第674話「起・結局何が正しかったかというと」
激しい時間の激流に流され終わり、穏やかな時間が天上院姉妹に襲いかかっていた。
EX第9章「正しい時間軸」西暦2037年10月7日
前回までのあらすじ。
何が起こっていたかと言うと、咲達はパラドックスな時間軸に翻弄されて、正しい時間軸を見失っていたらしい、という事だけはわかった。
そしてただしい時間軸が、だいたい原因は「変態うさぎが幻想入り紅」と「風の妖精リスク」で構成されているとわかった以上「少女は異世界ゲームで名を揚げる。」の時間軸もギリギリ作った、というのが今の現状だ。だからこうして時間が穏やかに過ぎているのである……。
たまに人が徒歩で歩いたり、車やバイクが通り過ぎたりする程度で終わっている。
つまり「何の話?」と散々心のなかでボヤいていたが、「小説」は関係なく「動画」の話だった。というオチだった。しかも他作者関係なく自分の作品限定のオチ、というおまけ付きである。
ここまで来ると、外の世界は清々しいほどに静寂を取り戻していた。
局地的に争いの種は、まあ人間な以上色々あるが、物語としてはやることやったし、戻るところまで戻ったと言った所だろう。
あとおまけで、ネットでお金の話をすると詐欺っぽくて、体が痛くなるので、何処行っても売れない作品しか作れない事が、まあまあ解った。
つまりノーリスクノーリターンでネットの中では遊べって事だろう。
FXもオークションもバーゲンも縁遠いものになった、のも付け加えておこう。
つまり、逆に言えば。
お金のことさえ気にしなければ安全に創作活動が出来るわけである。
そういう、もろもろの咲の物語とはおおよそ関係ない「場外乱闘」を経て、今の咲があり、生き様を形作っているのである。
ここまで話をこじらせたのも、桃花先生と戦空が動画内で「頑張った」からで、動画で頑張らなければこんな事にならなかった事になる。とはいっても、テクノロジーは止まらない、未来にしか進まない事を考えると、いつかは誰かが動画を作るし、時間は発生していたことを考えると、遅かれ速かれ起こっていた現象なのだろう。
などなど、色々複雑な心境を経て「今」がある。
結局咲は「物語」の話をしたかったのに、「時間」の話をしていたので、至極遺憾である。プンプンである、とばっちりも良いところだ。サプライズされる相手も間違っている。
そんな咲の実体験の第一声は「疲れた……」であった。
「あ~そ~ば~し~て~」
「まあ映画会社は仕事やってたわけだしな、エンジョイ勢にはキツすぎるよ」
咲と姫のコントにも元気がない、きっと相当今までの歪みが溜まって当たって来たのだろう。例えば、徒歩の人間を追っていたら、いつの間にか車に乗った鼠を追いかけていた、それはタイヤでゴムだった……とか、思考回路がわけわからなくなって自分を疑わしくなるレベルである。
「2025年の皆は今頃大丈夫かな……?」
「それを気にしたってしょうがない、わしらは未来に生きてるんだから、そのうち過去に成るが……」
未来人が過去の歴史を気にしたってしょうがない、もう起こった出来事なのだから。
今後の彼女らの課題といえば、「目標」や「締切」だろう。このコントロールも中々難しい……。
咲P1【そんな辛辣になるなよ、俺等が推してる咲はもっと元気だぜ】
咲P2【咲ちゃんは咲たんのままでいい、今の推しでいて】
咲P3【咲ちゃん虐待期入った?】
咲P4【鬱期何じゃね? 俺達で支えてあげないと……!】
咲がチャット欄を眺めていたら「え、誰この人達?」ってなった、いきなりチャット欄に飛び出してきたからだ。
咲P1【俺等は咲P、咲のプロデューサー、咲を金銭面で支えてゆくために集まった同士、つまり咲推し】
咲P2【咲ちゃんが知らないだけで、チャンネル登録者数400人ぐらいいるよ、生配信もちょくちょくやってる】
咲P3【切り抜き動画や、まとめ動画もあるよ】
「え、ちょっと待って知らない単語が何個も出てくる、私アイドルになった気ないよ? 普通のプレイヤーだよ? セミプロなだけで……」
咲はおもむろに、自分達のことを「咲が推しだ」と豪語する面々と出会った。
咲にとってはこれが初対面である、放課後クラブ親衛隊とはちょっと違う、あれはプレイヤーだった、こっちは純粋な〈視聴者〉であり、一般人オブ一般人だった。
「つまり何? ファンクラブみたいなやつ?」
咲P4【そうそう】
咲P5【いつも楽しませて貰ってます、ありがとう】
いつの間にか400人ほどファンが居ることに若干の戸惑いを覚える咲、こっちはただお姉ちゃんのゲームを楽しみたかっただけなのに〈何か居る〉程度の認識である。
そう言えば最近〈ゲーム配信〉なるものがあって〈信者〉とか〈プロデューサー〉と呼ばれている人種を知った。
何か、ゲームの中で交流とかも出来るし、してるし、大流行らしい。〈に◯さんじ〉とか〈ホ◯ライブ〉とかいう会社組織の何かだということは知っている。
で、放課後クラブ親衛隊とはちょっと強さの毛色が違うが、やたら強いらしい。プレイヤースキル的な意味で……。
「じゃあ、……正史世界線もなんか知らんうちに軌道に乗ったし、ファンと交流会と言う名のモンスターハンティングしに行きますか」
そうと決まれば次回は、咲と姫と、咲P1・2の4人で集まってクエストを受けることにした。
「えっと、今何かいい感じのクエスト無いかな~? なになに? 〈十二支モンスター干支獣の落とすアイテムを商人に渡せ! 中級〉……これでいっか」
咲達はクエストを受けて野に放たれる、初級の草原だ。
「じゃ、いきますか」
「のじゃー!」
「おー! お守りします!」
「任せてください、手助けは任せろ!」
いつもの姉妹2人のテンションとは違う2人が混ざってハントの開始である。




