第300話「フレンド大会・極」
「へぇ、『エレメンタルワールド~オフシャルゼロ・ファンアートワン~』かぁ。この2冊も中々読みごたえがありそうなストーリー……」
オフシャルゼロは100%公式の真書、ファンアートワン100%公式の偽書。という二冊で二度美味しいラインナップの変わった本を海底古代図書館でみつけたヤエザキと農林水サンだったが……。
ピコン! とゲーム音のポップアップ音が鳴った。
《ギルド『四重奏』からフレンドトーナメント大会の招待状です。ヤエザキさん、農林水サンさんが招待されました。》
仲間内で遊ぶPVP戦、フレンドトーナメント大会。サンは面白そうだなと思ったが。
「私はパス」
と、ヤエザキはあっけなく参加を拒否。理由は何となく解っている。
「私は今レベル1だし、戦闘職じゃないので」
だそうだ。サンは言う。
「しょうがない、じゃあわしの勇姿を高らかに観ているが良い!」
と、戦闘狂は意気揚々である。
「ちなみに参加カードは?」
「対戦カードはもう決まってるってさ。ヤエザキ参加しないから調整入ったけど」
どうやら対戦カードはランダムでは無く、好きな人が好きなように決めたらしい。
第1回フレンドトーナメント大会・極
◆第1回戦◆
浮遊戦空VSレジェンドマン
凪ノ唄夜鈴VSオーバーリミッツ
将護三ッ矢VS不動武
明浄みことVS農林水サン
「げぇ……!」
ヤエザキはマジマジと対戦カードを観るが、その対戦カードはちょっと色んな意味で美味しい。
名前だけ見ると誰が何やらピンと来ないが。軽く説明すると……。
最強の戦闘民族戦空VSヒーロー代表レジェンドマン。
第2回マスター夜鈴VS吸血鬼大戦最強のオーバーリミッツ。
初代マスター三ツ矢VS現在超能力最強の武。
神の巫女みことVSゲームマスターサン。
ヤエザキが居ないだけで、実質最強決定戦になっている。そもそも、湘南桃花やヤエザキは別に最強を目指してるわけでもないのに強くなってしまったエンジョイ勢だが。ここにあげた8名は最強を目指してるガチ勢なので、実質最強決定戦だ。過去に、総当たり戦でコンピューターがはじき出した最強総当り表なるデータが出回ったが。あくまでデータ上は【そんな感じ】の上下関係であり。ルール・前提・状況・心理状態込みのガチ戦は今までにはない。というか公式記録の記載という名のログはない。
合計、1回戦4試合、2回戦2試合、決勝戦1試合の長丁場だ。これは色んな意味でキツそう……。
サンは鼻高らかに言う。
「というわけになったから、んじゃあワシの勇姿を行って観ておれ」
「……はいはい」
もう、自分の冒険は終わったからどうにでもなーれ。な、ヤエザキであった。
◆ルールは『ほぼ実戦バトル』◆
1対1のリアルタイムでアイテム有りのバトル形式。サシなのには変わりないが、体力は立ってた方が勝ちの『何でもあり』形式、制限時間が月・火・水・木・金・土・日と刻々と変わる時刻。鷹の目が観客席の声をリアルタイムで蓄積、変換してアイテムとしてプレイヤーに渡すシステムに。終いには国のニュースが試合を適当に左右するという、かなり変則的だが実戦に即したルールである。
順を追って説明しよう。
1つ、『鷹の爪 小』仮想世界や現実世界の〈声〉を鷹の目が自動収集し、適当に変換。小アイテムとして対戦プレイヤーに落とす。出現率大、効果小。
2つ、『魔導書 中』月と水と木の刻限定、ジャンプ・マガジン・サンデー・チャンピオンのアイテムが出現し。フィールドに影響を与える。攻撃・回復・フィールド変化、それは取ってからでないと判らない。出現率中、効果中。
3つ、『国王の言 大』現実世界の国、国王と【日本サーバーで】判定された情報が戦闘に影響を与える。情報を収集出来るかは本当に微妙だが、今まで国王や政治家は間接的に参加できない形を取っていたのでこれは人によっては大きい。より現実に、実戦に即した効果が出る【可能性】がある。出現率小、効果大。
これら3つのアイテムがフィールドに影響をてきとうに与える、効果があるかは運しだい。誰が取るかも運しだい。ただし、可能性が今まで、世界樹クロニクルがほぼフィルターで限りなくゼロにしていたので。この影響力はデカい。あとはもう単純、立ってた方が勝ちの。ノリと勢い重視の何でもありバトルである。
◆
「うわあ、めんどそう……」
「人生とは、めんどうと愉快な刺激で出来てるんだよ、咲」
姫は咲を「あきらめろ」という面持ちで見守れという貞操に入った。
かくして、電脳都市『ライデン』の中央闘技場に。プレイヤー達と、この大会を観たいと純粋に思ったプレイヤー達でガヤガヤとごった返した。
歌じゃなくて戦闘なんだよなあぁ~……。
◆
大会のことを想像したその数分後、事件は起きた。
「うぐ……!」
その後、大会へ行く途中で猛烈な頭痛に見舞われたヤエザキ。どうやらネタとしてはアリだったかもしれないが。体が実戦のプレッシャーに耐えきれなかったようだ。【予測しただけで体調不良に陥ってしまった】ストレスフリーの世界観学者は、ある意味体の防衛反応だったのかもしれない。……つまり……。
ヤエザキの体が耐えきれないほどのプレッシャー、育ち切っていないということだけが浮き彫りになった。【平気じゃない、大丈夫じゃない、考えただけで頭痛になる】これではまともに大会観戦もできない。ゲームマスター姫は決断に迫られる。
「こっちのルートを考えただけでこのプレッシャー……、ダメだ。咲を危険な目に会わせるわけにはいかない。私は棄権する。もしくは大会自体を中止にする!」
予測して考えただけで体調不良になるなら、それはもうゲームの域を超えてしまっている。四重奏には申し訳ないが、姫はその『フレンドトーナメント大会・極』のルール。大会ごと四重奏に中止のお願いをした。
そして、咲と姫は安静をとってログアウトした。
育ちきっていない。まだ速すぎたのだった……。
こうして大会のルールの記載だけが、データそして残った。かなり危険なゲームとして記録された。
Q、3つのアイテムの中で何が1番めんどそうですか?
A、全部めんどそうですが、やぱり1番めんどそうなのは『国王の言』ですかね……。




