしれないが無知ではない、この〈理不尽な世界〉というゲームに真剣に挑もうとする挑戦者を、咲や戦空以外に、また一人見つけたというわけだ。
「せっかく出会ったたんだ、〈ただのモブ天才ゲーマーNPC〉じゃ締りが悪いから、創造神として名を与えよう、……そう……〈イレギュラー〉と……!」
「ふん、じゃあ俺と言う名の駒名はイレギュラーだ……! このイベント中は〈不変〉にしてもらうぜ……!」
「あぁ、当然だ、数字みたいに変わらない、でないと面白くないからな……!」
1足す1は2なように、何処の時代に行ってもイレギュラーはイレギュラーと言いたいのだろう、その〈不変〉の保証だった。
「咲、ちょっと野暮用が出来た、悪いが咲には観客席に座ってもらうぜ……!」
どうやら姫は、ここに長く居座るつもりみたいである……。咲は呆れながら隣を歩くと決めた妹として、見守る。
「はいはい、いつものでしょ? 解ったからちょっと駒動かしたらまた出かけるわよ?」
というわけで、伝統的様式美に従って……あの言葉から姫とイレギュラーは始めることにする。
「「さあ、ゲームを始めよう――!」」
と、お互いにゲーム開幕の宣言をした。
豆知識
名前◇イレギュラー
希少◇N
分類◇天才ゲーマーNPC_今現在歴2037年_天上院姫の対戦相手
解説◇GMである天上院姫が創造しただけの、ただのモブ天才NPCの原住民の男。今現在歴が現実的すぎて空想作品が相手にされず、ならいっそゲーマーに〈この世界の真実〉を説明した、姉妹にとってはただの遊び半分、そう、そのはずだった……。その面白発想から、GM姫はモブの〈彼〉に名を与えた、そう〈イレギュラー〉と……。




