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撃ち抜く

 

 今日も朝から街について調べているが何も分からずいきずまっていた。


 昼過ぎ報告がてら櫻木姫華に会いに、櫻木姫華の住む豪邸へと足を運ぶ、豪邸の門の前のチャイムを鳴らすが返事がないそれ所か人の気配すらない。


「あれ城田さん何か用ですか」


 するとスポーツウェアを着ていた櫻木姫華が汗をかき門の前にいた俺に話しかけてきた。


「いや、ちょっと君に会いにきただけで」


「そうだったんですか!? ちょうど日課にしている運動で走り終わったんですぐに部屋に案内しますね」


 櫻木姫華は門を開け入るので櫻木姫華に付いていく、豪邸の中に入って部屋に案内される。


「この部屋でちょっと待っててくださいね、すぐに戻ってきますから」


 櫻木姫華はそう言って部屋から出ていく。数分後櫻木姫華はスポーツウェアから部屋着に着替えて戻ってきた。


「こんな突然来るなんて思ってなくて、おもてなしもできずにすみません」


「いやそんなのいいよ」


「これよかったら……今日焼いたクッキーなんで食べてください。あと何かジュースも……」


 櫻木姫華は部屋にある冷蔵庫を漁り、ペットボトルのオレンジジュースを一本差し出してきた。


「すみませんこんなのしかなくて」


「ありがとう正直嬉しいよ、ずっと飲まず食わずだったから……」


 今もう一つおかしな事に気付いた。この三日間俺は水も飲んでないし食事すらまともに取っていない、にも関わらずお腹は減ってすらない。


「城田さん……?」


「少し考え過ぎだな、オレンジジュースとクッキーもらうね」


 ペットボトルの蓋を開けグイッと豪快にオレンジジュースを飲みクッキーも数枚食べる。


「なんともないですか……?」


「いや別になんともないけど……」


「そうですか……まだ少し時間がかかりそうね」


「それで気になってたんだけど、この豪邸には櫻木さん一人で住んでるの?」


「え……? ええ……!! お父様もお母様も今は櫻木グループの重要な仕事で家に帰ってくる事事態少なくて」


「へーそうなんだ」


 それにしてもこの豪邸に一人で住んでいるのはおかしい気がする。それにあいつの姿も一回も見ていないような。


「もう一つ聞いていい……? この前のパーティの時に連れてた田澤翔也って男は……あれなんか頭が……」


「大丈夫ですか城田さん……ベッドはすぐそこにあるので横になってください」


 頭がぐるぐるする。櫻木姫華に肩を貸してもらいベッドに横になる。すると両手両足からカチャンと音が聞こえる。


「一体何して……」


「大丈夫ですよ、ただ城田さんに逃げられないように手足の自由を奪うだけですから」


 薄れゆく視界に櫻木姫華が答える。


「もう少し時間をかけたかったんですけど、どうやらそうも言ってられないみたいです。城田さんに危害を加えるつもりもありませんから、ただ城田さんには私の要求を呑んでもらいたいだけです」


 櫻木姫華はスマミフォンを持ち確認するとどこかに連絡しようとしていた。俺の意識はここで途絶えた、次に意識を取り戻した時誰かと肩を組んで歩いていた。


「亜梨沙姉ちゃん……?」


 横顔を見て一瞬で分かった、しかし亜梨沙姉ちゃんは足を引きづっていてしかも周りは火の海であった。


「頑張って彰人君。もうすぐ外に出れるから」


 亜梨沙姉ちゃんの負担を減らそうと足を動かそうとするのだが、足に力が入らない。すると扉前に辿り着き亜梨沙姉ちゃんが扉を開けて二人で外に出て地面に倒れ込む。


「それにしてもなんで亜梨沙姉ちゃんがここに?」


「説明するのは後……!! 今はここから逃げるのが先決だよ」


 亜梨沙姉ちゃんは焦って起き上がって手を差し出してくる。その手を掴んで俺も起き上がると目の前で櫻木姫華の豪邸が燃えている。


「あらら、まさかあそこから逃げ出せる程の体力が残ってたなんて驚きです」


 いきなり櫻木姫華が銃を片手に現れる。亜梨沙姉ちゃんが両手を拡げ俺を庇う。


「私はどうなってもいい、けど彰人君を今すぐ現実の世界に戻して」


「ご冗談を城田さんを現実世界に戻したら女達が群がってくるでしょう、この世界なら城田さんは私一人の物にできるんです。だからあなたの言うことなんて聞く訳ないでしょう。それに……言われなくてもあなたには死んでもらいます」


 櫻木姫華は銃を両手で構え亜梨沙姉ちゃんに照準を合わせる。もう亜梨沙姉ちゃんが死ぬのを見たくなんてない、そう思った俺の体は後先考えずに動いていた。


「え……?」


 亜梨沙姉ちゃんに覆いかぶさり櫻木姫華に背中を向ける次に発砲音が聞こえ背中に銃弾が撃ち抜かれ地面に倒れ込んだ。


「彰人君!? なんで庇ったりなんてしたの!!」


「あ…あ…あ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!! だめ……城田さん……死んじゃだめです!!」


 焦った二人の声が聞こえてくるが、血の出血は止まらない。


「早く救急車を呼んで!! じゃないと彰人君が死んじゃう……」

「あなた何してるの!?」


「城田さんがいない世界にいる価値なんてない……あなたは知らないけど、この世界で死ねば現実でも死ぬ。きっと今頃現実世界の城田さんも大量の出血をしてるに違いない、だったら私も城田さんと一緒にこの世界で死ぬだから止めないで!!」

「!?」


 ぼんやりだが櫻木姫華と亜梨沙姉ちゃんが言い争う声が聞こえる。


「死にたいなら勝手に死ねば、止めはしない。けど彰人君は死なせない」


「ただのデータのあなたに何ができるの」


「さっきあなたが言った通りなら、この世界で彰人君が助かればきっと現実世界でも死にはしない」


「それはただの憶測でしょ」


「それでも私は彰人君を助ける。邪魔だから退いて、彰人君しっかりして、すぐ救急車が着くからね」


「亜梨沙姉ちゃん……」


「何彰人君……?」


「ごめん…ごめん亜梨沙姉ちゃん……あの時俺がもっと探してれば亜梨沙姉ちゃんが事故で死ぬ事なんてなかったのに」


「……彰人君もう喋らなくていいから」


 救急車のサイレンが遠くから聞こえてくる。


「最後に亜梨沙姉ちゃんと話せてよかった……」

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