縁日
作者の住んでる地方で毎年あってるでかい縁日に、休みの日に浴衣を着て行こうと思っていたら、休日出勤を言い渡されてムシャクシャして書いた。
「今年も賑わってるわね」
参道を照らす露店の灯り、じゅうじゅうと肉の焼ける音と匂い、威勢のいい呼び込みの声が辺りに満ちている。参道の奥、お宮のある方角からは祭囃子と太鼓の音が聞こえてきていた。
今日は地元の神社で毎年行われている縁日だ。夏の終わり、秋の初めに五穀豊穣を祝い、開催されている。露店が多く出ることでそれなりに有名で、遠くから足を延ばしてくる観光客もいるほどだ。
小さい頃から毎年この縁日には桃香と二人で来るのが習慣になっている。それぞれ同学年の友達と普段遊んでいたりしても、この日だけは姉妹で出かけると決まっていた。今年もこうして二人で参道の入り口に立っている。
桃香は薄紅色の撫子柄が華やかな浴衣に濃い緋色の帯を蝶結びにして、髪は右サイドで結いあげて花のコサージュとピンで留めている。清楚で可愛らしい装いで、永久保存で飾っておきたい可愛らしさだ。
一方私はと言えば、紺鉄と生成りが大胆に縦割りに染め分けられた地に薄と蜻蛉がデザインされた浴衣に梔子色の裏地が銀灰色の帯を片花文庫に結んで、髪は後ろでシンプルにまとめて小さめの玉簪を刺している。蜻蛉柄の女性浴衣というのは少し珍しい意匠だが、母のおさがりで、涼しげな色合いと、意外に優美にまとまった紋様が気に入っている。
「先に参拝しちゃいましょうか」
「うん、お姉ちゃん後でヨーヨー釣りやりたい。くじも引こうね!」
「はいはい、人も多いし、はぐれるといけないからちゃんと掴まっててね」
そう、はぐれたらいけないからと、この日は桃香と堂々と手を繋いで歩けるのだ。ビバ! 人ごみ! ビバ!! 縁日!!
毎日の稽古で固くなって、まめもできているが、桃香の手は世界一可愛い手だと思う。ぎゅっと握り返してくれる温もりに、内心昇天しそうな気持だが、表情筋を総動員して冷静なふりを保つ。
「お姉ちゃんこそ、ちゃんと掴まっててくれなきゃダメだよ!」
ちょっと頬を赤くしながら上目づかいで言う妹。人目もはばからず抱きしめたい愛くるしさである。何故かここ最近、桃香の言動が私の保護者ぶっているときが多く、姉としての立場がなくなっている気がするけれど、可愛いからいいかなという気になる。
それにこの縁日は地元庶民のお祭りなので、セレブ学園の生徒で、生粋のお坊ちゃんな攻略対象者たちと遭遇する心配もない。そう言う意味でもこのお祭りは私にとっての安息のイベントなのだ。
「今日くらいは姉妹水入らずで楽しみましょうね!」
「もちろん!!」
私と桃香は微笑み合いながら参道へ入る鳥居をくぐった。
………けれど、私の期待と決意は参道に入って数分のうちに、脆くも崩されることになった。
「おい! この紙は破れやすすぎるぞ! 金魚に逃げられたではないか!!」
「石榴、これはそう言うゲームだよ。金魚の動きに添って、そっとすくうんだよ。ほら…掴まえた」
金魚すくいの露店で浴衣美女数人を引き連れて騒いでいる二人組。見覚えがありすぎて思わず二度見してしまった。
黒地の鮫小紋の浴衣に鈍色の帯を貝ノ口に結んだ一之宮石榴と深緑の行儀小紋に山吹の兵児帯をシンプルな方蝶結びで少し斜めに垂らした吉嶺橘平である。何でいるんだよ。バカ殿と家老は城に帰ってお代官ごっこでもしてろよ。気づかれないように後ろを素早く通り抜けようとした私に、最初から気づいていたというように吉嶺が声をかけてくる。
「やあ、葛城さん、偶然だね。君たちもこのお祭りに?」
「やっと来たか…じゃない、奇遇だな、葛城。縁日というのは中々賑やかで面白いな。せっかくだ、俺と金魚すくいで勝負していかないか?」
