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少女は異世界ゲームで名を揚げる。~ギルド『放課後クラブ』はエンジョイプレイを満喫するようです~  作者: ゆめみじ18
第13章「少女は異世界ゲームで名を上げる。」西暦2035年7月3日

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第276話「ヤエザキ杯:咲VS姫5」

 空中に羽を広げて臨戦態勢に入る咲と姫、そこには凛としたたたずまいで力を貯めているのがわかる。今にも溢れ出し、爆発しそうだ。

「たああああ!!」

「はああああ!!」

 2人が勢いよく前に出て、ぶち当たろうとしたその時……!


「前提を書き換え、結論を予測する」

 そして武は、未来を予測した。

 と、その時。これまで黙っていた審判者、不動武その衝突音に挟まり2人の斬撃を受け止めた。

 ギリリリ……! と体重が攻撃に乗っているような重い2人の攻撃を、熱い汗一つで武は受け止めた。静止させた。そして最終結論から先に一言いう。


「引き分けだ。天上院姉妹」


 実況と解説が何か言っているようだが、3人の耳には届かない。

 姫が審判者が戦闘を止めた理由を聞く。

「何故だ! 私はまだ咲に! 教えたいことが山ほどある! こんなもんじゃ1割ほども私は満たされない!!」

「そう、【それを後から続く者に任さなかった姫のルート】の勝敗が『引き分けだ』」

「なに?!」

 審判者から常軌を逸した判定結果の説明が始まる。それは実況にも解説にも、もちろん観客にも観戦者にも等しく効き届く声で話した。

「VRの世界には制限時間は無いが。現実世界にはある。神道社のという形でな」

「馬鹿な! それだったら予備電源が起動して……!」

「それが切れたら?」

「は!?」

「今のお前ら姉妹は【心がしなやか過ぎる】現実世界の体力エネルギーがある限り、折れることは無い。それこそ7年先の未来までもつだろう」

 それは咲が7年か程のログを残したその2倍、……ありえない話では無かった。

 咲があんぐりと口を開けて、無言の間を作る。

「……」

「結果、西暦2046年まで決着がつかなかった。その後、発電所の大規模停電。により【電気エネルギー切れ】、今は西暦2035年だから【11年間決着がつかずドロー】だ……」

「な……!?」

 未来予知とは言わない、未来予測。現代科学で持ち得る最高の演算能力で導き出した。一つの答えだった。

 そして、姫の「私はまだ出し切れていない」という気持ちもわかる武。

「悔やむ気持ちも解るし、やり切れない想いも解る。だから」

 一拍間を置いて、さとす様に語りかける。


「だから、あとの者達に託せ。姫」


 その真意は、どれくらいの人々に届くだろう。

「!!………………、わかった。そうする」

 姫の妹愛と、自分の未熟さに腹が立つ姫。 

「お姉ちゃん」

「よかった」

 武は低い声で安堵した。……だが。

「じゃが! 白黒はっきりしないのは、わしの心が許さない! 【そういう理由なら】わしの心の弱さに問題がある! 私1人が、咲1人に全てを教えようなんて! 思い上がりも良いところじゃ! じゃから!」

 天空で、皆に聞こえる声で天上院姫は叫ぶ。


「降参だ! 私の負けで咲の勝ち! それでいい!!」


 咲は驚く、これほどの真剣勝負で「負けました」と言えるほどお姉ちゃんが強くないことは解っている。

「……――!!」

 武は、もう一度。戦局を左右するこの重要局面を。自らの意志で黒星にすることを選んだ姫に確認をとる。

「いいんだな?」

「わしの心が命じたんだ、この想いは。誰にも止められない。だからいいんだ! 咲、次も頑張れよ!」

 妹は2人の長い歳月と共に。やっと自身が、自分達が望んだ正真正銘本物の『ラスボス』を、正式に倒せたことへの安堵と感謝の気持ちで、涙が溢れ、流れた。

「姫お姉ちゃん……! ――うん! わかった!!」


「勝者! 天上院咲!!」

 審判者、不動武は咲の手を天高らかに上げて祝福する。


『わあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!』

 観客たちの声という名の声援が巻き起こる。

 ここに来て、実況と解説の声がようやく聞こえてくる。ジャンプが雄叫びを上げる。

『おーっと!? これはどういうことだー!? 空中で一撃攻撃を合わせたら! 審判武が止めに入って、2人に説明をして。その後、咲選手が勝利した形になるぞー!?!?』

 解説、オーバーリミッツが誤解が無いように観客に伝える。

『簡単に言うと体力切れですね。心の』

『リミッツちゃん審判者の説明聞いてた?! 電気切れって言ってたでしょう!?』

『そう、システム上は電気切れのドローなんですけど。ドロー状態で推し量られた判断基準が。咲選手の【闘争心】よりも、姫選手の【妹愛】が負けたわけです』

『でも姫選手の妹愛は本物だぜ!?』

『そう、だから。よくわからないけど。11年間妹を神道社で拘束していいのか? とか、その先の結末が引き分けでいいのか? とか、仲間を信じきれてない独りの私じゃこれ以上は教えられない。とか、色々な心が沸き上がって来て。姫選手の心が下がり、負けを認めた。という形でしょうね』

『つまり、どういうことだってばよ』

『咲の心はともかく。姫の心のほうが弱かったことを知って引き下がった。ということです』

『おーっし! それなら俺もわかるぜー! よし咲選手―! そのまま2回戦目も行っちまえー!』



 地上に降り立った3人は、モブ看護師に「全回復させます」と言われて。ステータスが初期状態に戻った。

 実況のジャンプが間髪言わずに早速次の試合へと移す。展開が速いと言われても速くこのカードの試合が観たくてたまらないのだ。

『さー! 盛り上がってまいりました! 2回戦は天上院姫VS湘南桃花です! 選手入場――――ッ! レディイ――! ファイト!!!!』


「よし!」

 気合いを入れなおす咲選手。一方、世界の頂上で天下を取って来た、氷の山脈のように冷え切った頂点のゲームマスターは。沈着冷静に、しかし絶対に揺らがない一歩を踏み込みながら。こう切り返して、前進した。

「油断はしない、行くよ。天上院咲てんじょういんさき


 真冬のような四季の心、湘南桃花。雪溶け・花咲く時は近い。

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