第548話「今さら拠点作り」
西暦2037年7月1日。
咲と姫はEWO3のゲーム内で遊んでいた。
飛空艇ノア、家が一件丸々飛ぶ造形美は、何だかた落ちそうで、それでいて攻撃されたらすぐにぶっ壊れそうな、……そんな戦闘には向かない建造物……飛空艇になっていた。
「さてっと、普通の拠点型と移動拠点型で悩んだけど、私の性質上メッチャ動くから、飛空艇ノアを〈移動型拠点型〉に作り替えますか! ついでに屋台でも作ってさ」
「んお? 具体的に何を作るんじゃ?」
「具体的には飛空艇ノアを拡張して、NPCコロボックルでも雇って、〈鍛冶場〉〈工房〉〈錬金窯〉〈牧場〉〈畑〉〈調理場〉を設置する!」
「ほうほう、ついに生産に興味を持ったってことかー」
「だいぶコツも掴んだしね」
ワキャワキャと騒ぐ女子二人、そして生産系の話題となれば前回までの殺伐とした最果ての軍勢との戦闘が嘘のような和み空間が出来上がっていた。
「んじゃさらっと拡張はしてしまおう、今までの冒険の経験値を使えば拡張は容易じゃろうて」
「んじゃ場所の設置をするね! 移動型拠点だから東西南北だと無理があるから」
「位置指定は前後左右上下じゃろうな」
「前には始まり街『ライデン』と、中立の街『カルテットタウン』の〈ワープポータル〉、後ろには〈家〉、自分から見て右側1・2・3には〈牧場〉〈畑〉〈調理場〉、左側1・2・3には〈鍛冶場〉〈工房〉〈錬金窯〉かな?」
「移動型拠点なら家の中に設置したほうが良くないか? 外だと危ないし……」
「……それもそうか、なら安全性も考慮して地下1階に設置する?」
「それで良いと思う」
「でも地下1階もうあるよ? 使ってない道場だけど」
「じゃあ地下2階を作れば良いじゃない!」
「ゲームマスター権限で謎の空間があら不思議! 出来ちゃいました!」
それで良いのか運営二人。
これでこの飛空艇ノアは、地上1階・地上2階・地下1階・地下2階のアンバランスさで構成された家・飛空艇へカスタマイズされた。
「何ということでしょう! リフォームがあっという間に!」
「こういう時ってクエストとかで材料とかゴールドとか発生するのにな……世界観ガン無視じゃ」
「てゆーか私このゲームを長くプレイして遊んでるけどさ、……物語とか世界観とか全く無いよね? プレイヤーがガンガン開拓して行くゲームだよね? NPCは本当もうおまけ程度の立ち位置になってない?」
「咲が楽しければソレでいいのじゃ!」
「おい! 働け運営!」
「だってー……、マジガチシナリオ作ったらお前とケンカするじゃーん、だから使用上作れない、が正しい」
「それは困った……」
「咲がのめり込みすぎてるんだよなあ~NPCに……」
そこはまだ治ってないらしい。
咲と姫の話は続く……。
「んじゃ次は働いてくれるコロボックルさん集めか~」
「この場合、雇うという意味合いの方が正しいんじゃないか?」
「ん、お給料払うの?」
「コロボックルと言えど無償で働いてはくれないだろ、せめて三食分のご飯代ぐらいは出してあげなきゃ……ただのGでだけど……」
「なるほど、で、今私いくら持ってるの? ステータスオープン!」
もはや設定が広がり過ぎて、1ゲーム内の2アバター分のレベルしか把握していない……。魔法剣士Lv.101、学者Lv.8のままである。
確か称号で〈レベル詐欺〉なるものが付いて、実際の経験値をレベルに付与しないまま冒険を進めて行って、プレイヤーレベルと実際のレベルが釣り合ってない……なんて称号を得ていたはずだ。つまり今のレベルと差異がある。
《サキのステータスを表示します》
《魔法剣士のレベルが10上がります!》
《魔法剣士Lv.111》
《学者のレベルが30上がります!》
《学者Lv.38》
《所持金額は60万Gです!》
「うわー何にも買ってないからゴールドが鰻登りだ~~!」
「まーその金額を所持してるのなら、とりあえずコロボックル6人分は雇えるだろうな」
「どこでコロボックル雇えるの?」
「カルテットタウンの何処かに居るんじゃね?」
「おぉ、じゃあまずカルテットタウン内を散策してコロボックルの情報を聞き込み調査だ―!」
次の目的は決まった、コロボックルを6人見つけて、雇うというクエストだ。
そうと決まればワープホールの中へ入ってカルテットタウンまで飛んだ2人、辺りには初心者2割、中級者6割、上級者2割のプレイヤー・冒険者達とNPCでごった返していた。