「……一之宮先輩に吉嶺先輩今、『やっと来たか』って…」
「いやいや、偶然だよ。偶然。…ね?」
吉嶺が笑顔の暴力で黙らせてくる。なんにせよ、折角の桃香との姉妹水入らずだったはずなのに、のっけから双璧と遭遇とか悪夢としか思えない。これも桃香のヒロインとしての吸引力なのだろうか…。
「そんな事より、折角だ。葛城、俺と勝負だ!制限時間内で何匹金魚をすくえるかでどうだ!?」
はしゃぐバカ殿を渾身の力を込めて殴りたい。痛む頭を抑えながら、取り巻きを見れば後ろの方で枇杷木夕夏先輩が手を合わせて申し訳なさそうにしている。濃い紫の地の芍薬柄の浴衣が艶やかだ。
「……金魚はすくってもうちじゃ飼えません。そんな事より一之宮先輩、そこに見えてる横道の奥に射的の露店がいっぱい並んでいるんですけど、やったことありますか?」
「しゃてき…? 射撃とは違うのか?」
「エアガン射撃の露店もあるにはありますけど、縁日と言えばコルクの弾を飛ばして景品を落とす射的が王道かと」
バカ殿の目が輝いた。こいつの事だから海外で本格的なクレー射撃とかやったことありそうだし、鉄砲勝負の方が金魚すくいより分があると考えているんだろう。
「ただ、私たちは先に参拝してこなくてはなりませんので、横道の奥の露店で時間をつぶしていてください。…見世物小屋なんかもあるので退屈しのぎにはなるかと思いますよ」
バカ殿ではなく枇杷木先輩を見ながら言えば、通じたようで、パッと顔を輝かせてはしゃいだ声を上げてくれた。
「石榴、面白そうだから行ってみましょう! ね!!」
「私も見世物小屋って何があるのか見たいわ! 石榴、行きましょう!!」
「橘平も一緒に行きましょう!!」
枇杷木先輩に同調して取り巻き美女軍団が二人を引っ張る。
「む…。仕方ない、適当に時間をつぶしていてやるから、参拝が終わったらその射的屋とやらで勝負だからな!」
双璧が取り巻きに引っ張って行かれるのを見送ると、私は桃香を連れてまっすぐ参道を進んだ。
「…お姉ちゃん…参拝の後…あっちに行っちゃうの…?」
「行く訳ないでしょう。元々あっち側の露店は桃香も私も苦手なものが多いし、今年は射的は諦めるわ」
「え…?! でも今……」
「私は射的はどうですか? とは言ったけど、射的で勝負しますとは一言も言ってないし、多分枇杷木先輩が上手い事見世物小屋辺りに引っ張り込んでくれたりして足止めしてくれるでしょ」
まったく、余計な邪魔が入った。こうなったら意地でも桃香と二人のお祭りを満喫してやる! 決意も新たに桃香の手を握り締めれば。桃香も嬉しそうに握り返してくれた。マイスイート妹、本当に可愛すぎてどうにかしてしまいそうだ。
参道を人込みを縫うように進むんでいると、前方できょろきょろと辺りを見回している小柄な少年が目に入った。…できれば入れたくなかった。
「お姉ちゃん…あそこで困ってるのって……」
「しっ…黙ってこっそり通り過ぎましょう!」
けれど、こっちが目を逸らすより先に、困った顔のマッシュルーム…じゃなかった、加賀谷桑少年と目が合ってしまった。
「あ!」
「ちっ…」
そんな救世主を見つけたような顔をされても困る。駆け寄って来られても、こっちは可愛い妹とデート中なのだ。そんなチワワのような目を向けてくるんじゃない。
「……どうしたの?」
「あの、嘉穂を見かけませんでしたか? 髪はお団子二つにしてて、橙に手毬紋様の浴衣を着てるんですけど…!」
「携帯は?」
「さっきから電波が通じなくて…」
人ごみの多いイベント会場でははぐれた時の待ち合わせ場所と時間を事前に決めておくのが私の中では常識なのだけれど、このお坊ちゃんにそれを今言ったところで後の祭りだしな……。
