第309話「念の修行」
《ようこそヤエザキ様、農林水サン様。EWO2にログインします。》
西暦2035年7月19日放課後。ギルド中央広場。
タイムトラベルの経緯をだいたいギルド報告で聞いた、受付嬢湘南桃花は呆れた顔で天上院姉妹を観た後。今までの苦労を半ばあきらめ顔で語る。その上で、今後に繋がるようアドバイスをする。
「あんた達ってさ、ぶっちゃけ〈絶〉しか知らないでしょ? ロクに理解もしないで〈念〉は使ってるけどさ」
予想外からの質問だった。
「? 絶ってあの封絶のこと?」
封絶は体を〈絶〉状態にするのではなく、空間を〈絶〉状態にする業だ。
「確かに昔からチート技として〈念波〉は使ってるが……特殊能力はイコールでスキルじゃないのか?」
チートを開発したゲームマスター姫の方がわかってなかった。そしてわかってる桃花が今の実力のもったいなさを論する。
「ぶっちゃけ、ただの良くわからない不思議な特殊能力だと思ってるから。言葉の力や意味を25%ぐらいしか引き出していないわけよ」
今までの姉妹の様々な本気や、〈エボリューション・極〉などをステータス上はMAXだとしても。25%しか発揮できていないと言っている。
「ハ〇ターハ〇ターで悪いけど、先代や古参が残していった叡智。四大基礎たる〈纏〉〈絶〉〈練〉〈発〉ぐらいは修行し直さないと、この先。生きて行けないわさ」
それは、核心は無いがなんとなく。自分たちの為に残して行ってくれた技に聞こえた。
「桃花先生は出来るの?」
「知らないけど出来てたんじゃないかしら? 少なくとも吸血鬼大戦の時は……」
出来てなければおかしいという意味である。
あれだけ散々『吸血鬼大戦』というワードが出て来ると、流石に過去の書物で調べた咲と姫。その死と再生の螺旋は観るものを圧倒させるだけの力があった。
あの力を無意識の天然でやってのけてしまうあたり、やっぱり昔の桃花先生は強かったんだな~と。解っていなければいけないのに知らなかったゲームマスター姫。
「ま、私も修行するからさ。3人でやってみましょう」
「四重奏の人達には教えないんですか?」
「あいつらは特別、どうせ勝手に強くなるから。放っておけ放っておけ」
話がそれたが、修行の始まりである。
◆
ギルド中央広場、闘技場。
「んじゃ、順序良く〈纏〉の修行から始めますか。と、言っても私も今から勉強するんだけどね」
〈纏〉
まとうもの、煩悩のこと。オーラを自身の周囲に留めること。
「……、それだけですか?」
咲、桃花、姫は考える。
「それだけね。まーつまるところ、スーパーサイヤ人の通常状態ってことね」
「なるほど、『物凄い霊圧だ』とか『凄まじい霊圧だ』とか『桁外れの霊圧だ』……とか。そういうのの通常状態ってことか」
「お姉ちゃんそれブリーチ……」
話がそれたが。
「つまり、その纏を薄くしたり濃くしたり。量を上げて留めることも出来るってことか」
「目的が『とどめる』だから、逆に微動だにしないオーラの方が優秀ってことじゃないかしら?」
「ま、じゃあとにかくやってみようなのじゃ」
というわけで、纏の練習に入った。ちなみに皆、スタイルが違う。咲、姫、桃花は気合を入れる。
「えっと~じゃあ。エボリューション!」ボウ!
「えっとー……。神威!」ボウ!
「私は普通にオーラかな。纏!」ボウ!
しばらくその状態を1分間キープした後……。
「じゃあこの状態で、闘技場の中をぐるっと一周歩いてみましょう」
まずは安定化を図るのが最優先だ。
「はい!」
「オス!」
こうして修行が始まった。
……、わかったこと。生命エネルギーが結構皆活発に動く。余談だがオーラの量的には精神が通常状態の時。咲が1000・姫が5000・桃花が8000と言った所だろう。あくまで目安なのであまり信じないように。
ただ見た感じ、街が動いている程度の認識しか視野が捕らえられなかった。本番・本戦では地球規模になることを視野に入れないと修行にならない。ということで、イメージだけでも射程範囲を地球まで伸ばす事にした。
桃花は次の指示を出す。
「ふむ、じゃあ次は地球を包み込むようなイメージで〈纏〉をやってみて。私もだけど、それで25%だった纏を100%にして維持。留めるイメージね」
「え? アークグレンラガン?」
「お姉ちゃんそれ違う……あくまでイメージするだけだからね?」
そして地球を包み込むようにオーラをイメージ、留める3人。
「それでは〈纏〉の維持! はじめ!」
「「オス!」」
3つの地球が、生命を活発に動き進め・流れ・廻るようなイメージを持続させ続けた。
……、できたこと。桃花の見立てでは、なんとかイメージ通りの現出は出来たようである。
「ヨシ! やめ! リラックスしていいよ」
「だはあー! 疲れるー! 歩くだけでこんな疲れるなんてー!」
「桃花さん本当にこんなこと、無意識にやってたんですか?」
「いや、無意識だから知らんて……」
桃花の力は、ある意味とんでもない。致命的な鈍感さである。……とも二人の姉妹は思った。
「んじゃ、今度はあんたたちの大好きな〈絶〉やるわよ」
「……むしろ絶は」
「私達が知らなかっただけなんだよなあ~……」
〈念〉の修行は続く。
――その後、結局。
纏・絶・練・発、そして応用技の周・陰・凝・堅・円・硬・流は。一個ずつ練習するのはかったるいので、各々知っておくように・頭に入れておくように。ということで解散した。




