おうちデート 不憫系オトメン編
本編との繋がりは一切ありません。
攻略キャラとお姉ちゃんが恋人設定。
時間軸未定。
お姉ちゃんと攻略キャラ以外のキャラが出てくる。
糖分過剰(?)
お姉ちゃんがデレ。
キャラ崩壊。
本編との繋がりは一切ありません。(大事な事なので以下略)
「いらっしゃい。待ってたわ!」
「……間違えました」
玄関を開けた瞬間に飛びつかんばかりの勢いで出迎えてくれた瓜生舞先輩を見て、私は踵を返そうとした。その背に瓜生先輩が追いすがってくる。
「待って待って!! 間違ってないから!! ここは間違いなくあなたの愛しの柑治君のおうちだから!!!」
「その言い方止めてください、恥ずかしいんで!!」
たとえ事実だとしても、そんな言い方をされるといたたまれなくなる。初めの頃は死んでも恋人になることなんてありえないと思っていた相手だけに恥ずかしさもひとしおだ。
「……で? 何で瓜生先輩が津南見先輩のお宅に…?」
「叔父様に呼ばれたのよ。道場の大掃除をしたいから手を貸してくれって」
津南見先輩の父親は剣道場の師範だ。気後れするほど立派な日本建築の邸宅に隣接した道場で、入門者も多く、内弟子も多く抱えているらしい。
ニコニコと愛想のいい瓜生先輩に、嫌な予感がしてやっぱり帰りたいと思ったけれど、肝心の津南見先輩の顔も見ずに帰るのはどうかと思い踏みとどまる。
「……もしかしなくても、私と津南見先輩も人員に数えられてます?」
「もっちろん。未来の津南見家の嫁なら経験しておくに越したことは無いわよー」
その場合津南見先輩の4人のお姉さんに加え、瓜生先輩も小姑として君臨しちゃうのか…。嫌われてはないからいいけど、さすがにちょっと考えちゃうな…。
「ちなみに柑治は先に道場に行ってるから、私たちも行きましょう」
「お手伝いは構いませんけど、事前に言ってくださいよ。そうすればもっと働きやすい恰好してきましたよ」
そう言うと、瓜生先輩が今気づいたというように私の全身をしげしげと見つめた。一応恋人の家でデートだからと、ふわりとしたシルエットのカットソーにショートパンツという、あまり掃除向きではない服装で来てしまった。
「…襟ぐり大き目にあけて鎖骨が見えてるのと、すらりと伸びた生足がポイント高いわね。そんな恰好で柑治と部屋で二人きりだなんて襲ってくれと言ってるようなものじゃない」
「この程度のチラ見せで襲う甲斐性があるとは思えませんけど…」
ある程度克服したとはいえ、最近まで極度の女性恐怖症だった恋人は、未だに手を握るのにもいちいち許可を求めてくる奥手っぷりだ。
まあ、掃除と言っても大部分は内弟子さんたちが行うらしいので、雑巾がけの為の水汲みや汗をかいた時のてぬぐいの準備、休憩用のお茶の支度が瓜生先輩と私の主な仕事らしいので、とりあえず道場へ向かう。
「…そう言えば、瓜生先輩が来てるってことはもしかして、木通先輩もいらっしゃってるんですか?」
「ええ、先に来て柑治と天井のほこりを落としてるはず…」
瓜生先輩がそう言いながら道場の戸を開けた時、私の視界に入ってきたのは、壁に追い詰められた涙目の津南見先輩と、壁に手をついて屈み、津南見先輩の顔を覗きこんでいる木通先輩の姿だった。
「………」
「………」
「………」
「………」
時が止まったかのような沈黙が降りる。
無言のままポケットからスマホを取出し、カメラモードでシャッターを切った。そのままスマホをおもむろにポケットにしまうと、私は息を吸い込んだ。
「柑治先輩の浮気者ーー!!」
そう叫んでその場を走り去る。
「ちょ…待て!! 誤解だ!!! 埃が目に入ったから見てもらっていただけだ!!! って言うか何で今写真撮った??!!」
「葛城さん! 後でその写メLINEでちょうだい!!」
「欲しいのかよ?!」
背後で三者三様の叫びが聞こえ、追いかけてくる一人分の足音が聞こえた。
オチなどない。
不憫な柑治君には特別におうちデートに壁ドンもおまけしてあげよう(笑)
というわけで、思い付き企画終了です。キャラに偏りがあるのは本編であんまり出てきてないキャラは動かしにくいという作者の事情です。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