「…仕方ないわね、加賀谷君、ちょっと恥ずかしいかもしれないけれど、我慢してね。…こっちへ来て頂戴」
マッシュルーム少年の手を取り、参道を進む。
「え? え?! あ、あの…手…」
「君まではぐれたら困るでしょう。……ほら、ここよ」
「え?!」
『…迷子のお呼び出しを申し上げます。●●よりお越しの、胡桃澤嘉穂ちゃん、お連れ様がお待ちです。参道中央の、警察官詰め所までお越しください…繰り返し……』
「それじゃあ、ここで待ってなさい。きっとすぐ来るから」
「え、あの…」
「迷った時は、確実に通じる場所から動かないことよ。あ、それと…胡桃澤さん、ここに来たとしてもきっと怒ってるだろうから、頑張ってね」
「え? ええ!?」
混乱する加賀谷少年をお巡りさんに預けて私は桃香と詰め所を後にした。人ごみに紛れて距離を取った頃、背後で可愛らしくも尖った叫び声が聞こえてきた。
「桑ーーーーーー!!! アンタ! なんって恥ずかしい真似してくれてるのよーーーーーー!!!!!」
「えっ!? ちょ…僕じゃな……!!???」
少年の悲鳴が聞こえたが、もちろん、無視した。
「まったく…この縁日は桃香と私の聖域だったはずなのに…次から次へと…!!」
桃香の手を引きながら参道を進む。こうなったら意地でも邪魔されてなるものか。周囲を警戒しつつ神社の境内へとたどり着く。手水場で手を清め、参拝を済ませたら、名物の鳥みくじに行列ができている。おみくじと一緒に細々としたグッズや、場合によっては家電や旅行券、お米などが当たるこのおみくじは毎年大人気で、行列ができている。私たちも並んで引くことにした。
「私は…吉、ね。桃香は?」
「中吉だって! 勝負運のお守り貰っちゃった」
「中々良さそうじゃない。今度の試合も頑張ってね」
おみくじを枝に結んでから、境内に設置された舞台を見に行く。地域の老人会や郷土研究会が毎年歌や踊りを披露しているのだ。暫く二人で演芸を楽しんでいると、肩を叩かれた。嫌な予感に振り返れば、紺地に黒の縞が入った浴衣に白地の麻葉紋の角帯を締めた菅原棗先輩が立っていた。
「よ! 奇遇だな。お前たちも来てたのか?」
菅原先輩の事だから、双璧と違って本当に偶然なんだろうと思う。悪気もないのだろう。知り合いに会ったから声をかけた、それだけのことだ。分かってはいる。赤の牡丹柄の浴衣に黒の帯を締めた五葉松亜紀先輩を連れているのだから、私たちを邪魔するつもりなどないことも分かっている。
けれど、度重なる攻略対象者たちとの遭遇に荒んだ私の心は収まらなかった。
『では次のマジックでは客席の方にご協力を…』
「はい!」
舞台上で行われているマジックショーに向かって、力強く掲げた。…菅原先輩の手を。
「え?! え??!」
『それではそこの威勢がいい眼鏡のイケメンさん、舞台に上がってきてください』
「え、いや、俺は…」
「先輩頑張ってきてください」
「あらあら…棗、折角だから行ってきたら?」
五葉松先輩にも背中を押された菅原先輩が舞台におっかなびっくり上がっていくのを見届けると、私は五葉松先輩に軽く頭を下げ、桃香を連れてその場を離れた。舞台の上では菅原先輩が箱に詰められ、大きな刀で刺し貫かれるイリュージョンが始まっていた。
「残念だったね、演舞もうちょっと見たかったのに…」
「ごめんなさい。私が桃香を強引に連れだしたから……」
「え、ああ、お姉ちゃんの所為じゃないし、気にしないで。それより何か食べよう? お腹空いちゃった」
……桃香は優しい子だなあ…。こんな天使のような子が存在していていいんだろうか。桃香を守れますようにとさっき参拝の時にお願いしたけど、もっとお賽銭弾むべきだったかしら…?
