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葛城 真梨香

誕生日おめでとう自分記念に、個人的お気に入りの「ゲームの中の真梨香お姉ちゃん」のショートショートを書きました。


ボクっ子で、一途な真梨香お姉ちゃんも好きなんです。

 ボクの名前は葛城かつらぎ真梨香まりか。私立桜花学園に通っている。お金持ちのお坊ちゃんやお嬢様ばかりが通うこの学園にボクみたいな庶民が通うことができているのは、特待生という制度のおかげなんだけど。


「お姉ちゃん! 待ってよぉ」

「桃香、急がないと朝練に遅れるだろ」


 ボクと妹の桃香は小さい頃からやっていた剣道の実力を買われて、この学園のスポーツ特待生の枠で入学したんだ。小さい頃から僕の後ろをヒヨコみたいについてくる子だったけど、まさか高校まで一緒に通うとは思ってなかったなぁ…。


「お姉ちゃんったら、お弁当忘れてる! ほら!」

「ああ、ありがとう。桃香それじゃぁ少し急ごうか。朝練に遅れたらうちのコワァイ主将にどやされるからな」


 生真面目で堅物と評判のアイツはきっと他の誰よりも早く登校して自主練を始めているんだろうな…。普段ならそれに付き合って早めに登校するんだけど、今は妹も入学したばかりだし、ボクが面倒を見てやらないとな。


「主将さんかぁ……。女子部の雪柳先輩は優しいのになぁ…」


 桃香が可愛い貌をしかめている原因は男子部の主将だ。生真面目、堅物、女嫌いの三拍子そろった三年の津南見つなみ柑治かんじは入学前の合宿での出会いの印象が良くなかった所為もあってか、桃香は苦手らしい。


「柑治は女子にはちょっと当たりがきついからなぁ……。今度注意しとくよ」

「お姉ちゃんは昔から津南見先輩と仲が良かったんだよね? 先輩ってずっとあんな感じなの?」

「うん……女子には概ねあんな感じだよ。ボクの事は最初は男だと思ってたって言ってたし」


 剣道部男子部主将の津南見柑治はボク以外の女子とは殆ど口もきかない。その所為で女子嫌いだと思われているんだけど、ボクにだけは本当の事を教えてくれている。柑治のやつは強烈なお姉さんたちに変な方向性で可愛がられ続けた所為で女性恐怖症なんだ。


「まあ、何かあったらボクに言いなよ。柑治の扱いは慣れてるしね」


 柑治とは小学校のころに道場での練習試合で知り合った。最初はボクの事を男だと思っていたらしいけど、女と知ってからも仲良くしてくれている。今では男子でもボク程柑治と仲の良い奴はいないだろう。


「う~ん……、確かにお姉ちゃんに話した方が早いんだろうけど、できるだけ自分で頑張ってみるよ」

「え……?」


 思ってもみなかった答えに隣を小走りについてくる妹を振り返る。桃色のシュシュでひとまとめにしたポニーテールが弾むように揺れる。その髪と同じように息も弾ませながら、桃香が笑顔でこちらを見返してくる。


「確かにつっけんどんで厳しそうな人だけど、優しいところもあると思うし、お姉ちゃんの親友なんだもん、きっといい人なんだと思う」


 まっすぐに前を見てキラキラした笑顔で言う桃香に、ボクは苦笑した。


「本当に桃香は前向きだね。まぁ、無鉄砲ともいうけど。言っておくけど、過去あいつの厳しさに泣かされた女の子は結構多いんだから、気を付けなよ」

「ええ?! そんなこと言われるとちょっと自信が……う~ん、でも頑張る!」

「それじゃあまずは朝練に遅れずに出るところからだね。スピード上げるよ!」

「ええ~~!! お姉ちゃん待ってぇぇえ!!」


 悲鳴を上げる桃香を置いて速度を上げる。全く朝から良い運動だ。明日からはもう少し早く桃香を起こすようにしよう。いっそのこと朝の自主練に桃香も巻き込むか。柑治は嫌がるだろうけれど、ボクも柑治も自主練ができるし、ボクは桃香の面倒も見れるし、一石二鳥かもしれないなぁ……。



 この時はボクはまだ、ボクの平和な日常を壊すのが、桃香いもうとだなんて思いもしていなかったんだ。



この後真梨香お姉ちゃんがあの闇堕ちに至るまでを思うと……。

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