第676話「転・落とし所」
神道社、ちなみにまだゲームにログインしてない。
「ん? なんじゃ? 今わしは〈幸運値〉について設定を練ってる所なんじゃが?」
天上院姫は、社長室でエレメンタルワールドの設定をPCの前で練っていた。
姫は体のズキズキを覚えながら、なんか違う気がする、という思いは拭えなかった。
そんな中、隣を歩くと決めている天上院咲は。何かわからないけど、何か手伝っていた。
「とりあえず、政治家のエスパーの落とし所の件は、こっちで片付けたから、姫お姉ちゃんはゲーム制作に集中していいよ?」
と、切り替えしたが……。
「いや、ネタを盗まれている以上、腹の虫が治まらないんだが……?」
割と本気で自分じゃ、どうしようも無い出来事について、怒っていた。
「その例の〈エスパー政治家〉は今まで好き勝手やってきたんだ、こっちの許可も取らずに、なのに責任も取らずに、政治家も辞職もせずに野放しじゃ、泣き寝入りじゃないか。……こっちは対策したけどさ……! だから、1人ぐらい落とし所として辞任しろって、今言おうと思って準備したのにそれをやめろと……?」
割と静かな怒りの炎が燃えていた。
「まあ、お姉ちゃんの言うこともごもっとも何だけどさ、たぶん、それ気にしてても作品は良くならないと思うよ? たぶん」
根拠はないが、体が、センスがそう言っていた。
「もっと読者目線を意識したら良いんじゃない? これは本当に読者が思いと思ってくれるのか……? とかさ」
原点に立ち代わり、政治家の顔色より一般読者の顔色を伺うように、咲はアドバイスした。
姫は怒りを沈め、徐々に落ち着きを取り戻す。
「読者ね~……、な~んか誘導されてる気がするが、それもそうなんだよなあ~」
で、基本的に知らない読者より自分の読者眼を信じたほうが良いので、自分を信じる。に大体落ち着く。
「この際、AIくんに感想を聞くのはどうかな?」
と、ちょっと的はずれな返答をする。
「一理あるが、アレ系は的ハズレな事を言うからなあ~、議事録まとめて、だったらまあ使えるけど。AIに責任感は無いし、適当なことつなぎ合わせて言うので、自分の作品眼を信じたほうがマシなんだよね……、実績も経験も実力も一応あるし」
成功例や成功体験があるからこそだろう、その練度をAIに頼らず積み立てたほうが良いという回答だった。
「ふむ、AIの感想は当てにならないか……」
「それ50人の意見を1個にまとめる、とやってること大差ないぞ? ちょっと速いだけで」
「じゃあ自分で作品書いて、第三の眼で作品を覗き見る感じ?」
「まあスピリチュアルに言うとそっちの方が安全、まあわかんない知識をAIに聞くのは良いが〈書いて〉は流石に違うだろ。品質は保証されていない以上、ロクな事にならないぞ?」
と、話を逸らされた所で現実に還る。我に返る。
「む~、つまり政治家の件は観てても毒だし、考えても無駄って認識で合ってる?」
「わかんないけど多分そうなんじゃないかと」
「じゃあ控えめに言ってクズじゃん……私よりクズじゃん……」
「そう言われてもなぁ~……、とりあえず、面白くないことだけは確実」
「何だかなあ~、じゃあ関わらないほうが良いじゃんアレ、アンチと一緒じゃん、アンチと、法律を守りますとか口だけで言ってる詐欺師とかと一緒」
「まー今までの言動から察するに、口だけ国会ってのは合ってるんだよなあ~……」
などと愚痴りつつ、確かにこの話題を広げても面白くないし、相手が改善するとか言いつつ「善処します」だけで終わるのも腹立たしい。仁義の欠片もない。
なので、考えても意味ない。アンチ対策と同様、ミュートやブロクが良いところの対策だと結論付けた。
で、天上院姫は話を元に戻す。
「で、落とし所がネタ帳の年月日と時刻を書いておく、ぐらいしか対策のしようがないって所だったね」
たぶん、自分より真面目に働いていない、国会議員が憎らしくて、腹が立って仕方がないのだろう。
法律的には、天上院姫のほうが働き過ぎなのだが、公務員という立場でふんぞり返って定時で帰ってる輩が羨ましいというか妬ましいというか、……その上、エスパーで自分のネタを横取りするんだからそりゃ怒るわ……。
天上院咲は、今泉善次郎総理と話を付けて、落とし所は付け終わったって事で、話を進めて欲しいとのこと。
「……、まーわしの知らん所で落とし所が付け終わったならそれで良いんだけどさ……、それで、ログインしてないし。例えゲームにログインしてたとしても何で痛みが発生してるの? 痛み設定は〈無痛〉のはずなんだけど何で?」
「さ、さー? あ、あははははは!」
誤魔化すのにも、もう限度が来ていた。
豆知識
名前◇幸運値について
希少◇R
タグ◇幸運値_クトゥルフ神話_ランダム要素
解説◇ゲームのステータス欄に表示される項目。まず観測されている現象として幸運値が高いと〈相手が観測し続けていても、自身は理解不能な勝ち方を複数連発する事象〉が確認されている。まともな数値指標がないのでエレメンタルワールドでの幸運値はクトゥルフ神話をベースにしている、よって、幸運値が0になると〈運の尽き〉状態になる。
ので、TRPGの幸運値の情報をオンラインネット内から吸収・情報処理している。
【情報吸収した元情報点】
・探索者がコントロールできないイベントで使うことができる能力値。
・探索者の外部の環境が問題となる場合にどうなるかを決めるために用いる。
・探索者が持っている幸運の値だけポイントを使うことで、判定の結果を失敗から成功に変えることができる。
・セッションが終わったあとに幸運を回復できる可能性がある。
【情報を元にエレメンタルワールドの幸運値のルールを情報変換した結果】
〈行動と意思の技能〉または〈念じた通りの現出〉の範囲外で幸運値が発生する。
前提として〈自身のコントロール外〉であること、そのコントロール範囲はプレイヤーによって異なる。
例えば、自分の手で何とかしたい格闘家タイプと。エスパーだけで何とかできる超能力者タイプなどで射程範囲が違う。
エレメンタルワールドでは、原則としてプレイヤーのステータスの数値は非表示で判らないようになっているが。
HPやMPのようにその幸運値の範囲内で消費と回復、増減する物と思って良い。
〈自身のコントロール外〉で何が起こるのかというと。戦闘ならスキルの命中率の%の都合で失敗に終わっても、幸運値によってダイスロールが発生し、その出目によって成功結果が変わる。
日常では、自身が寝てるだけでも周りの手助けによってSNSの世界トレンド1位に成るか成らないかの成功・失敗のダイスロール。などである。
〈センス技能〉相手も自身も司会者も知識的に理解不可能〈出来ない〉状態での幸運値ダイスロールの発生。
この幸運値ダイスロールは数値分消費してゆき、使いすぎると〈運の尽き〉状態になる。また、回復する時は大体寝る。