低い位置にある頭を撫でれば擽ったそうに首をすくめる仕草にハートを貫かれる。ああ…ずっと撫でてたい……。
「坊、お一人でこんなところ歩いてちゃ危険です…あだっ!」
「その呼び方止めろって何度も言ってんだろボケナス」
通りがかった社務所の影から聞き覚えのある声が聞こえてきて、思わず桃香の耳と口を塞いで壁の影に隠れた。そっと建物の影から覗けば、ひょろりとした長身を市松模様に登り鯉を図柄を乗せた甚平に包んだ小林檎宇が、いかにも三下っぽいアロハシャツの男の頭をパコンと叩くところだった。名前は知らないが、確か小林の実家、姫林組の下っ端で、ゲーム中にも何度か出てくるモブの中にいた覚えがある。
実家関係者の前だからか、普段の緩い喋りかたではなく、素に戻っているようだ。
私は何も見なかったことにして、その場を離れた。
「お姉ちゃんいきなりびっくりしたよ。…何かあったの?」
「いえ、何でもないわ。ほら、お祭りだからって羽目を外したカップルがいたから目の毒だと思って」
それにしても、ゲームシナリオに無いイベントの筈なのに、この遭遇率はどういうことだろう。これが桃香の運命なのだとしたら、恐るべきことである。今まで私たち姉妹だけの聖域だった場所がどんどんイケメンに侵食されてしまう。
境内を出て参道の露店をいくつか廻る。焼き鳥や肉巻きおにぎりの串焼きなど、露店ならではの食べ物を手に歩いていたら、桃香の担任の栗山幸樹先生が生徒会顧問の木田川葡萄先生とテントを張った食堂で乾杯しているところに遭遇した。
「栗山先生が来てるってことはまさか…鵜飼先生もいらしてたり…?」
「杏一郎なら後から合流するってメールが来てたよ。…あ、来た」
「!?」
振り返ればこげ茶の絣の浴衣に黒無地の角帯を結んだ杏一郎が驚いた顔でこちらを見ていた。
「…来ていたのか…?」
うっかりなのだろうけど、砕けた口調で話しかけてくる杏一郎に目で注意する。桃香は昔見かけただけで、ずっと絶縁状態だった従兄の顔など覚えてはいないし、ここは二人きりでもない。
「鵜飼先生、こんばんわ。栗山先生と親しいのは知ってましたけど、木田川先生とも仲良かったんですね」
先生、を強調して話しかければ、しゅん、と耳としっぽを垂らす犬の幻影が見えた。けれどここは心を鬼にする。
「木田川先生は僕と杏一郎…鵜飼先生の恩師でもあるんだよ。同じ教壇に立つようになってからもこうして時々飲みに来たりするんだよ」
栗山先生がさりげなく会話を助けてくれる。
「そうなんですね。それじゃあ、あまり羽目を外しすぎない程度にしてくださいね。私たちはこれで」
さりげなく会話を終了させてその場を立ち去ろうとする。杏一郎がはっとした顔で一歩前に出てくる。
「こんな時間に女子二人では危ないんじゃないか…? 保護的立場としてなら…」
「杏一郎、一女生徒にいちいちそうやってついて回ってたらきりがないし、プライバシーの侵害だよ。今日のところは黙って座りなよ」
保護者モード全開になりかける従兄を、栗山先生が強制的に椅子に座らせている。先生、グッジョブです。流石桜花の猛獣使い。…猛獣じゃなくて図体のでかい小動物だけど。
ひらひらと手を振ってくる栗山先生に感謝を込めて頭を下げると、桃香を連れてその場を後にした。
なんだかどっと疲れてしまったので甘いものが欲しくなった。今年の露店から初出店だというクロワッサンたい焼きなるおやつが売っていたので、白餡と黒餡を一つずつ買って、桃香と半分ずつにして食べる。さっくりとした生地にしっとりとした餡子がマッチしていて美味しい。
「美味しいね。お姉ちゃん」
何より桃香が笑顔で食べているのが味を倍増させてくれる。トラブルはいっぱいあったけど、来てよかった。
「あれ?! 葛城姉妹じゃね?」
「あら、ほんとやっほー!」
気が緩んだとたん、またしても聞き覚えのある声がした。恐る恐る振り返ると、木通由孝先輩と、瓜生舞先輩が並んで歩いていた。木通先輩は裾に絞り染めの入った白地の浴衣、瓜生先輩は菖蒲柄の濃紺の浴衣姿だ。この二人がいるってことは当然…。
「あ、柑治こっちこっち~!」
やっぱりか!!
