第318話「第100層フルレイド5」
二手目、有頂天が咲に対して影から忍び寄り背後から〈這い寄る一撃〉食らわそうとした、絶体絶命一撃必殺の的が当たろうとしたその時。
――弾丸のような閃光。銀の竜尾がそれを物理的にガードする。
有頂天は初めて口を開ける。脳に直接語りかけるような仕草で。
『何故だ、お前たちには何の説明もしてないはず……』
ちょっとぐらい身長が伸びたかもしれない、貴重なショタっ子、蒼葉くんは言う。
「説明は散々受けたよ~。毎回、何度も、言葉が足りないくらい繰り返して来た。反芻した、木魂した。だからもう行くよ~」
『どこへ』
「次へ、て言いたいところだけど~ん~。永遠に未完成な世界を絵描きに。かな」
『く……』
咲は後ろでは無く、愚直に前へ進む。
「悪いけど、ココには私の人生。一番前から一番後ろまで全員いるんだ。何なら仲間だっている。今更何にだって負けないよ! アナザーお姉ちゃん!」
自然と、有頂天は後ろへ怯む。するとその時、オーバーリミッツが〈審判〉を発動させ、偶然たる右側、必然たる左側の剣を。
「はぁあ! 真紅!」
――断罪した。
『ギャアアアアア――!』
レジェンドマンが察した。
「こりゃ、思ったより速く決着が付きそうだな」
『そんな、そんなバカな!? い……今私が出来ることを……!』
「その居場所は譲れないよ!」
明浄みことが打って出た。スキル〈手のひら返し〉!
みことの合気道が、強さの化身たる有頂天をひっくり返す。
「んじゃ三ツ矢、やることお願い」
有頂天のさらに終点から。今、天罰が下る。
帰想結マスターソードを手に熱く握りしめ……。
「俺達の舞台はここで終わりだ! 〈スターバースト・ストリーム〉!」
有頂天の〈無慈悲の咆哮〉は〈気合い〉でかき消した。
そして、最後の一撃を喰らわせた後に、トドメの一言。
「ここからは咲が引き継ぐっ!」
――終わった。
しかし、有頂天は引き際をわきまえない。
『まだだ、私にはまだ。やるべき事が沢山……』
最後に。天上院咲がトドメの一言を呟く。
「察しろ」
――有頂天は、その一言で。全てを悟り。
――そして、塵となり。塵も残さず。消え去った……。
◆
将護三ッ矢は、ここで謝るべき相手にきちんと謝罪する。
「すまなかった、四重奏の。そして非理法権天のバックボーンに巻き込んじまって」
「本当に今さらな謝罪よね……。ま、いいわ。許す! 終わり! 閉廷! 解散!」
これ以上ヒキ伸ばすんじゃねえ、と言わんばかりの大反響だった。
◆
凪ノ唄夜鈴よ浮遊戦空の出番は無かったが、夜鈴は何となく判った。
「なるほどね、ただの模倣犯に戦空が負けるわけないもんね」
これこそ当然の帰結だった。そして、咲はラスボスからのドロップアイテムを受け取る。
〈狭間が終わりし時、隙間を潜り迷うとき。この剣で境界線を引け〉
《ヤエザキは【終焉の剣エンドワールド】を手に入れました》
「これまた安直な……」
「いいんじゃないか、わしのゲームらしくて」
結局、天上院姫/農林水サンだけがゲームオーバーとなった形だった。
解散し終わった後なので2人で居る天上院姉妹。
「んじゃ、ログアウトしてシャワーでも浴びようぜ! ……スキンシップしていい?」
「だめ」
「ですよねえ――――!」
《農林水サン様、ログアウトします、お疲れ様でした》
《ヤエザキ様、ログアウトします、お疲れ様でした》




