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宮廷鍛冶師の幸せな日常 ~ブラックな職場を追放されたが、隣国で公爵令嬢に溺愛されながらホワイトな生活送ります~  作者: 木嶋隆太
第二章

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90/202

第29話

本日二巻無事発売できました!

気になる方は買っていただけると嬉しいです!


 確かに、アリシアが言う通り、今後店がさらにこんできたら店員を雇った方がいいだろう。

 あとは、店の開店時間や、休店日は現状の休日二日にするべきなのか。

 悩みどころではある。


「フェイクにわざわざ店の対応を任せるのは……時間がもったいない」

「俺は鍛冶に集中した方がいいってことか?」

「うん。ていうか、フェイクしか鍛冶できないし、フェイクの鍛冶の上達面で見ても、フェイクには鍛冶に集中できる環境を用意したい」

「……まあ、そうだな」

「だから、今後も売り上げが伸びそうなら、私が人を雇う」

「できるのか?」


 俺が問いかけると、アリシアは頬をわずかに引くつかせながらも、こくんと頷いた。


「こういうの、得意……ってわけじゃないけど。貴族夫人の主な仕事っていうのは、家の管理だから」

「家の管理?」

「うん。使用人の雇い入れ、家で集まりが行われる場合の管理、運営とかは仕事のうちなんだ。だから、それなりに知識はある。レフィにも協力してもらえば、人を雇う関係はどうにでもなる……と思う」

「なるほど」

「あとは、同じ商人のアルメにも聞いてみるつもり」

「それなら、今度来た時にでも話してみるか?」

「そのつもり。こっちは私に任せてね。フェイクは、鍛冶……頑張って」

「もちろんだ」

「でも、お互い体調を崩さない程度に頑張ろうね」

「ああ、そうだな」


 俺はアリシアにこくりと頷く。

 もうお客様もいなくなったので、店を閉じることにした。

 入口の看板を下げ、扉を閉めた。


「フェイク。ちょっと、商品の補充していくね」

「ああ、分かった。俺も手伝うよ」


 午後、途中途中で商品を出していたが、かなり量は減っていた。

 それだけ、売れたということでもある。

 嬉しい限りであったが、この調子が続くとさすがに商品が間に合わないよな。

 アリシアとともに商品の補充をしていき、朝に近い状態へと戻した。


「よし、こんなところだな」

「うん、そうだね。夕食はどうする?」

「……そうだなぁ。俺は今日も泊まっていこうと思っていたけど、アリシアはどうする?」

「私も泊まる。それじゃあ、夕食作ってくる」

「……わかった。俺は鍛冶でもしてくるよ」

「無茶しないでね」

「ああ」


 アリシアと別れた俺は、鍛冶工房へと向かい、剣を作っていく。

 仕事の後にまた鍛冶をする、といっても俺にとって鍛冶は別に仕事じゃないんだよな。

 あくまで趣味のようなもの。

 一本の剣を作り終えたが、ずいぶんと早く終わった。


「おぬし、鍛冶は好きかの?」

「……びっくりした」


 突然背後から声がしたと思えば、そこにはベストルがいた。

 彼は俺の打った剣をじっと観察している。


「なんじゃ。わしはおぬしを見てるぞ、といったじゃろ?」

「……そういえば、そうだったな。鍛冶は、好きだけど……なんだ?」

「なるほどの。それなら、もっと魔鉄をちゃんと見てやれ。腕はいいんじゃからな」

「魔鉄をちゃんと見る……? 十分見てるけど……」


 しかし、俺の問いかけに返事はなかった。

 ベストルは……俺の師匠みたいな人だ。

 

 『鍛冶は見て覚えるものだ』。それが俺の義父の口癖だった。

 言葉で教えることはしない。見て覚えた技術こそが、その人のものになる、と。

 これが正しい指導かはわからないけれど、少なくとも今の俺はそうして育った。


 ……それにしても、な。

 ベストルのこと。アリシアには黙っているつもりだったけど、レフィにくらいは相談してみようかな。

 仕事のしすぎで幻覚を見たんじゃないか、と言われるのだけが心配だ。




 夕食の後、アリシアがシャワーを浴びている隙に俺はレフィに声をかけた。

 鍛冶工房で見た人影について相談したいからだ。


「レフィ、少しいいか?」

「はい、なんでしょうか?」


 いつもの毅然とした態度のレフィが首をかしげる。


「これはまだアリシアには伝えていないんだが……その、鍛冶工房から変な音とか聞こえたりはしてないか?」

「……音、ですか?」

「ああ。夜中とかに小槌で魔鉄を叩いたような音なんだけど……」

「そういえば、カプリから報告を受けています。深夜に、その音を聞いたんですね?」


 こくりと頷く。

 やっぱり、あの音は俺にしか聞こえていないようだ。

 それなら、アリシアはもちろん、ここに泊まっている人たちも大丈夫だろう。


「そうだ。その音を出しているのは鍛冶師ベストルみたいでな。なんか、この店を俺に譲るかどうか見張るって言っているんだ」

「……ちょ、ちょっと待ってください」


 レフィが額に片手を当て、それからわずかに顔を青ざめさせた。


「フェイク様。仕事のしすぎではありませんか?」


 正直、その反応は予想していた。

 やっぱり黙っていたほうがよかったか?


「いや、違うから。……鍛冶工房に、ベストルがいるんだ。俺の鍛冶師の腕を見て、店を譲るか判断するって言っていてな」

「……そ、それは百歩譲って理解、しました」


 とても困惑していたが、それでも頷いてくれた。


「特に害はないみたいなんだ。もしも、俺の腕がベストルの望むレベルになかったら、呪われるみたいだけど」

「の、呪われる?」

「ああ。家から追い出すように小槌で魔鉄を叩く音を四六時中聞かせてくるみたいだ」

「……そ、それは、確かに鬱になりそうですね。……もしかして、これまでの鍛冶師たちも……それが原因、ということでしょうか?」

「可能性はあるな」


 レフィは顎に手をやり、じっとこちらを見てきた。


「……大丈夫、なのですか?」

「任せてくれ。伝説の鍛冶師に認められるくらいでないと、アリシアの夫にはふさわしくないと思うしな」


 それに、なんだかんだ伝説の鍛冶師だ。

 今はなんか変なおじいちゃんという感じだけど、きっと学べることも多くあるはずだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 変なおじいちゃんで済ますのちょっとかわいい
[気になる点] レフィが側室になるのはいつだ! [一言] 現代とベストルが鍛冶していた時代の技術革新に逆にベストルが感心することもあるのかな 技術なんて常に進歩するもんだから ベストルと全く同じレベル…
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