「あ、先輩方、私たち先を急いでるんで…」
「葛城さん、良かったらこの後柑治たちを案内してもらえないかしら? …私と由孝は二人で回りたいし…ね?」
「いえ、私たちも姉妹で回る予定なので…って、『柑治たち』………?」
嫌な予感に振り返ってみれば、津南見の横にはなぜか浅黒い肌に銀髪の青年、シェリム王子までくっついてきていた。津南見は濃緑に立涌紋の浴衣に海老茶の角帯、シェリムは目と同じ琥珀色の地に茶の縞が入った浴衣に濃茶の兵児帯を結んでいる。
「デスから、あのカタヌキというのは僕の勝ちデス」
「原型留めないくらい粉々にしておいて何を言う。まずはお前は型抜きのルールから見直してこい」
いつの間に仲良くなったお前ら。いくら木通先輩たちの頼みでも、あの二人と縁日を回るとか、御免こうむりたい。
「木通先輩、瓜生先輩、ごめんなさい!!」
桃香の手を取って、私はその場を走って逃げ出した。
「はあ……結局、バタバタして楽しめなかったわね」
「うん…でも、お姉ちゃんと一緒に見て回れたし、私は楽しかったよ?」
参道入り口の鳥居まで出てきたところで一息つけば、桃香は天使そのものの発言をして、私の心を射ぬいてきました。神様、この世に天使を具現化してくれてありがとう。
あまりの可愛さに撫でまわしたいのを我慢して、乱れた髪を直してやっていると、聞き覚えのある声が背後から聞こえた。
「真梨香さん?」
……まあ、分かってはいた。他が全員来ていたのに、こいつだけいないなんてことはあり得ないよね。うん。振り返れば、案の定、そこにいたのは篠谷侑李だった。白地に淡い碧で流水紋の描かれた浴衣に碧の帯を締めている。外人顔の癖に嫌味なくらい似合っている。
そんな篠谷に、私は最後の気力で、にっこりと微笑みかけた。
「篠谷君、偶然ね。私たちは今から帰るところだけど、縁日、楽しんでいっちょうだい」
「もう帰ってしまうんですか? 残念です。でもそんな可愛らしい浴衣姿では心配で仕方ありませんし、まっすぐ帰っていただく方がいいかもしれませんね」
そう言う歯の浮くようなセリフをよく恥ずかしげもなく言えるなあ。…そういえば。この際だからと、私は今日一日気になっていたことを、篠谷に聞いてみることにした。
「篠谷君たち、今日のお祭りの事、何処で知ったの? 家が近いわけでも、桜花の内部生が出歩くような場所でもないでしょう?」
「ああ、それでしたら、梧桐くんが教えてくれて、面白そうだったので…」
その日から一週間、梧桐君とは仕事以外で口を利かないことにした。
男浴衣の柄調べるの楽しかった。




