第328話「ヤエザキVSアリス」
4Cエリア上空。
「ミュージックスタート!」
ハイテンポな楽曲が流れ始める。不思議の国のアリスの曲。かっこロックバージョンが流れ始まる。それはまるで、ボス戦。しかも強制負けイベントのような雰囲気だった。
「桃花さんとリミッツちゃんの姉貴なら、遠慮はいらないよね! 本気で行くよ! 〈エボリューション・極黒〉! 全てのステータスがMAXになる!」
「なるほど、最強化ね。行くわよ上海、東京、ニューヨーク!」
アリスの人形の名前だろうか。何故か地球の有名都市の名前だった。上海は剣、東京は盾、ニューヨークは杖を持って向かってきた。
「せい!」
ヤエザキの剣の攻撃で、上海の剣砕け。東京の盾は砕け。ニューヨークの杖は砕けた。
そして、「これでトドメ!」と勢いのままアリスに一気にたたみ掛けるヤエザキ。
そして、アリスは倒された。
《アリスは倒されました》
「なんだ? あっけないわね……」
しっかりと、ゲームのチャット欄も明記された。
完全決着だ。しかし、金色の八咫烏の2人は笑っている。
「?」
と、そこに一本の運命の糸が現れた。
どこからともなく声が聞こえる。
『色々な回避行動が取れるけど、今回はコレにしましょうかしら』
「何!? この心に直接語りかけるような」
《アリスのアビリティ『運命操作』が行われます。因果律逆転の操作が行われました!》
ヤエザキのステータスログにはそのように流れてくる。やばい! まずいのが来る!?
『嘘も嘘、それはくるりと。裏返る!』
パチン――!
瞬間、ヤエザキは3体の人形に剣で串刺しにされている、奇妙な状態に陥った。
そしてアリスは、攻撃を仕掛けられてから。何もしていない。上空で突っ立ったまま。仁王立ちしている。
「説明しよう。ヤエザキちゃんが【3体の人形を倒した】事象を逆転させたのさ」
「かはッ! な……!?」
「それが、キミの運命さ。今回はね、そういう世界線に飛ばした」
つまり、3体の人形をまんまと倒してしまった。その確定事項を作り上げてしまったヤエザキが悪い。まんまと罠に引っかかったと言うわけだ。
HPは0になった。
そしてヤエザキは。最後に捨て台詞を言う。
「覚えてなさいアリス。……次は必ず勝つ!」
「面白い。やっぱ主人公はそうでなくっちゃね、じゃ次の対戦を心から楽しみにしてるよ」
こうして、ヤエザキはポリゴン片となって砕け散った。
あとには、3人と1人とドラゴン1匹が残った。
アリスが問う。
「なにかするの? ゲームマスター」
農振水サンが答える。
「いや、決闘の約束通り今回は引こう。だが、予告する。……次は遠慮無く勝たせてもらうぞ!」
ゲームマスターの宣戦布告が入った。
アリスは「ええ、ご自由に」と言うに留めて。全員はこの場を散会した。
◆
5Eエリア、ダブル王国。
ギルド本拠地、リスポーン広場。
「だー! もう訳わかんないウチに負けたー!」
ムキー! と、ヤエザキは吠える。その3分後、フェアリーマザードラゴンに乗って農林水サンがUターンしてきてくれた。
「どうだった? 初面会は?」
「どうもこうも意味不明だよ! 攻略方法が全く頭に浮かんでこない!」
天上院姉妹の談笑が始まる。そこにはこのクエストに参加する沢山の人から目を、耳を傾けられていた。
「おい観ろよ。最長文学少女ヤエザキだ……」
「ゲームマスターもいる……なんかもめてるぞ?」
外野がガイヤガイヤと騒いでいるウチにも、話は進んでゆく。
「てゆーか、アレでBランク5位!? どうみてもSランクの強者でしょ!? なんでアノ地位!?」
「ヤエザキと同じで、エンジョイプレイヤーなんじゃないかな? ほら、あと確定事項を作ってからで無いと何も出来ない所とか。攻撃条件が普通と違う」
「……、なるほど。てか冷静ねお姉ちゃん」
「まぁ、ゲームだしな。ポーカーでも熱くなったら負けじゃし?」
なるほど、そういう見方もあるのか。と思うヤエザキ。ゲームにはゲームなりの戦い方がある。と言うことだろう。
そうこうしているウチに。対策を考えているウチに全てのエリアが色で埋まった。ここからが知的境界線バトルの始まりである。
大型モニターにはクエスト中の全ステージの陣地の色と地名。右横には、公式掲示板で喋っているプレイヤーの書き込みが流れている。
スレの内容は、大いに賑わっている。やはりイベントはこうでなくっちゃと思う2人であった。
「第1フェーズ終了ってところじゃな」
「うん。これから何処を攻めようって話になるのね」
「そうなる、咲はどうする?」
「ん~、3Eエリア。十字の墓地に拠点を移そうかしら。面白いことが出来そうだし。内容は……」
「面白そう、じゃなくて面白いことか。よし! 乗った! 一発かましてやろうなのじゃ!」
こうして、ギルド『世界観探索隊』の2人は。3Eエリア。十字の墓地へとドラゴンに乗って移動を始めた。




